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補聴器でも質の高い音楽を楽しむためのポイント

  • 公開日:2017.10.18
生活 補聴器
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補聴器は快適な会話をすることを目的としているため、音楽を聴くにはちょっとした設定の工夫が必要です。補聴器を通じて会話を聞くことと音楽を聴くことにはどのような違いがあるのか、補聴器をつけて音楽の音色を楽しむためにはどうしたらいいのか、ポイントをご紹介します。

「音楽のための補聴器」という研究

日常、耳にする音楽はいろいろありますが、ある特定の曲を聴くと、その当時の気持ちや感情がよみがえってくることがあります。音楽家といった専門家でも運転中に流行の歌を口ずさむといった趣味程度のレベルの音楽好きだったとしても、音楽を愛する気持ちは世代や職業といったものを超えて共通のものです。

しかし、もし大好きな曲を楽しく聴く力を失ってしまったらどうでしょう?補聴器を装用している人々にとって、これは共通する問題です。

補聴器を装用している人々の多くは、以前と同じように音が聞こえず、さらには不快に聞こえるとして音楽を聴くことを断念してしまう場合が少なくありません。しかし新たな研究によって、補聴器ユーザーの多くの方がもう一度音楽を美しい音色で聴くことができる可能性が出てきました。

英国のリーズ大学と英国国民保健サービス財団、シェフィールド総合病院は、音楽を聴くことに難聴がどのような影響を及ぼすのかについての共同研究を進めています。「音楽のための補聴器(Hearing Aids for Music)」と名づけられたこの研究の目的は、さまざまな音楽のある環境でどのように補聴器を使うのがよいかを見極めることにあります。聴力テストのデータを社会や心理学的データと組み合わせるというかつてない試みにより、補聴器を使う人がより良い音質で音楽を楽しむことができる方法を研究しているのです。

さらに、被験者へのインタビューやアンケートなどを通じて、音楽を聴く人が直面する問題を見つけ出し、既存の補聴器機能の向上についても研究しています。これにより、聴覚ケアの専門家は音楽の楽しみ方のより良いアドバイスをすることができるようになり、補聴器メーカーもユーザーのニーズに沿った製品設計を行うことが可能になります。

補聴器は会話の聞き取りを良くするためにデザインされた

そもそもの問題は、補聴器が会話の聞き取りを良くするためにデザインされたものであり、音楽鑑賞を目的としたものではないという点です。

人の会話は通常30〜85 db(デシベル)の音量で交わされています。会話の音の範囲は約50 dbですが、音楽の音は約100 dbの広がりを持っています。そのため補聴器は異なる音調や音色、耳に聞こえる最も小さな音と最も大きな音の幅が広い「ワイドダイナミックレンジ」といったものを、十分に処理することができません。

だからと言って、補聴器をお使いの方々は希望を捨てる必要はありません。たしかに補聴器をつけて音楽を聴くのは不快だ、音楽を聴くときは補聴器を外してしまう、とおっしゃる方もいます。しかし、補聴器の目的を考慮しつつ音楽を楽しむ方法もあるのです。

音楽を楽しむための補聴器の設定方法

現在の多くの補聴器には、「ハウリング抑制機能」が搭載されています。これはドアがバタンと急に閉まるような突発音や、補聴器のマイクと耳の隙間からもれる音が近いことなどで起こるピーっという不快な音を抑える機能です。

楽器にはピアノやフルートといった高い周波数帯の音色を持つものがありますが、補聴器はその高い周波数帯の音を「聞き取りの妨げとなる不快な音」と認識してしまい、これらの音の音量を下げたり取り除いたりしてしまいます。その結果、音楽にひずみが生まれてしまうのです。

ハウリング抑制機能をオフにして音楽を聴くことで、もっとクリアで本来の音に近い音色で音楽を聴くことができるようになります。

音楽の音色を変える可能性のあるもう1つの要因は「騒音抑制システム」です。補聴器はレストランやパーティといった騒がしい環境で会話を聞くために、背景にある騒音を抑制するように設計されています。そのため特定の音楽、たとえば連続する和音などが背景騒音として認識されてしまうことがあります。

この場合も騒音抑制システムをオフにすることで、音の要素が騒音ではなく音楽であると認識させることができます。

さらに補聴器は、音楽鑑賞などを目的として低周波帯域の音を増幅させるように設定できます。会話では高周波数帯域の音に焦点を当てる必要がありますが、音楽を聴くためには低周波数帯域の音がとても重要です。

最近の補聴器はほとんどが「音楽モード」「音楽プログラム」といった設定を選べるようになっています。これらを選ぶことで、補聴器が従来処理している機能のいくつかを簡単に抑えることができます。

ただし、音楽を聴き終わったら通常の設定に戻すことを忘れないようにしましょう。

注:補聴器プログラムの設定や切り替え方法は各社の製品で異なります。補聴器を既にお使いの場合はお買い上げの販売店などにご相談ください。

加工されていない音ほど、より良い音質に感じる

米国・コロラド大学ボルダー校が行った研究では、18人の補聴器ユーザーに、ほとんど加工を加えていない音楽から多くの加工を加えた音楽まで、さまざまな音楽のサンプルサウンドを聴いてもらうという実験を行いました。その結果、レコーディングスタジオの操作でも補聴器を使用していても、加工した音楽ほど音にゆがみがあることが示されました。つまり、補聴器を通じて音楽を聴く場合、加工されていない音ほどより良い音質に感じられことがわかったのです。

この問題の根底には、補聴器に広く使われている「ワイドダイナミックレンジコンプレッション」と呼ばれる圧縮機能があります。この機能は適度に大きな音はそのままに、小さな音については増幅するため、会話の聞き取りでは有効です。しかし音楽情報は処理できず、ときに音楽が台無しになってしまう可能性があります。

さらに「コンプレッションリミッティング」といわれるレコーディング技術では、ある一定の音量以上の音を消してしまうため、補聴器で音楽を聴く際には、一部の音が耳に届かない原因になります。また大きな音と小さな音の両方が圧縮され、全体的に大きな音として増幅されます。これによりさまざまな音色が重なってしまい音のゆがみが顕著になります。

補聴器で音楽を楽しむには、シンプルな生の音源が向いていると言えます。先進の補聴器デジタル技術は、従来のアナログ電気信号をデジタル信号に変換して処理しますが、音楽の大きな音を処理しきれず、結果的に音のゆがみを引き起こす場合があります。

音色を加工した音楽を聞く時は、先進の機能を搭載していないアナログの補聴器を使うのも一案かもしれません。


出典:米国「Healthy Hearing」2015年6月4日の記事「Improving the sound of music with hearing aids」(Lisa Packer寄稿)

※本記事は米国Healthy Hearingにて掲載された記事を、一般的な情報提供を目的として意訳、また日本国内の事情に沿うように加筆再編成したものです。本記事のコピーライトは healthyhearing.comに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、healthy hearingが指定する執筆者または提供者に帰属します。

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