
「自分に合う補聴器の選び方がわからない」 「試聴時に確認すべきポイントがわからない」 初めて補聴器を購入する方は、なにを基準にして自分に合う補聴器を選べばよいかわからないでしょう。補聴器選びは、あなたのライフスタイルや利用目的に沿って選択することが大切です。
本記事では、補聴器の選び方における主な5つの基準をはじめとして下記を解説します。
- 補聴器の選び方における主な5つの基準
- 試聴時に補聴器の確認すべき5つのポイント
- 補聴器の選び方における3つのポイント
- 補聴器の購入先の選び方における4つのポイント
試聴時に確認すべきポイントも詳細に解説しているので、初めて補聴器を購入する方は参考にしてください。
補聴器の選び方における主な5つの基準
補聴器の選び方における主な5つの基準は下記の通りです。
- ライフスタイルや利用目的に沿って選ぶ
- 種類や形状で選ぶ
- 値段や機能で選ぶ
- 使いやすいものを選ぶ
- メーカーで選ぶ
それぞれについて詳細を解説します。
1.ライフスタイルや利用目的に沿って選ぶ
補聴器選びにおいて特に大切なのは、ライフスタイルや利用目的に沿って選択すること。そもそも補聴器によって聞こえをよくするには、耳と脳に慣れてもらうために継続した利用が必要です。そのため、特定の場面だけでなく毎日使用することが理想的。
毎日補聴器を使用する意欲を保つためにも、下記のようなライフスタイルや利用目的に沿って選ばなければなりません。
- 家族や友人とコミュニケーションを楽しみたい
- 会議などが多い仕事で補聴器が必要である
- テレビや音楽、映画などの音をクリアに聞き取りたい
継続的に補聴器を使用するためにもご家族だけの意見ではなく、あなたの要望に沿った補聴器を選択しましょう。
2.種類や形状で選ぶ
補聴器は大別すると下記の3つの種類に分けられます。
種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
![]() 耳かけ型 |
●操作性がよく多機能な器種も多い ●カラフルでおしゃれなデザインが増えている ●重度難聴に対応できる器種がある |
●汗が入りやすい(汗に強い器種もある) ●本体サイズが少し大きい |
![]() 耳あな型 |
●本体サイズが小さく装用時に目立ちにくい ●耳穴の奥へ完全に隠れる「IIC」「CIC」、耳穴にフィットする「ITC」など、さらに目立ちにくい種類がある ●メガネやマスクなどを着用しやすい |
●重度難聴に対応できない場合がある ●耳かけ型よりも高価になる傾向がある |
![]() ポケット型 |
●操作性がよい ●市販の乾電池を使用できる ●重度難聴に対応可能な器種がある |
●本体をポケットに入れたり首からかけたりして持ち歩く必要がある ●本体とイヤホンをつなぐコードが目立ちやすい |
耳あな型には、耳あなの形や聴力に合わせて作るオーダーメイドタイプも存在します。
3.価格や機能で選ぶ
補聴器の価格帯は機能や形状により変動します。高額な補聴器には、下記のような機能が搭載されていることが多いです。
- 周囲の雑音を自動的に抑制する
- 「ピーピー」というハウリング音を抑制する
- より自然に聞こえやすくする
- 細やかに音質を調整できる
価格帯の目安は下記の通りです。
種類 | 価格帯 |
---|---|
耳かけ型 | 約5万〜70万(片耳) |
耳あな型 | 約10万〜70万(片耳) |
ポケット型 | 約3万〜12万 |
オーダーメイドタイプは一般的な器種よりも高価になります。
4.使いやすいものを選ぶ
補聴器には、さまざまな形状があり使いやすさもそれぞれ異なります。つけ外しのしやすさやメンテナンス性なども、継続的に補聴器を使うための大切なポイントです。使いやすさの判断のために下記を確認しましょう。
- 問題なく補聴器をつけ外しできるか
- 電池の交換をスムーズにできるか
- 電池の蓋の開閉は問題なくできるか
使いにくいと感じると、補聴器装用の習慣化の妨げになることも。実際に手に取って十分に検討しましょう。
5.メーカーで選ぶ
日本で販売されている補聴器の主なメーカーは下記の通りです。
- オーティコン(デマント・ジャパン株式会社)
- フィリップス(デマント・ジャパン株式会社)
- バーナフォン(デマント・ジャパン株式会社)
- フォナック(ソノヴァ・ジャパン株式会社)
- リサウンド(GNヒアリングジャパン株式会社)
- シグニア(シバントス株式会社)
- ワイデックス(ワイデックス株式会社)
- スターキー(スターキージャパン株式会社)
- リオネット(リオン株式会社)
- パナソニック(パナソニック株式会社)
補聴器メーカーそれぞれのコンセプトや、用意している保証制度なども補聴器選びの参考になります。
試聴時に補聴器の確認すべき5つのポイント
試聴時に補聴器の確認すべき5つのポイントは下記の通りです。
- あなたや家族の声を聞いてみる
- 設定を変更して聞いてみる
- 電話をしてみる
- 装用と電池交換を繰り返してみる
- 付属機能や補聴器用備品を検討してみる
それぞれの詳細を解説します。
1.あなたや家族の声を聞いてみる
まずは補聴器を両耳に装用してあなたの声を聞いてみましょう。一般的に補聴器は、音の聞こえがよくなることから両耳装用が推奨されています。装用した際のチェックポイントは下記の通りです。
- 会話や周囲の音は聞こえやすくなっているか
- 「非常にうるさい」聞こえ方ではないか
- 「ピーピー」とハウリングが起こっていないか
初めて補聴器を装用する場合は、あなたの声が思った以上に大きく聞こえます。補聴器は聞こえ方になれる期間が必要であるため、音が大きく聞こえてしまうのは正常な反応です。
「すこしだけうるさい」程度のレベルに調整しておき徐々に慣れる必要があります。また、ご家族や販売店スタッフと話してみることも大切です。あなたの声や周囲の人の声が聞こえやすくなっているか確認しましょう。
2.設定を変更して聞いてみる
多くの補聴器には「静かな環境」「騒がしい環境」など、使用環境に合わせた設定変更の機能があります。複数の補聴器を試聴する際は、設定を変更してどのように聞こえるかを確認しておきましょう。「静かな環境」の設定では、販売店スタッフやご家族と話してみて聞こえの程度をチェックします。
「騒がしい環境」の設定は、販売店により騒がしい環境を用意できるサウンドスタジオを設備しているところもあるため、設備がある場合にはそれで試聴させてもらいましょう。サウンドスタジオがない場合は、外に出て実際の環境音の中で会話してみてもよいでしょう。
3.電話をしてみる
電話をよく使用される方は、実際にご家族や友人へ電話をして聞こえの程度を確認することを推奨します。「自分の留守番電話にかける」「時報の番号にかけてみる」などでも確認は可能です。また、電話を耳元のどの位置に当てる必要があるのかを確認することも大切です。
補聴器の中には、スマートフォンに接続できたり、オプション製品を使うことで固定電話に接続できたりする器種も存在するため、補聴器で電話の音声を直接聞きたいというご希望のある方は販売店スタッフに相談しましょう。
4.装用と電池交換を繰り返してみる
補聴器を日々問題なく使用できるかを確認するために、装用と電池交換を何度も繰り返してみることは重要です。補聴器の正しいつけ方と外し方を販売店スタッフに確認して、実際に何度かつけ外しをしてみましょう。
補聴器の電池や電池の蓋は、どれも小さいものであるためスムーズに電池交換と蓋の開閉ができるか確認してください。電池交換が難しい場合は、充電式の補聴器も選択肢の一つです。
5.付属機能や補聴器用オプション製品を検討してみる
補聴器に搭載されている付属機能や補聴器用オプション製品なども検討してみましょう。
付属機能や補聴器用オプション製品 | 詳細 |
---|---|
Bluetooth機能が搭載された補聴器 | Bluetoothによりテレビやパソコン、スマートフォン、固定電話、音楽プレイヤーと補聴器を接続できる機能 |
リモートコントロール | Bluetooth搭載の補聴器をリモートで簡単に操作できる端末 |
リモートマイク | 専用のマイクから声や音をBluetooth搭載の補聴器へ直接届ける端末 |
ケース型充電器 | 充電器とモバイルバッテリー、補聴器ケースが一体となっている製品 |
補聴器用アプリ | 補聴器の音量調整などをスマートフォンの画面上で操作できるアプリ |
ストラップ | 耳かけ型補聴器の落下を防ぐストラップ |
補聴器用乾燥機 | 補聴器の大敵になる汗や湿気を乾燥させる製品 |
その他に補聴器の選び方でお困りの方は、こちらからお気軽にお問い合わせください。
補聴器の選び方における3つのポイント
補聴器の選び方における3つのポイントは下記の通りです。
- 家族に付き添ってもらう
- 公的な補助金を活用できるか調べておく
- 高額な補聴器が聞こえやすいとは限らない
それぞれの詳細を解説します。
1.家族に付き添ってもらう
販売店で適切に補聴器を選ぶためにも、ご家族に付き添ってもらうことを推奨します。難聴により本人と販売店スタッフのコミュニケーションがスムーズにできない可能性があるためです。また、ご家族と会話することで補聴器の効果をより実感しやすく、冷静な判断もしやすくなります。
ご家族にも補聴器の使い方やメンテナンス方法、定期的な調整の必要性などを把握してもらうことで、補聴器を使っていく上でのサポート体制を高めることができます。
2.公的な補助金を活用できるか調べておく
補聴器には、下記のような公的な補助金制度が存在します。
補装具費支給制度 | 難聴により身体障害者手帳の交付を受けた方が受けられる制度。補助金の利用者負担を原則1割にできる。 |
---|---|
医療費控除 | 補聴器相談医に補聴器が必要と診断された場合に医療費控除を受けられる。認定補聴器専門店または認定補聴器技能者から補聴器を購入する必要がある。 |
地方自治体の補助金 | 各自治体が65歳以上の高齢者や18歳未満の難聴児を対象にした補助金を給付している場合がある。 |
補装具費支給制度や地方自治体の補助金などの申請場所は、お住まいの市町村の役所です。気になる方は福祉課窓口に問い合わせてみましょう。
3.高額な補聴器が聞こえやすいとは限らない
前述した通り高額な補聴器は、ハウリングや雑音を抑制する機能などが搭載されていることが多いです。しかし、高額であれば聞こえやすいとは限らないため、あなたに最適な補聴器を選ぶ必要があります。
価格や機能ではなく自分の「聴力に合っている」「ライフスタイルや利用目的に合っている」「必要な機能が備わっている」などを基準に選択しましょう。
補聴器の購入先の選び方における4つのポイント
補聴器の購入先の選び方におけるポイントは下記の4つです。
- 認定補聴器専門店を選ぶ
- 試聴ができる販売店を選ぶ
- レンタルができる販売店を選ぶ
- アフターフォローが充実している販売店を選ぶ
それぞれの詳細を解説します。
1.認定補聴器専門店を選ぶ
補聴器の購入先は販売店や通販、訪問販売などがありますが、認定補聴器専門店または認定補聴器技能者が在籍している販売店での購入を推奨します。推奨する理由は、下記のように設備や支援体制が整っているためです。
認定補聴器専門店 | 「認定補聴器技能者が在籍している」「補聴器の調整・選定に必要な測定機器や設備が整っている」などの認定審査基準をクリアしている販売店。 |
---|---|
認定補聴器技能者が在籍している販売店 | 認定補聴器技能者は一定水準以上の知識・技能を持っており、一人ひとりに合わせた適切な調整や支援ができる。 |
上記を基準にして信頼できる販売店で補聴器を購入しましょう。
2.試聴ができる販売店を選ぶ
補聴器選びに失敗しないためにも、購入前に試聴ができる販売店を選びましょう。通信販売は試聴ができないため注意が必要です。
独立行政法人の国民生活センターの補聴器トラブルを防ぎましょう!によると「合わない補聴器を返品できない」などの相談も寄せられています。なお、販売店や通信販売で購入した場合は、基本的にクーリング・オフ(一定の期間であれば契約を解除できる制度)はできません。
このようなトラブルを防ぐためにも、あなたのご要望を十分に考慮しながら試聴をさせてくれる販売店を選ぶことが大切です。
参考:独立行政法人国民生活センター 補聴器トラブルを防ぎましょう!
3.お試しレンタルができる販売店を選ぶ
あなたに最適な補聴器を選択するためにも、きちんとした調整ができる販売店を選びましょう。初回だけでなく、定期的な調整も必要であるため通いやすい販売店を選ぶことも大切です。
また、販売店では聞こえの程度がちょうど良くても「日常生活では聞こえの具合が良くなかった」ということもあるかもしれません。可能であればお試しレンタルができる販売店を選びましょう。
4.アフターフォローが充実している販売店を選ぶ
トラブルなく使い続けるためにも、補聴器購入後の、アフターフォローが充実している販売店を選びましょう。例えば、下記のようなことです。
- 補聴器の使い方を相談できる
- 補聴器の修理やメンテナンスに対応してもらえる
その他、定期的なメンテナンスの案内や、出張訪問に対応する店舗もあります。お店によって呼び方がいろいろありますが、ホームページのアフターフォロー、アフターケアやメンテナンスなどの箇所を確認することをおススメします。また、購入の際には店頭でもアフターフォローについてきちんと確認しておくと安心です。
補聴器の選び方に困ったら販売店で相談しましょう
補聴器の選び方において特に大切なことは、あなたのライフスタイルや利用目的に合っているかどうかです。補聴器によりあなたの望んだ生活に近づけられなければ、装用を習慣化することは困難でしょう。
とはいえ、あなた自身で補聴器の選択をどれが良いのかすべて判断するのは大変です。補聴器相談医や認定補聴器専門店、認定補聴器技能者が在籍している販売店などで相談することを推奨します。お近くの補聴器販売店がわからないという方は、こちらから販売店を探してみてください。
参考
独立行政法人国民生活センター 補聴器トラブルを防ぎましょう!
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 補聴器を使って快聴ライフ!使い始めるタイミングから選び方まで
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営 2.「安心聞こえのネットワーク」連携サポート