
補聴器のイヤモールドとは何でしょう?これは耳の中に入れる補聴器のパーツであり、このタイプのパーツにはほかにドームがあります。両者の違いは何でしょうか?本稿では両者の違いやイヤモールドの特徴、そしてどのような方におススメなのかなど、補聴器専門家の見解とともにご紹介します。
私たちの耳は鼻と同じように、人によって大きさや形、質感が異なります。耳の形のせいでからかわれたり、恥ずかしい思いをした経験がある方もいるかもしれませんが、耳は重要な機能を果たしています。そして、補聴器ユーザーは、カスタムメイドのイヤモールドを使用することで音の聞こえは大きく改善され、周囲の音がよりクリアに聞こえたりします。
イヤモールドとドームの比較

耳の中に入る補聴器のパーツには、イヤモールドとドームの2種類があります。イヤモールドはアクリルやシリコンでできており、外耳道にぴったりと正確に収まるようにオーダーメイドされています。通常、ベントと呼ばれる空気を通すための小さな通気孔が開いています。
ドームは小さい円錐形で、個々の耳の形に合わせてオーダーメイドされていません。標準サイズで作られていて、既定のサイズの中からあなたの耳に最適なサイズを選択します。一般的には、風通しをよくしたり、増幅されていないありのままの音を聞いたりするために、開口部を大きくしています。
イヤモールドには難聴の種類と程度や耳の形に応じて、カナルサイズ (小さい)、ハーフシェルサイズ (中ぐらいの大きさ)、フルシェルサイズ (大きい) があります。どの種類のイヤモールドを使用するかは、個人の好み、耳の形や質感、補聴器の種類によって違ってきます。
難聴とイヤモールドの関係
低い音が聞こえない方、難聴が全てまたはほとんどの音程に渡っている方 (水平型の難聴) の場合は、耳の中にぴったりと収まるイヤモールドを使用することで、より良い音が耳に届けることができます。イヤモールドがぴったりと耳にフィットしていると、補聴器で起こるハウリング (補聴器で増幅された音が耳の外に漏れだし、再び補聴器のマイクで拾われて増幅されるために発生する、ピーという甲高い音) を防ぐことができます。高度から重度の難聴がある方には、イヤモールドがよく使用されます。
「イヤモールドは通常、難聴が言語を聞き取るのに必要な音程と音の大きさ全体に渡る場合に最適です。」 とフロリダ州のタイタスビルにあるコンテンメント・ヒアリング・ケア のオーナーである認定補聴器専門家のトム・コンテント氏は述べています。
「補聴器装用にすでに慣れている人はイヤモールドの方を好むかもしれませんが、初めて補聴器を装用する方は、より快適で、耳の閉塞感が少なく、交換が簡単なドームを選ぶことが多いようです。」とトム・コンテント氏は言っています。
「すべての人は誰一人として同じではありません。」 とコンテント氏。「私の仕事は、補聴器ユーザーの方にとって何がベストかを判断することです。ケースバイケースで進めています。」 と述べました。
高い音が聞こえにくい難聴(例えば、子供の声のような高い音を聞くのに苦労しているなど)の場合は、ドームを使用する補聴器スタイルで十分なことが多いです。
耳にフィットしていることの重要さ:イヤモールド
耳はさまざまな形や大きさをしているので、聴覚ケアの専門家にあなたの耳の形に合うようにイヤモールドをオーダーメイドしてもらうことが重要です。耳の中から補聴器で増幅された音が漏れてハウリングが発生しないようにするために、イヤモールドは、しっかりと耳にフィットしている必要がありますが、痛みを引き起こすほどのフィットは避けてください。
イヤモールド作成プロセスでは、歯科医が歯型を取るために使用するような、柔らかい耳型採型専用のシリコンを使用して、外耳道と外耳の型を取ります。この際、痛みを伴うことはありません。
イヤモールドに関する共通問題
イヤモールドは実際の個々の耳型から作られていますが、多少の調整が必要になることがあります。また、耳の形は変化し、多くのイヤモールドは柔らかい素材で作られているため、聴覚ケアの専門家は、毎年定期的にイヤモールが正しくフィットしているかどうかを確認することがあります。
イヤモールドに関する問題解決方法
初期ユーザーが経験する一般的な問題には、次のようなものがあります。
- 自分の声がくぐもったり響いたりして聞こえることがあります。イヤモールドが外耳道をふさぐため、風邪を引いた時のように声がこもって聞こえることに気づくことがあります。これはオクルージョン効果と呼ばれ、イヤモールドや補聴器の設定を変更することで対処可能です。
- 自分の声がとても大きく聞こえることがあります。補聴器ユーザーが自分の声が大きすぎると訴える場合は、イヤモールドのベント(通気口)の直径を大きくすることで対処可能です。
- ハウリングが起こることがあります。イヤモールドの通気口の直径が大きすぎたり、間違った場所にあると、補聴器で増幅された音が外耳道から漏れてハウリングを引き起こすことがあります。「カナルロック」 と呼ばれる小さなハンドルをイヤモールドにつけることでこの問題に対処することが可能です。カナルロックは、イヤモールドを耳にしっかり固定することでハウリングを防止します。
騒音を抑えるためのイヤモールド
補聴器を使用していない方も、イヤモールドを使うことがあります。仕事やレジャーで騒音からあなたの耳を保護するための素晴らしい方法として、カスタム耳栓とイヤモールドの使用があります。ミュージシャンやカーレーサー、さらには一部のプロサッカーチームまでもが、騒音のほとんどを遮断しつつも会話は理解できるような特別なイヤモールドを使用しています。競泳者の中には、外耳道に水が入らないように設計された専用イヤモールドを使用する人もいます。このようなタイプの耳型にも対応できる聴覚ケアの専門家がいます。
イヤモールドのケア
イヤモールドは補聴器の重要なパーツです。毎晩寝る前にきれいに拭いて、問題や不快感がある場合は、聴覚ケアの専門家に連絡してください。イヤモールドの開口部や付属のチューブ内に異物を見つけた場合は、聴覚ケアの専門家の指示や補聴器の取扱説明書に従ってクリーニングを行うようにしてください。
あなたの聴力に変化があったり、難聴が疑われる場合は、聴力検査の予約をしてください。ヘルシーヒアリングの販売店検索から、お近くの販売店をお探しください。
■本記事について
本記事は米国Healthy Hearingにて掲載された記事を、一般的な情報提供を目的として意訳、また日本国内の事情に沿うように加筆再編成したものです。本記事のコピーライトはhealthyhearing.com及びheatlhyhearing.jpに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、healthy hearingが指定する執筆者または提供者に帰属します。
■英語版記事はこちらから
米国「HealthyHearing」2022年5月17日の記事「What are hearing aid earmolds?」(Debbie Clason 寄稿)
https://www.healthyhearing.com/report/7769-Introduction-to-earmolds
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営 2.「安心聞こえのネットワーク」連携サポート
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記事監修者
田中 智英巳
デマント・ジャパン株式会社 アドバンスト・オーディオロジー・センター・センター長、ハワイ大学マノア校 Adjunct assistant professor, 静岡県立総合病院 客員研究員、ASHA認定オーディオロジスト、ハワイ州オーディオロジスト。■詳しいプロフィールを見る■