聞こえの問題は、ご自身だけでなく、家族を始め大切な人たちにも影響を与えます。
難聴の症状、原因、聞こえの改善にはどのような聴覚ケアの選択肢があるのか、十分な情報を得ていただくことで聞こえの改善へつなげていただけます。
聞こえの問題をそのままにしておいてはいけないということ
聞こえの問題は、年齢を問わず誰にでも影響を与えます。
米国国立聴覚・伝達障害研究所(NIDCD)の統計データによれば
- 米国では18歳以上の成人の約15%にあたる3,750万人が難聴を持つとされます。
- 65~74歳の年齢層では4人に1人が難聴とされ、75歳以上では2人に1人が難聴を抱えているとされます。
- 新生児では1,000人のうち2~3人が何らかの難聴を持って生まれてくるとされます。
- 補聴器の装用によって聞こえの改善が見込まれる可能性を持った成人(20~69歳)のうち、実際に補聴器を試した人はわずか16%にとどまります。
- 聞こえの問題に気づき必要な聴覚ケアを受けるまでの道のりは平均で約7年とされます。
難聴をそのままにしておくことは、生活の質(QOL)の低下、うつ病、社会的な孤立、仕事における収入低下や失業などのリスクにつながります。
また、難聴との関連性が報告されている高血圧の発症や転びやすくなるといった日常の安全にも影響しています。
難聴はご自身と家族や周囲の方々にとっても、広範な影響を及ぼす可能性があります。
難聴の原因や聞こえの状態は一人ひとり異なりますが、よいお知らせがあります。
それは、難聴はよく知られた症状であり、多くの場合、耳鼻科の専門医での検査をはじめとする適切な聴覚ケアによって聞こえの改善が可能だということです。
当サイトを通じ情報を得ていただくこととは、必要なサポートを得るための最初の一歩を踏み出すこととなります。
難聴の症状
難聴の症状は、難聴の種類や原因、聴力レベルによって大きく異なります。
一般に、難聴を持つ人々は、以下のいずれかまたはすべてを経験することがあります:
- 日常会話の理解が難しい
- 音は聞こえるが会話の内容などを理解できない気がする
- テレビやラジオの音量を上げる必要がある
- しばしば言葉を繰り返すように周りの人に求める
- いままで楽しめていたイベントや集まりなど社会的なつながりを避けがちになる
- レストラン、にぎやかな家族の集まり、車内での会話やグループ会議などの騒々しい環境でのコミュニケーションが難しいと感じることが増えた
- 耳鳴りがする、または耳の中で音が鳴り響いたりブンブンしたりする状況がある
難聴の種類
難聴には主に3つの種類があり、ここではその詳細を読むことができます。
- 感音難聴
感音難聴は、もっとも一般的な難聴の症状です。
感音難聴は永久的で、内耳の中にある有毛細胞や聴神経の損傷によって引き起こされます。
聴神経は、音の大きさや音の高さ(ピッチ)、脳が音を理解するために必要な音の意味に関する重要な情報を脳へ運びます。
成人の難聴の多くは感音難聴に区分されます。
感音難聴は、音は十分に聞こえるにもかかわらず、しばしば、その音が何か、または会話の理解などが困難になることがあります。
- 伝音難聴
伝音難聴は、音を伝える部分(外耳と中耳)に原因があり、音を感じるセンサーの役目をする内耳へ音を届けることが妨げられる難聴です。
主要な原因は耳垢のつまり、鼓膜の損傷、滲出性中耳炎や慢性中耳炎、耳小骨の損傷などです。
伝音難聴は永続的なこともありますが、一時的な症状であることも多く、適切な医学的な治療で解決できることもあります。
- 混合性難聴
感音および伝音難聴の両方の要素が存在する場合、混合性難聴が生じます。
難聴の原因
難聴につながる特定の原因が、適切な治療や聴覚ケアの方針に重大な影響を与えることがあります。
原因について知っていただくことは大切です。
難聴の原因はさまざまですが、特定の種類の難聴につながることが明らかな要因もあります。
例えば、外耳道に耳垢がつまることで一時的な伝音難聴を引き起こすことがあり、また過度に大きな騒音を長期間聞き続けることは、永久的な感音難聴につながることがあります。
難聴は、以下のいずれかによって引き起こされることがあります:
- 加齢(加齢性難聴は老人性難聴とも呼ばれます)
- 特定の薬剤(時として「耳毒性」薬剤と呼ばれます)
- 頭部への外傷または負傷
- 遺伝的な要因によるもの
- 過度に大きな騒音へ長時間さらされること
- 爆発、落雷など瞬間的な強大音による内耳の損傷(音響外傷)
- おたふく風邪、メニエール病、耳硬化症または自己免疫疾患などの病気
- 聴神経腫瘍または聴神経に触れる腫瘍
難聴の検査
難聴が疑われる場合は、すぐに耳鼻科の専門医を受診いただくことが重要です。
耳鼻科医における、聴力検査は簡単で、痛みを感じることもありません。
聴覚ケアの専門家は、詳しい病歴の聞き取りから始め、現在の課題、あなたのライフスタイル、コミュニケーションのニーズなどについても質問します。
聴力検査には、聴覚系の特定の部分を評価する様々な種類の聴力検査と、乳児および幼児専用の特殊な聴力検査があります。
ほとんどの聴力検査では、聴力検査用の小部屋(ブース)の中でヘッドフォンなどを使って行われます。
医師は、耳鏡と呼ばれる照明の付いた器具を使用して、外耳道と鼓膜について視診も行います。
これにより、耳垢などの物理的なものが難聴の原因なっていないかどうかを確認します。
小部屋に入ると、さまざまな高さのトーン(音)を聞き、音がわずかでも聞こえたらボタンを押すように求められます。
この検査は純音聴力検査と呼ばれ、難聴の程度だけでなく、どの高さの音がもっとも聴力が落ちているかを判断することに役立ちます。
あなたはまた、言葉を聞き、繰り返したり、所定の用紙に書き取ったりするよう求められます。
これは語音検査と呼ばれ、あなたが聞くことができる最も小さい語音を判断し、十分な大きさで聞こえるときに、どの程度はっきりと会話を理解することができるかを判断します。
聴力検査は簡単で、痛みを感じることもありません。
聴覚ケアの専門家が必要と判断した場合は、大きい音が入った時にどれだけ反射的に筋肉が収縮するかを検査する音響反射検査が行われます。
その際に柔らかい発砲ウレタンフォームやプラスチック製の耳栓を着用するよう求められることもあります。
ティンパノメトリーと呼ばれるもう1つのテストでは、鼓膜の機能が検査されます。
検査の結果は、オージオグラムと呼ばれるグラフ上にマーキングされる形で示されます。
オージオグラムは、さまざまな高さの音で聞くことができる最も小さい音を表示します。
これらの結果に基づいて、医師が聴力を評価し、必要に応じて適切な治療や対処のための計画を立てます。
難聴の治療
難聴は広く研究されている病状で、多くの実証済みの治療のための選択肢があります。
治療の選択は専門医や聴覚ケアの専門家と皆様との共同作業であり、適切な解決策を見つけていただくためには、以下の要素が考慮されます:
- 難聴の種類
- 難聴の程度
- 原因(原因が分かっている場合)
- ご自身のライフスタイル
- 年齢とあなたのコミュニケーションにおけるニーズ
- 目立たないスタイル、サイズなど補聴器へのニーズ
- 補聴器が必要となる場合、ご予算
ある種類の難聴、特に伝音難聴は、医学的または外科的処置による改善が期待できますが、他の種類の難聴は治療による回復は見込めません。
感音難聴における最も一般的なケアの方法は、適切に調整された補聴器です。
補聴器は、さまざまなスタイル、カラーバリエーション、製品サイズ、搭載機能、また幅広い価格帯で展開されています。
補聴器は主に補聴器専門店などで購入いただくことが可能です。
難聴の予防
難聴が一般的であるからといって、誰もが難聴の悩みを抱えるということではありません。
今ある聞こえを守り聴力の低下や、難聴を防ぐ方法はたくさんあります。
騒音に起因する難聴は非常に一般的であり、難聴に悩む成人の原因の多くは騒音暴露によるものです。
騒音に曝されることの多い職種や職場では、難聴を発症するリスクが高くなります。
これに対し大きな騒音への曝露を制限し、耳栓やイヤーマフ(ヘッドフォン型の保護具)などの聞こえの保護をする器具を装着することによって聞こえの悪化を予防することができます。
すでに難聴がある場合は、その進行を遅らせ、過度な騒音への曝露を避けることによって聞こえの悪化を防ぎます。
一般的には、耳栓、イヤーマフ、ノイズキャンセリング機能を持つヘッドフォンなどを使用することで聴覚を保護することができます。
耳栓は音を通さない素材でできています。
耳に合った適切なサイズの耳栓を装着することで、十分に聴覚を保護することができます。
イヤーマフまたはノイズキャンセリングヘッドフォンは、聴覚保護のための選択肢の一つです。
これらの器具は、長時間または高レベルの騒音に対しても耳を保護することが可能です。
これらの器具は、耳全体を覆って、大きな騒音を遮断するまたは打ち消す機能を持っています。
子どもの聞こえ
難聴はすべての年齢層の人々にとって、特に、お子さんにとっては将来にわたって大きな影響があります。
乳児や幼児は言語能力を発達させるために耳で様々な言葉や音を聞きの脳に伝える必要があるため、良い聞こえが得られることはコミュニケーションや社会性の発達、および教育の成功につながる基盤となります。
産科を中心に現在多くの病院では、新生児に難聴の可能性があるかどうかのスクリーニング(検査)が行われています。
スクリーニングによって難聴の可能性がみとめられた新生児は、難聴の有無を確認するために精密な検査が受けられる専門医療施設を紹介されます。
そして精密な検査でより多くの情報を収集し、聴覚ケアへの介入の必要性について検討されます。
お子さんに難聴がある場合は、専門医、小児を専門とした言語聴覚士やその他聴覚ケアの専門家への相談をお勧めします。
小児聴覚学は、難聴を有する乳幼児や子どもが必要とするニーズについての専門分野です。
子どもの難聴は、先天性因子、頭部外傷、薬剤、小児期の疾患、慢性中耳炎、外耳道の変形または鼓膜の機能不全によって引き起こされることがあります。
小児期の難聴の治療は、その根本的な原因にも依存します。
生後6ヵ月以前での難聴の特定と聴覚ケアへの介入は、子どもの聴覚の発達を劇的に改善することが示されています。
まとめ
「難聴について正しく理解する」この非常に重要な第一歩を踏み出したことにどうぞまずは自信を持ってください。
ご自身が難聴になりかけている、家族など身近な人が難聴になった場合、気持ちが圧倒されたり、また動揺を感じることもあります。
現在の聞こえの状態について理解するためにも、まずは耳鼻科の専門医へご相談ください。
ご相談の際には、聞こえについて気になることがある場合は、メモを取ってお持ちいただくことも有益です。
また、聞こえや補聴器については、補聴器販売店でもご相談いただけます。
当サイトでは聞こえに関する様々な情報を発信しています。
- 耳鼻科における聴力検査や診察を経て、補聴器の検討を勧められた方は、どうぞ補聴器を学ぶをご参照ください。
- 気になる症状がなかった場合には、健康な聞こえを守るために耳や聞こえに関する話題をご参照ください。
-
記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営 2.「安心聞こえのネットワーク」連携サポート