周囲の環境では音がしていないにもかかわらず、耳から異音が聞こえる「耳鳴り」。重度の場合、本人は日常的に大きな苦痛を感じることになります。不快な音によって日常生活に支障が出てしまうケースも少なくありません。 ここでは、そんな耳鳴りへの理解を深め、症状をできるだけ抑えるための情報をお伝えします。日常生活でのセルフケアや、耳鼻咽喉科での治療について解説するため、ぜひ参考にお読みください。
耳鳴りの基礎知識
耳鳴りとは、どのような症状を指すのでしょうか。まずは、耳鳴りの特徴や主な種類など、知っておきたい基礎知識をお伝えします。
耳鳴りとは?
耳鳴りとは、耳の中で周囲には発生していない異音が聞こえる症状のことです。両耳で聞こえる場合と、片耳だけで聞こえる場合があります。「キーン」「ピー」などの高い音や、「ジー」「ゴー」といった低い音が聞こえるのが一般的です。耳鳴りの原因として、耳や脳の病気、ストレスによる自律神経の乱れ、薬の副作用、高血圧などが考えられますが、なかには原因を特定できないケースもあります。また、めまいや頭痛を伴うことも少なくありません。
耳鳴りの種類
自覚的耳鳴(じかくてきじめい)
本人のみが音を感知できる耳鳴りのことです。内耳にある蝸牛(かぎゅう)で異常が起きている場合が多くあります。なお、蝸牛とは空気振動を電気信号に変える役割を持つ器官です。
他覚的耳鳴(たかくてきじめい)
聴診器などを通して、他者でも音を確認できる耳鳴りのことです。耳周辺にある血管から出る雑音が主な原因とされています。
耳鳴りの対処法(1) 日常生活でのセルフケア
もしも耳鳴りの症状が見られたら、医療機関に通院しながら、日常生活ではセルフケアを続けましょう。耳鳴りを発症したご本人や身の回りの方が知っておきたい、ケア方法をお伝えします。
十分な休息を取る
仕事や家事では適度な休憩を取り、十分な睡眠時間を確保しましょう。働きすぎによる過度の疲労は自律神経の乱れにつながり、耳鳴りを引き起こす原因の一つとされます。
自身に合ったストレス解消法を行う
心配事や悩みがあれば、一旦離れてみましょう。趣味やスポーツなど好きな活動に打ち込む時間をもうけ、深呼吸して心身をリラックスさせてください。耳鳴りの原因の一つとされるストレスを発散しやすくなります。集中すると耳鳴りの症状が気になりにくいのもポイントです。
血流を良くする
血流を良くするには、こまめに水分を取り、適度に運動することが大切です。運動のための時間をなかなか取れない方は、移動時に意識して階段を使ったり、休憩中にストレッチをしたりする程度でも、血流を促すことができます。
生活習慣を見直す
生活習慣が乱れて悪循環に陥ると、生活習慣病などの疾患も引き起こしかねません。日々、栄養バランスの取れた食生活を心がけましょう。また、適度な運動習慣をつけることも大切です。
大音量を避ける
大きな音を長時間にわたり聞きすぎると、内耳にある有毛細胞が傷つき、「音響外傷(ヘッドホン難聴)」が懸念されます。予防のためにも、スピーカーやヘッドホンなどで長時間大音量の音を聞くのは避けましょう。
カフェインやアルコールの過剰摂取、喫煙を避ける
カフェインやアルコールの過剰摂取は、健康被害につながります。特に、カフェインが多く含まれるエナジードリンクやコーヒーなどは、適切な摂取量の目安を守りましょう。また、喫煙を控えることも重要です。
耳鳴りの対処法(2) 耳鼻咽喉科での治療
耳鳴りが長時間にわたり続いたり、症状が繰り返し起きたりする場合は、耳鼻咽喉科の病院やクリニックに通院し、適切な治療を受けるようおすすめします。耳鳴りの改善へ向けた治療法をご紹介します。
原因と見られる病気を治療する
耳鼻咽喉科の医療機関を受診して、医師の診察や聴力検査を受けましょう。原因となる病気が特定され、適切な治療を受けることで、耳鳴りの解消につながる可能性があります。なお、耳鳴りを引き起こす主な病気として、以下が挙げられます。
突発性難聴
突然聞こえが高度に悪化して、めまいを伴うこともある病気です。片耳のみに症状が出るケースが多い傾向にあります。治療が遅れると聴力を失うおそれがあるため注意が必要です。
メニエール病
耳鳴りや難聴、回転性のめまい、吐き気や嘔吐などの症状が見られ、日常生活に支障をきたす病気です。ストレス・疲労・睡眠不足などが発症に関係すると考えられています。
滲出性中耳炎
耳の内部にある中耳に水がたまってしまう病気で、耳鳴りや難聴などの症状が見られます。急性中耳炎とは異なり、強い痛み、耳だれ、発熱などの症状が見られないことから、自身では進行による変化に気づきにくいといえます。
聴神経腫瘍
良性の脳腫瘍の一種で、初期症状として耳鳴りや聴力低下などが多く見られるのが特徴です。診断するには、詳細なMRI検査などが行われます。
耳垢栓塞
耳垢が詰まって、外耳道が塞がれている状態です。耳鳴りや閉塞感などが生じることがあります。多くの場合、医療機関の処置で耳垢を取り除くと改善します。
耳鳴りを軽減する薬物療法を受ける
現状、耳鳴りには特効薬のような薬がありません。そのため、内服薬や漢方薬などを使って、症状を和らげる治療が行われています。医薬品によって、耳鳴りの症状を抑えたり、耳鳴りにともなう不安や不眠を解消したりすることが可能です。
耳鳴り順応療法(TRT)を受ける
「耳鳴り順応療法(TRT)」では、耳鳴りによる不快な音を、意識しない音として順応させるための訓練を行います。耳鳴りが慢性化しているケースや、一般的な治療方法で効果が見られないケースなどが対象です。治療を受けるには、専門的な医療機関を受診する必要があります。
耳鳴りは適切な対処法を押さえておくと安心です
今回は、耳鳴りの基礎知識や、対処法について解説しました。耳鳴りが起こったら、医療機関での治療と並行して、日常生活でセルフケアを続けることが大切です。ご自身や身の回りの方が不快な音をできるだけ気にせずに暮らせるよう、お伝えした内容を参考にしてみてください。
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営 2.「安心聞こえのネットワーク」連携サポート
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記事監修者
若山 貴久子 先生
1914年から100年以上の実績「若山医院 眼科耳鼻咽喉科」院長。■詳しいプロフィールを見る■