聞こえづらさを感じている人の中には、片側の耳が反対側に比べて聞こえづらいこと(聞こえの左右差)に気付く場合があります。年齢を重ねることで起こる加齢性難聴(老人性難聴)の場合は、一般的に左右の耳が同程度に進行していきます。片側がより聞こえづらいと感じる場合、その原因は加齢性難聴より深刻なものかもしれません。今回は聞こえに左右差を生じさせる原因について、いくつかご紹介します。
耳の感染症
慢性的な耳の感染症は、難聴の原因となる場合があります。例えば中耳炎は(鼓膜の内側)中耳の感染症です。これは子供たちでは一般的なものですが、大人も感染することがあります。滲出性中耳炎は、中耳の炎症および感染症であり、滲出液と呼ばれる液体がたまります。中耳炎は、数週間続くこともあり、耳と鼻とをつなぐ耳管の炎症が悪化して生じます。耳管は中耳から過剰な水分を排出する役割をはたしており、正常に働かないと中耳に液体が溜まり、聴力に影響を与えます。慢性的な耳の感染症は、耳の中にたまった液体の量に応じて、24〜45デシベルの範囲の難聴を引き起こす可能性があります。無治療で慢性化してしまっている場合には、永続的な難聴を引き起こす可能性があるため、耳鼻咽喉科医へご相談いただくことが大切です。
耳あか
耳掃除などによって押し込まれて固くなった耳垢、すなわち耳垢栓塞は聞こえの左右差の原因となります。固着してしまった耳あかは聞こえに悪影響を及ぼす一方で、除去するにも痛みを伴うことがあり、耳鼻咽喉科医による処置が必要になる場合があります。耳垢が溜まってしまうことはよくあることであり、アメリカでは人口の6%に生じます。耳垢は難聴の引き金になる一方で、細菌が含まれているため、感染症の原因になることもあります。また人にとって有益な細菌が不足した場合も、耳垢栓塞や感染症の一因となります。耳の中にいる有益な細菌は耳の感染症予防に役立ちますが、2012年のニューヨーカー紙の記事に引用された医師のコメントによると、人にとって有益な細菌は必ずしも両耳にいるとは限らないそうです。耳垢を原因とした難聴があると感じた場合には、耳鼻咽喉科医に相談してください。
腫瘍
腫瘍は非常に稀ですが、それが原因で聞こえの左右差を引き起こす場合があります。難聴を引き起こす腫瘍で最も一般的なものが聴神経腫瘍であり、これは良性で進行が緩やかなのが特徴です。聴神経腫瘍は、進行に伴って脳から内耳に至る神経が圧迫されることで難聴を引き起こします。聴神経は聞こえと平衡機能の両方を担っているため、聴神経腫瘍は難聴とめまいの両方を引き起こす可能性があります。これらの症状がある場合には、耳鼻咽喉科医またはかかりつけ医にご相談が必要です。
急性の片耳の突発性難聴
急性発症の難聴は決して放置して良いものではなく、速やかに医療的な対処が必要な状態と言えます。突発性難聴の原因は明らかではないものの、それを誘発する要因は数多く挙げられています。可能性の高いものの一つに、内耳に対するウィルス感染があります。
いかがでしたでしょうか、本記事では片側の耳でより聞こえづらさを感じている方に対しいくつかの原因をご紹介しました。聞こえがいつもと違うと感じられた時には迷わずに耳鼻咽喉科を受診ください。健康的で活発な毎日をお過ごしいただくために定期的に聴力検査を受けていただくことをお勧めします。また、難聴があるとことが分かり補聴器といった聞こえのサポートを必要とされている方は、本サイトから最寄りの補聴器専門店をご紹介が可能です。
■本記事について
本記事は米国Healthy Hearingにて掲載された記事を、一般的な情報提供を目的として意訳、また日本国内の事情に沿うように加筆再編成したものです。本記事のコピーライトはhealthyhearing.com及びheatlhyhearing.jpに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、healthy hearingが指定する執筆者または提供者に帰属します。
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
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記事監修者
新田 清一先生、鈴木 大介先生
新田先生:済生会宇都宮病院 耳鼻咽喉科 診療科長, 聴覚センター長。■詳しいプロフィールを見る■ /鈴木先生:済生会宇都宮病院 耳鼻咽喉科 言語聴覚士。■詳しいプロフィールを見る■