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不要なノイズ、必要なノイズ、をめぐる音楽の進化。:音の雑学

  • 公開日:2021.11.17
雑学コラム
シンセサイザー

ノイズという言葉にどのようなイメージをお持ちでしょうか。おそらくうるさい音、いらない音といったマイナスのイメージではないかと思います。ヘッドホンや補聴器に搭載されているアクティブノイズキャンセリングはまさにいらない音を消してしまう機能ですね。一方で音楽表現にとってノイズは必ずしも不要なものではなく、活かしたり使いこなしたりする対象であるようです。今回は音楽とノイズの関係のお話です。

 

音楽を聴くときに邪魔になるのがノイズというもので、最近は音楽以外のノイズを機械的に取り除き純粋に音楽を楽しむ事が出来るヘッドフォンが開発されています。

外部から聞こえて来る音を電気的に分解して、その音と正反対の波形の音を瞬時に発生させることで、音をプラスマイナスゼロにしてしまう、とても不思議なものです。

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音楽を聴いていない時もこの機能が働くため、本を読むときや考え事をしている時、それを邪魔する音を遮るという効果があります。

さらに最近では、モーター音などの低音や高音はカットするけれど、人間の声などの周波数は聞こえるような機種、さらに雑踏の中で駅のアナウンスだけ聞こえやすくなるという特殊なものも登場しています。

ただし、このノイズキャンセル機能は近年ではイヤフォンなどにも搭載され始めていますので、歩行中などにこれをしていると近寄ってくる車などの音も聞こえなくなるので要注意です。

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ノイズ(noise)という単語は日本語にすると雑音ですが、もともと古フランス語では「ケンカ/口論/怒号」という意味で、そこから人々から嫌われている騒音を意味するようになったものです。

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ノイズキャンセル機能のように音楽を聴くときにノイズは邪魔なものですが、実際にはノイズがないと音楽は豊かに聞こえません。

たとえばピアノの音も、ドの鍵盤を押すとドの音がなりますが、実際には純粋なドの音以外に他の音が共鳴や振動で混ざっています。音楽的には倍音と呼ぶのですが、それによって音がまろやかに聞こえるので、その周辺のノイズとも言える音も含めて気持ちよいピアノの音が完成するのです。これは他の楽器にも存在する音です。

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テクノ

1970年代後半から電子的な音で演奏するテクノ・ミュージックが一大ブームになり、音楽というもののあり方を一変させたことがありましたが、あの当時、その音楽を揶揄する言葉として「ピコピコ音」などと言われていました。

確かに当時の電子音はピコピコ聞こえることも多く、他の生楽器とは溶け込みにくいものでした。

というのも、電子的に発生させた音は楽器の振動などの影響を受けないことからノイズがほぼ存在していませんでした。そのためにまろやかさが無く尖った音が多かったのです。

当時の若者にはその尖った音が新しい音楽として受け入れられたのですが、音的にスカスカに聞こえてしまうため、次第に生楽器と融合させるために進化していきます。

その後、電子音は実際の楽器音をサンプリングするなどして、生楽器と聞き分けが出来ないようになっていったのです。これはドの音なのにその周辺の倍音を含ませることに成功したからです。

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このように音を電子的に分解、解析する技術が進化することで古い音楽が生まれ変わることもあります。

たとえば1960年代に製作されたビートルズの楽曲から、録音した時に混ざり込んでしまったノイズだけを除去することが現在の技術では可能です。そのために最新盤ではリンゴ・スターがバスドラムを叩いた時に、足でペダルを踏んだきしみ音まで聞き取れるようにクリアになっています。

多重録音を実験的に繰り返した後期ビートルズの音も、ノイズを取り除いたことで従来は埋もれて聞こえなかった音まで聞こえるようになり、さまざまな新発見がされています。

さらにボーカルの波形を取り出し、その逆の周波数をぶつけることで、ボーカルだけを完全に消し去ったオリジナルカラオケの製作まで可能になっています。

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音をめぐる日進月歩は凄まじいものがありますが、最近では美空ひばりさんのボーカルを一音一音データ化して新曲を歌わせるような実験もなされています。しかし、そこまで進むとちょっと怖い気もします。

  • 記事投稿者

    杉村 喜光(知泉)

    杉村 喜光(知泉)

    雑学ライターとして、三省堂『異名・ニックネーム辞典』、ポプラ社『モノのなまえ事典』など著作多数。それ以外に様々な分野で活動。静岡のラジオで10年雑学を語りテレビ出演もあるが、ドラマ『ショムニ』主題歌の作詞なども手がける。現在は『源氏物語』の完訳漫画を手がけている。
    2022年6月15日に最新巻『まだまだあった!! アレにもコレにも! モノのなまえ事典/ポプラ社』が発刊。

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