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難聴の方が車の運転をより安全に楽しむためのアドバイス

  • 公開日:2017.12.23
難聴 ヒント
車内

日本国内では2008年の道路交通法改正を起点に法律が改定され、聴覚に障害のある方が運転できる車種が増え、聴覚障害者標識の整備なども進められています。スウェーデンで行われた最近の研究では、難聴は運転の大きなリスクにはならないことが示されました。それどころか、むしろすぐれたドライバーである可能性も示されています。そこで今回は、難聴を抱える方が安全なドライブを楽しむためのヒントをお送りします。

難聴者のドライバーの方が安全運転という実験結果

1920年代には米国のいくつもの州で、耳が聞こえない方や難聴の方は運転免許を持つことが禁じられていました。全米での規制が検討された時代もありましたが、幸いなことにそれは不必要かつ差別的であると証明され、ことなきをえました。

スウェーデンで行われた最近の研究では、健聴者と難聴者の運転を比較するために、アンケートとドライビングシミュレーター、そして実際の交通状況における観察が行われました。そこで判明したのは、難聴のドライバーの方がより慎重かつ注意深く運転されているということ。シミュレーターを使った実験では、交通状況が悪くなったり運転が難しい状況になったりした場合、健聴のドライバーよりも難聴のドライバーの方が積極的にスピードをゆるめることが判明しました。また、バックミラーとサイドミラー、目視での確認といったことを頻繁に行うのも難聴者ドライバーであるということが判明しました。

これは、難聴者の方が視覚的な手がかりに注意を払うことに慣れているからかもしれません。「神経可塑性(しんけいかそせい)」とよばれ、通常聴覚に使われている脳の一部が他の感覚とつながり、他の感覚がその脳の部分を引き継ぐということがあります。また、生まれながらにして耳が聞こえない方は、周辺視野(視線の中心から外れた漠然と認識している範囲)が広く、動きをとらえる力(動体視力)もすぐれていることが分かっています。この2つの力はどちらも安全運転に重要な要素です。

しかしだからといって、難聴のドライバー全員が注意深いということにはなりません。他の研究では、難聴の高齢者は注意力が散漫になると、より運転に困難を感じ、大きなリスクにつながると言われています。

会話に気を取られることや大音量で音楽を流す、そして携帯電話の使用などは、安全運転を脅かす要因となりますが難聴者にとってもそれは同じこと。こうした運転中の注意力の阻害となる要素は最小限にとどめる必要があります。

適切な予防措置を取っていただくことで、難聴のドライバーが運転を恐れる必要はまったくありません。以下のような装置の使用を検討してみるのも良いでしょう:

  • 警告音通報システム(複数のライトパネルで異なる音を表現し、サイレンやクラクションといった特定の音が近づいていることをドライバーに知らせます)
  • ワイドバックミラー
  • より広い視野が得られるパノラマミラー
  • 補聴援助機器やFMシステム
  • ループシステム
  • 助手席のベルトに取り付けるクリップ式マイク

専門家がすすめる難聴ドライバーのためのチェックポイント

  • 車のメンテナンスを行って最高の整備状態を維持しておきましょう。いつもと違う音がするとき、車に何らかの問題がある可能性がありますが、この異音が聞こえないと危険です。だからこそ常にメンテナンスを行っておくことが大切です。
  • 運転中は音楽の音量を抑えましょう。
  • バックミラーとサイドミラーが適切に調整されていることを確認しましょう。
  • できるだけ車の窓は閉めて、エアコンを活用するようにしましょう。
  • ウィンカーがついたままになることのないよう、ダッシュボードのウィンカーインジケーターをチェックするようにしましょう。
  • 何かを食べながらの運転や運転中に口紅を塗るなどの行動は、集中力を道路からそらすので極力避けましょう。
  • 運転をするときには補聴器を必ず装用しましょう。
  • ビルの窓など光が反射しやすいものに注意し、そこに映ったサイレンの点滅から、緊急車両の接近に気づけるようにしましょう。
  • 緊急車両は一度に複数の台数で近づいてくることがよくあります。1台見送った後も少なくとももう1台は来ると思って、すべての緊急車両が通過するまで気をつけましょう。
  • 踏み切りをわたるときは特に注意しましょう。警報機の光に注意し、接近する列車がないか左右を良く見て確認しましょう。
  • 運転に集中するために、同乗者には車が信号などで停車するまでは話しかけないようにしてもらい、会話は最低限にするようお願いしましょう。
  • 運転する前に、運転する自信があるか自分に聞いてみてください。人は不安になっていたりストレスを感じていたりすると、より多くのミスを起こしがちです。もし自信がなければ公共交通機関を使う、または誰かに運転を依頼する方法もあります。

適切な予防措置さえあれば、難聴者でも車を運転して冒険に満ちたドライブを楽しむことができます。ただし、聞こえの変化には十分に気をつけて、もし少しでも変化を感じたら聴覚ケアの専門家に相談してください。


出典:米国「Healthy Hearing」2015年7月17日の記事「Hitting the road with hearing loss」(Lisa Packer寄稿)

※本記事は米国Healthy Hearingにて掲載された記事を、一般的な情報提供を目的として意訳、また日本国内の事情に沿うように加筆再編成したものです。本記事のコピーライトは healthyhearing.comに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、healthy hearingが指定する執筆者または提供者に帰属します。

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    ヘルシーヒアリング編集局

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