2020.01.30公開

音の雑学:不快な音と危険な音

黒板

昔から聴くだけで背筋がゾゾゾとしてしまう音の代表として「黒板を引っ掻いた音」というものが良く言われます。

この音が不快な理由として「サルの集団が危険を知らせる時に発する鳴き声と周波数が同じ」だからではないかと研究の結果判明しています。

人間もサルと同じ霊長類ということで、DNAレベルで刻まれた「危険な音」が今でも有効だと言う事なのです。

と言っても、この危険を知らせる音を発するのはサルの中でもアジアを中心に棲息するマカク属と呼ばれる種類だけで、ニホンザルなども含まれています。そしてチンパンジーはマカク属ではないために、この危険音には反応しないみたいです。

黒板を引っ掻く音は2,0004,000ヘルツの周波数帯とされているのですが、その中には複雑に様々な音が混ざっています。

人間が聞き取る事が出来る周波数(可聴域)は2020,000ヘルツ前後と言われているのですが、黒板を引っ掻く音から人間が聞き取れないハズの低周波20ヘルツ以下をカットするとあまり不快に感じなくなると言う報告もあります。

低周波は耳には聞こえないけれど身体が感じてしまう音で、なんだか頭が重くなった、気分が落ち着かずイライラする、眠れないという症状が出ることもあります。

サルの耳には確実に低周波が聞こえているみたいですが、進化した人間は「なんだかよく解らないけど気分が落ち着かない」と感じるだけの聞こえない音となっているのです。

他にも皿をフォークで引っ掻く音、発泡スチロールのこすれる音、マーカーで書いた時のキュッという音が嫌いだと言う人もいますが、それらも高い音よりそれに混ざっている低周波の音が悪さをしていることが多いのです。

近年は周波数という数値で不快な理由が判明していますが、この不快な音について最初に疑問を持ったのは、音楽はなぜ心地良いのかという研究をした古代ギリシャの哲学者アリストテレスだったとされています。

まだこの分野は研究過程で解らない部分も多く、低周波を不快な音と感じる理由として肉食獣が発するうなり声に関係しているという説も唱えられています。

うるささに耳を抑えている男性逆に高い音が不快に感じる場合もあります。

それが10年程前に話題になった若い耳でないと聞き取れないと言われる「モスキート音」です。

個人差はありますが、20代前半までは17,000ヘルツ前後の甲高いキーンという音が聞こえているのですが、加齢と共に聞こえなくなってしまいます。

モスキート音は聴力のテストにも使われますが、夜中に若者が集まってしまう公園でこの音を流した所、なんだか不快だということから集まらなくなったということもあったそうです。

遠吠えする犬動物によって聞こえる周波数というのは違っていますが、特に高い周波数を感知するのが犬です。そのために犬の訓練には20,000ヘルツ以上の音が出せる犬笛が使われています。

人間の耳には空気を吹き込む音しか聞こえませんが、犬の耳にはしっかり笛の音が聞こえているのです。

1967年にビートルズがリリースしたアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の最後の部分には逆回転で再生された意味不明の喋り声と同時に、犬にしか聞こえない15,000ヘルツ以上の音が収録されています。

ジョン・レノンの「犬を困らせてやろうぜ」というイタズラ心から収録されたのですが、内緒でその音を仕込んであったため。アルバムのこの部分に来ると各家庭で犬が遠吠えし始めるという謎の現象が話題になりました。

ちなみにパトカーや救急車のサイレン音を聞くと犬が反応して遠吠えを始めるのは周波数とは関係なく、サイレンを遠吠えの声と勘違いして反応しているだけです。 


寄稿者:杉村 喜光(知泉)