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健康診断の聴力検査で問題なくても聞こえにくい時はどうするべき?

  • 公開日:2025.05.28
難聴
Health

「健康診断の聴力検査で問題ないと言われたけれど、なんだか聞こえにくい気がする」そんな違和感を覚えたことはありませんか?実は、健康診断で行われる聴力検査は、「簡易的な検査」のため、軽度の聴力低下などは見逃されてしまうことがあります。この記事では、健康診断の聴力検査でわかること・わからないこと、そして「聞こえにくい」と感じた時に取るべき行動について解説します。

「なんとなく聞こえにくい」は気のせいじゃない可能性

私が以前耳鼻科で勤務していたとき、健康診断の聴力検査も業務の1つでした。健康診断の聴力検査では、「所見なし(明らかな問題は疑われない)」または「所見あり(問題がある)」といった、非常にシンプルな結果のみを記載します。

時折、健康診断で「所見なし」とお伝えした方から「なんだか聞こえにくい感じがするんです」とご相談されることがありました。

その時にお伝えしていたのは「健康診断の聴力検査はあくまでも簡易なもので、すべての聴力の異常を把握できるものではない」ということでした。したがって、聞こえの違和感があれば、耳鼻科の受診をおすすめします。

健康診断の聴力検査でわかること・わからないこと

健康診断における聴力検査の内容や、検査でわかること・わからないことについて見ていきましょう。

チェックする音の高さも大きさも必要最低限

Check

健康診断の聴力検査は、早期の難聴を検出する、スクリーニング(選別)を目的としています。以下の2つの音が聞こえるかどうかを調べます。

  • 1000Hz、30dBの音(人の会話でよく使う高さ)
  • 4000Hz、40dBの音(加齢や騒音による難聴で最初に低下しやすい高音)

Hz(周波数):音の高さ。数値が大きいほど高い音。

dB(デシベル):音の大きさ。数値が大きいほど大きい。

健康診断の聴力検査でわかることは、この2つの音が聞こえているかどうか、つまり「日常生活に必要なおおよその聴力が保たれているか」です。2つの音が両方とも聞こえれば「所見なし(明らかな問題なし)」、どちらか一方でも聞こえなければ「所見あり」として記載されます。

低い音の聞こえや軽度の難聴は検出できない

健康診断の聴力検査では、2つの音が聞こえるかどうかを確認するだけなので、以前と比較した聴力の変化、測定していない高さの音の聴力(特に低い音)まではわかりません。

さらに、日本聴覚医学会の基準による軽度の難聴は、検査で見逃される可能性があります。というのも、日本聴覚医学会では、25dB以上の聴力を「難聴」としていますが、健康診断では通常、30dBまたは40dBの音でしかチェックを行わないため、25dB~30dBの軽度難聴は検出されにくいのです。

また、日本耳鼻咽喉科学会のマニュアルでも、健康診断の聴力検査はあくまでも“難聴の早期発見を目的としたスクリーニング”であり、「所見なし=正常」とは限らないと明記されています。そして、検査は必ずしも防音設備が整った場所で行われるとは限らず周囲の雑音などの影響を受けやすいため、小さな音を正確に聞き取るのは難しい場合もあります。

つまり、健康診断では「所見なし」との結果だとしても、それは“正常”の証明ではなく、“問題が見つからなかっただけ”という認識を持つことが大切です。特に、最近聞こえにくさを感じる方は、専門の耳鼻科での精密な聴力検査を受けることをおすすめします。

健康診断ではスルーされる「難聴」も耳鼻科ならわかる

健康診断で見逃されてしまう聴力低下も、耳鼻科を受診すると診断できます。

波形

耳鼻科で行う聴力検査は、「標準純音聴力検査」といって、125Hz~8000Hzまでの、7種類の音の高さで、どこまで小さい音が聞こえるのかを測定します。つまり、低い音から高い音までの様々な高さの音において、聞こえの程度、難聴の有無がわかります。また、以前に測定したことがあれば、以前の聴力との比較も可能です。

そして、標準純音聴力検査には、骨を通して音の振動を伝えて聴力を測定する「骨導(こつどう)聴力検査」も含まれます。通常通りに耳から聞くときの聴力と比較することで、難聴が「耳から音を聞き脳で感じるまで」の、どの部位の問題により難聴が生じているのかを、検査することができるのです。

健康診断の聴力検査は大切

ここまでご覧になると、「健康診断の聴力検査は簡単すぎて意味がないのでは」と思う方がいるかもしれません。しかし、健康診断の聴力検査には「短時間で簡単に測定できる」というメリットがあります。

健康診断の聴力検査と耳鼻科での検査の違いを表にまとめました。

健康診断の聴力検査 耳鼻科で行う聴力検査
(標準純音聴力検査)
測定周波数 1000Hz、4000Hz 125Hz~8000Hzの7種類以上
測定音量 30dB~40dB どこまで小さい音が聞こえるかを詳細に測定
検査の目的 難聴の早期発見 難聴の有無、程度、原因の推測
検査時間 数分 10分程度

聞こえの問題を感じていないのに、毎回本格的な検査で聴力を測定するのは、時間もかかり、負担が大きいことでしょう。一方、健康診断の簡易な聴力検査であれば、数分で検査が終わるため、気軽に受けられます。

まずは、健康診断の聴力検査で、問題がないかどうかを定期的にチェックして、聞こえが気になる場合や検査で「所見あり」と指摘された際には、耳鼻科での本格的な検査を受けることをおすすめします。

健康診断の聴力検査で問題なくても違和感があれば早めの受診を

聴力は気づかないうちに低下することがあり、早期の治療が必要なこともあります。そのため、聴力の低下に早期に気づき、治療の機会を逃さないためにも、定期的な健康診断で聴力をチェックすることが大切です。

しかし、健康診断の聴力検査でわかることには限界があります。そのため、問題が指摘されなくても「会話中に聞き返すことが増えた」「テレビの音量が以前より大きくしないと聞こえない」などといった、日常生活で聞こえにくさを感じたら、耳鼻科を受診するようにしましょう。

参考

一般健康診断および特殊健康診 断 聴覚管理マニュアル ―産業医および耳鼻咽喉科医のための手引き―|日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

難聴対策委員会報告‐難聴(聴覚障害)の程度分類について‐

「聞こえにくさ」感じていませんか?|厚生労働省

  • 記事投稿者

    言語聴覚士ライター大井純子

    言語聴覚士として病院・訪問でのリハビリに約20年間従事。 「コトバの力で誰かをサポートする」をモットーに、言語聴覚士として働くかたわら、医療記事作成や電子書籍出版サポートなどに取り組んでいる。

  • 記事監修者

    若山 貴久子 先生

    若山 貴久子 先生

    1914年から100年以上の実績「若山医院 眼科耳鼻咽喉科」院長。■詳しいプロフィールを見る■

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