
「高度・重度難聴に対応できる補聴器って?」 「出力を重視するのならどの補聴器の種類がよい?」 高度・重度難聴に適した補聴器の種類はある程度決まっています。出力重視で補聴器を探している方は、高度・重度難聴に対応できる補聴器の種類について理解しておくことが大切です。本記事では、高度・重度難聴をはじめとして以下を解説します。
- 高度・重度難聴が及ぼす日常生活への影響
- パワー型補聴器の特徴
- おすすめ補聴器4種
- 補聴器を購入する際の5つのポイント
- 活用できる補聴器の補助金
各補聴器の種類の特徴やおすすめできる人について詳細に解説します。補聴器にはどのような種類があるかを知りたい方は「【比較表付き】補聴器9種類の特徴|自分に最適な補聴器を選ぼう!」を参考にしてください。
高度・重度難聴とは?
高度・重度難聴とは、以下のような状態を指します。
聞き取りの状態 | |
---|---|
高度難聴 | 耳元で大きな声で話しても聞き取りにくい |
重度難聴 | 耳元で話しても聞き取れない |
高度・重度難聴は、普段の会話が聞き取れません。そのため、家族や仕事におけるコミュニケーションに支障をきたしてしまいます。望んでいるライフスタイルに近づけるには、医師から正確な診断を受けたのちに適切な補聴器を選ぶことが大切です。
高度・重度難聴が及ぼす日常生活への影響
どの難聴レベルにも当てはまる部分はありますが、高度・重度難聴であると日常生活において以下のような影響があります。
- 車の接近音やクラクションに気づきにくい
- インターホンに気づきにくい
- 会話が聞き取れず聞き返しも多くなる
- テレビの音量を大きくしてしまう
とくに車の接近音など、安全に関わる音を聞き逃すリスクは大きな問題です。また、家族や友人とのコミュニケーションが困難になることで消極的になり、外出や地域活動の参加も減ってしまうリスクがあります。社会的な関わりが少なくなってしまうと、認知症やうつ病の発症リスクが高まってしまいます。
高度・重度難聴者の補聴器の特徴
高度・重度難聴者向けの補聴器は、パワフルに音を増幅できることが特徴です。これらのパワー型補聴器は、通常の補聴器よりも大容量の電池を使用するため、本体サイズが一般的な補聴器よりも大きくなる傾向があります。
これらの特徴により、高度・重度難聴の方でも日常生活の会話を聞き取りやすくできます。
ハウリング(ピーピー音)を抑制する機能や、雑音を低減する機能が搭載されている補聴器であれば、より快適な聞こえに近づけられるでしょう。
高度・重度難聴者におすすめの補聴器4種
高度・重度難聴におすすめの補聴器4種は以下の通りです。
BTE(Behind-The-Ear) | ベーシックな耳かけ型補聴器 |
---|---|
RITE(Receiver-In-The-Ear) | 目立ちにくい耳かけ型補聴器 |
フルサイズ | 操作性がよくハウリングが起きにくい耳あな型補聴器 |
ハーフサイズ | 操作性のよい耳あな型補聴器 |
それぞれの詳細を解説します。
1.耳かけ型(BTE)
耳かけ型(BTE)は、スピーカーが組み込まれた本体を耳にかけて、本体から伸びているチューブとその先のイヤーモールド(耳せん)を通して耳に音を伝える補聴器です。パワー型補聴器の多くはBTEのタイプを採用しています。主な特徴は以下の通りです。
補聴器の種類 | 特徴 |
---|---|
![]() 1.BTE |
・重度難聴まで対応できる器種がある ・大きさがあるため操作性がよい ・イヤーモールドによって装用感を調整できる ・カラフルでスタイリッシュなデザインが増えている |
おすすめできる人と選ぶ際の注意点
BTEをおすすめできる人は以下のような方です。
- 高度・重度難聴の方
- イヤーモールドにより装用感を調整したい方
- 操作性の良い補聴器を探している方
重度難聴の方は出力を重視する必要があるため、BTEのパワー型補聴器を推奨します。
2.耳かけ型(RITE)
耳かけ型(RITE)は、スピーカーを搭載していない本体を耳の後ろに掛け、本体とつながった細いワイヤーの先にあるスピーカーを耳の中に装用する補聴器です。BTEよりやや小さく出力的には高度難聴の方に適しています。主な特徴は以下の通りです。
補聴器の種類 | 特徴 |
---|---|
![]() 2.RITE |
・高度難聴に対応できる器種がある ・BTEよりやや小さいが一定の大きさがあるため操作性がよい ・BTEよりも小型で目立ちにくい ・目立ちにくいカラーやカラフルなカラーなどバリエーションが豊富にある |
おすすめできる人と選ぶ際の注意点
RITEをおすすめできる人は以下のような方です。
- 高度難聴の方
- 自然な音を求めている方
- 「髪色に合わせたい」「カラフルなデザインを楽しみたい」という方
- 耳垂れなどがない方
RITEは高度難聴の方におすすめの補聴器です。重度難聴に適している器種も存在しますが、出力を重視するのであればRITEよりもBTEを推奨します。
3.耳あな型(フルサイズ)
耳あな型(フルサイズ)は耳あな型の中で最も大きなタイプ。耳のくぼみに納めて装用する補聴器で、高度難聴の方で耳あな型を求めている場合におすすめです。主な特徴は以下の通りです。
補聴器の種類 | 特徴 |
---|---|
![]() 3.フルサイズ |
・高度難聴に対応できる器種がある ・本体が大きいため耳あな型の中で最も操作性が優れる ・本体が大きいため音量調整ボタンや無線通信機能を搭載できる ・ハウリングが起きにくい |
おすすめできる人と選ぶ際の注意点
フルサイズをおすすめできる人は以下のような方です。
- 高度難聴の方
- 耳あな型で操作性のよい補聴器を求めている方
- 耳垂れなどがない方
フルサイズも重度難聴に対応できる器種は存在しますが、出力を重視するのであればBTEを推奨します。また、フルサイズは耳の閉塞感を感じやすい種類です。可能であればその場での装用だけでなく、レンタル期間などを利用して閉塞感が気にならない方を試してください。
4.耳あな型(ハーフサイズ)
耳あな型(ハーフサイズ)はフルサイズと比較して半分ほどの大きさの補聴器。高度難聴の方で、目立ちにくい補聴器を求めている方におすすめです。主な特徴は以下の通りです(搭載したい機能や耳の形によってはフルサイズを勧められるめられることもあります)。
補聴器の種類 | 特徴 |
---|---|
![]() 4.ハーフサイズ |
・高度難聴に対応できる器種がある ・フルサイズよりも目立ちにくい ・フルサイズよりは一回り小さいが操作性のよさも保っている ・一定の大きさがあるため音量調整ボタンや無線通信機能を搭載できる |
おすすめできる人と選ぶ際の注意点
ハーフサイズをおすすめできる人は以下のような方です。
- 高度難聴の方
- 高度難聴の方で目立ちにくい補聴器をお探しの方
- 耳垂れなどがない方
ハーフサイズにも重度難聴に対応できる器種は存在しますが、出力を重視するのであればBTEを推奨します。また、フルサイズ同様ハーフサイズは耳の閉塞感を感じやすい種類です。可能であれば、レンタル期間を利用して閉塞感が気にならないか試してください。
高齢者の方におすすめの補聴器の種類をお探しの方は「高齢者の方におすすめの使いやすい補聴器の種類3選|購入先についても解説」を参考にしてください。
高度・重度難聴者が補聴器を購入する際の5つのポイント
高度・重度難聴者が補聴器を購入する際の5つのポイントは以下の通りです。
- 補聴器相談医の診察を受ける
- 補聴器販売店で相談する
- 家族に付き添ってもらう
- 試聴期間を利用する
- ハウリング抑制機能が搭載されているモデルを選ぶ
それぞれの詳細を解説します。
1.補聴器相談医の診察を受ける
補聴器を購入する前に補聴器相談医が在籍する耳鼻咽喉科を受診し、詳しい検査を受けてください。適切な補聴器を選択するには、現在の聴力レベルを正確に測定する必要があるためです。
また、耳の病気により難聴が引き起こされていないかを確かめるためにも医師の診察は必要です。診断書や意見書は、補助金申請にも必要となる書類であるため、申請予定の方は発行を依頼してください。
2.補聴器販売店で相談する
高度・重度難聴の方でも、とりわけ重度の場合はBTEのパワー型補聴器を選ぶ必要があります。そのため、認定補聴器技能者(専門知識・技術をもった技術者)などの販売店スタッフから、専門的な知識や経験に基づいた適切なアドバイスを受けることを推奨します。
相談する際は「生活のどのような場面で困っているか」「どのようなライフスタイルを求めているか」を詳細に伝えてください。補聴器に関する疑問や不安、予算などについても遠慮なく相談することが大切です。
定期的な調整やメンテナンスを受けることも重要です。購入後も継続的にサポートを受けられる販売店を選ぶことを推奨します。長期的な装用を見据えて、アフターサービスの内容や保証についても詳しく確認してください。
3.家族に付き添ってもらう
高度・重度難聴になると、販売店スタッフとの意思疎通が困難な場合もあります。家族に付き添ってもらい補聴器の購入を進めてください。また、本人だけでなく、周囲の人に補聴器の理解を深めてもらうことは、補聴器の装用を続けるために大切です。
補聴器を装用した方との話し方に少し気を配るだけで、コミュニケーションがスムーズになることもあります。補聴器の付け外しやメンテナンス方法を一緒に確認することで、本人も安心して補聴器の装用を始められます。
4.試聴期間を利用する
補聴器の購入において、実際の生活環境での試聴は大切です。店舗内での短時間の試聴だけでは、日常生活での使用感を十分に確認できないためです。
多くの補聴器販売店では、1週間から1カ月程度のレンタル試聴サービスを提供しています。自宅での家族との会話、外出時の環境音、テレビ視聴など、さまざまな場面で聞こえを確認してください。また、耳の閉塞感や操作性についても、実際の使用を通じて確認しましょう。
複数の器種を試聴することで、自分に適した補聴器を見つけることができます。試聴期間中に気づいた点を購入前に解決しておくことも大切です。なお、補聴器販売店によっては、レンタル料金が必要になるため事前に確認してください。
5.ハウリング抑制機能が搭載されているモデルを選ぶ
年齢に伴った高度難聴である場合は、多くの場合に高音域の聞き取りが低下します。高音域を聞こえやすく調整するには、ハウリング抑制機能が搭載されている器種が望ましいです。高音域を聞こえやすく調整すると、ハウリングが起きやすくなるためです。
補聴器は、機能を搭載するほど高価になる傾向があります。値段や多機能ではなく聞こえを重視して選択することを推奨します。補聴器の購入の流れを知りたい方は「【補聴器の買い方】耳鼻科受診から購入までの流れを6ステップで解説」を参考にしてください。
高度・重度難聴者が使える補聴器の補助金
高度・重度難聴者であれば、さまざまな補聴器の補助金を利用できる場合があります。補聴器の補助金には、以下のような種類があるため利用を検討してください。
補装具支給制度 | 聴覚障害により身体障害者手帳の交付を受けた方が対象になる補助金制度。対象となる補聴器を原則1割で購入できる。 |
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医療費控除 | 補聴器の購入費を医療費として控除できる制度。補聴器相談医を受診して診療情報提供書を交付してもらう必要がある。 |
各自治体の補助金 | 各自治体が用意している制度。自治体により対象となる要件や補助金額が異なる。 |
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高度・重度難聴に適した補聴器を選び理想の聞こえを手に入れよう
高度・重度難聴になると、日常生活の会話の多くを聞き取れません。また、車の接近音やクラクションなども聞き取ることが難しく、安全性の問題も発生します。
とりわけ重度の難聴である場合は、BTEのパワー型補聴器を推奨します。高度難聴であれば、RITEやフルサイズ、ハーフサイズも選択肢に入るでしょう。
補聴器を購入する際は、認定補聴器技能者による専門的知識と経験に基づいた適切なアドバイスを受けることを推奨します。お近くの認定補聴器技能者が在籍する補聴器販売店をお探しの方は、こちらから検索してください。
参考
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営 2.「安心聞こえのネットワーク」連携サポート