
「補聴器と集音器の具体的な違いはなに?」 「難聴がある人は補聴器と集音器どちらがいいの?」 「補聴器と集音器の違いを一覧表で比較したい」 このような悩みや要望はありませんか? 補聴器と集音器の大きな違いは、補聴器は「管理医療機器」、集音器は「音響機器」であることです。補聴器と集音器では、使用目的や対象者、機能などに大きな違いがあるため、よく理解して購入する必要があります。 本記事では、補聴器と集音器の違いがわからず購入を迷っている方に向けて以下を解説します。
- 8つの違い
- メリット・デメリット
- どちらがいいか判断するポイント
補聴器と集音器の8つの違いを比較表にして解説しています。補聴器と集音器の違いを見比べたい方は参考にしてください。補聴器の種類を知りたい方は「【比較表付き】補聴器9種類の特徴|自分に最適な補聴器を選ぼう!」を参考にしてください。
補聴器と集音器の基本的な違いとは?
補聴器と集音器の基本的な違いは以下の通りです。
- 補聴器は薬機法に基づいて認証を受けた「管理医療機器」
- 集音器は周囲の音を一律で大きくする「音響機器」
それぞれの詳細を解説します。
補聴器は薬機法に基づいて認証を受けた「管理医療機器」
補聴器は、薬機法に基づいて認証を受けた「管理医療機器」。そのため、効果や安全性が一定の基準を満たした状態で販売されています。
補聴器の特徴は以下の通りです。
- 装用者の聴力の状態に合わせて必要な音だけを大きくできる
- 耳を痛めないために必要以上の音を出さないように調整できる
補聴器は、個々のライフスタイルや要望に合わせて聞こえの調整が可能です。
集音器は周囲の音を一律で大きくする「音響機器」
集音器は、特定の音を強調するのではなく一律に大きくする「音響機器」。補聴器とは違い効果や安全性に基準がないため、種類によっては大きな音が出過ぎて耳を傷つけてしまう恐れもあります。
集音器の主な特徴は「すべての音を一律で大きくする」です。種類によっては、環境に応じて音の大小を調整できるものもあります。装用者の聴力に応じて、音を調整できるわけではないため注意が必要です。
【比較表】補聴器と集音器の8つの違い
補聴器と集音器の違いは以下の8つです。
補聴器 | 集音器 | |
---|---|---|
①使用目的 | 会話の聞き取りを改善するため | 聞こえにくさを緩和するため |
②対象者 | 軽度から重度難聴者 | 軽度難聴者 |
③調整機能 | 必要な音を大きくして不要な音を抑制できる | 調整はできない |
④価格帯 | 約3〜70万円 | 約1〜10万円 |
⑤購入の流れ | 医師の診察後に販売店で購入する | いつでも購入できる |
⑥購入場所 | 医療機関・補聴器専門店 | 家電量販店・通販 |
⑦アフターケアとサポート | 聞こえの調整・点検・修理など | 修理対応等はあるが聞こえの調整などはない |
⑧公的補助の有無 | 国や自治体からの公的補助がある | 公的補助はない |
それぞれの詳細を解説します。
①使用目的と②対象者の違い
補聴器は難聴者に向けて設計しています。一方、集音器はあくまでも、一律で音を大きくするための音響機器です。補聴器と集音器は見た目が似ているため、使用目的を誤認して使用してしまうケースがあるため注意が必要です。使用目的や対象者は以下のように異なります。
使用目的 | 対象者 | |
---|---|---|
補聴器 | 聞き取りにくくなった会話の聞き取りを改善するため | 軽度から重度難聴者 |
集音器 | 周囲の音を大きくすることで聞こえにくさを緩和するため | 軽度難聴者 |
なお、独立行政法人国民生活センターの通信販売の補聴器等の安全性や補聴効果(概要)には「難聴者は集音器等を使用しないようにしよう」という記載あります。
これは、難聴者が集音器を使用すると「補聴効果が低い」「安全上問題がある」といった理由からであると考えられます。
③調整機能の違い
補聴器と集音器では、以下のように調整機能に大きな違いがあります。
調整機能 | |
---|---|
補聴器 | ・聞こえにくくなった音を大きくする ・不要な音が大きくなるのを抑えて不快な雑音や響きを防ぐ ・会話がはっきり聞こえやすいように音のバランスを整える |
集音器 | 一人ひとりの聴力に合わせた調整はできない |
以上のように補聴器は一人ひとりの聴覚に合わせて調整できます。一方、集音器は基本的に調整できません。
④価格帯の違い
以下の表からわかるように補聴器は高価なもので数十万円します。一方、集音器は比較的手頃な価格で購入できます。
価格帯 | |
---|---|
補聴器 | 約3〜70万。形状や機能により価格が大きく変動する |
集音器 | 約1〜10万円。補聴器と比較すると安い価格帯が多い |
補聴器は、小さな機器のなかに複雑な機能が搭載されているため高価になってしまいます。
⑤購入の流れと⑥購入場所の違い
購入の流れや購入の場所の違いは以下の通りです。
購入の流れ | 購入場所 | |
---|---|---|
補聴器 | 医師の診察後、補聴器販売店でフィッティングを受けて購入するのが推奨される | ・医療機関 ・補聴器専門店 ・補聴器取扱いメガネ販売店 |
集音器 | いつでも気軽に購入可能である | ・家電量販店 ・通販 |
補聴器は、医師の診察や販売店スタッフのフィッティングを受けずに、補聴器を購入してしまうケースもありますが、、医師の診察やフィッティングを受けないと「そもそも補聴器が必要な状態であるのか」「どのような補聴器が必要であるのか」の判断や「個々に合った聞こえの状態」に調整することもできません。
また、「耳の手術を受けた経験がある」「耳あなに痛みやかゆみがある 」などの禁忌8項目に該当している場合、医師の指導がなければ補聴器を販売できません。これらのことがあるため、補聴器は耳鼻咽喉科を受診してから、補聴器専門店でフィッティングを受けて購入することを推奨します。
参考:禁忌8項目 一般社団法人 日本補聴器販売店協会⑦アフターケアとサポートの違い
補聴器と集音器では、以下のようにアフターケアとサポートに大きな違いがあります。
アフターケアとサポート | |
---|---|
補聴器 | ・聞こえの調整 ・点検や修理 ・修理中の貸し出し ・出張点検 ・部品交換 ・クリーニング |
集音器 | 修理対応等はあるが聞こえの調整などはない |
補聴器のアフターケアとサポートを確かに受けられるよう、購入前にホームページ等できちんと確認することに加えて、購入する店舗が「認定補聴器技能者」在籍店、また「認定補聴器専門店」であることを確認することがオススメです。
⑧公的補助の有無の違い
補聴器は、以下のようにさまざまな公的補助が用意されています。一方、集音器には公的補助がありません。
公的補助の有無 | |
---|---|
補聴器 | ・補装具費支給制度(身体障害者手帳の交付を受けた人が対象) ・医療費控除(補聴器相談医から補聴器が必要と診断された方が対象) ・地方自治体独自の補助(地域により要件は異なる) |
集音器 | 公的補助はない |
補聴器の公的補助は豊富に用意されていますが、要件を満たさないと利用できないため事前に確認してください。
補聴器と集音器のメリット・デメリット
補聴器と集音器それぞれのメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
補聴器 | 調整と長期的なサポートを受けられる | 慣れるまでの時間がかかる |
集音器 | 手軽かつ低コストで利用できる | 調整の限界と騒音性難聴のリスクがある |
それぞれの詳細を解説します。
1.補聴器のメリット|調整と長期的なサポートを受けられる
ほとんどの補聴器は装用者に合わせて音を調整する機能があります。また、器種にもよりますが、不要な雑音を抑制する機能や騒がしい場所でも聞き取りをよくする機能などが搭載されています。そのため、以下のように個々の聞こえのニーズに合わせることが可能です。
- 家族とのコミュニケーションのために利用したい
- 音楽や映画など趣味を楽しみたい
- 仕事などたくさんの人がいる現場で利用したい
また、購入後も調整やメンテナンスなどのサポートが受けられるため、装用者のニーズに沿った聞こえの状態に近づけることができます。
補聴器の選び方の詳細を知りたい方は「補聴器の選び方|主な5つの基準と試聴時に確認すべきポイントを解説」を参考にしてください。
2.補聴器のデメリット|慣れるまでの時間がかかる
補聴器は個々のニーズに合わせた調整ができる反面、慣れるまで時間がかかるデメリットがあります。補聴器はすぐに理想の聞こえの状態になるわけではなく、装用を開始してから1〜2週間に1回の調整を少なくとも3回は必要です。
とくに最初の3ヵ月ほどは、聞こえに問題がないと感じても調整を推奨しています。また、集音器と比較すると初期費用が高くなる傾向です。とはいえ、前述した通り補聴器は費用を抑えるためのさまざまな公的補助が用意されています。
3.集音器のメリット|気軽かつ低コストで利用できる
集音器の大きなメリットは気軽かつ低コストで利用できること。集音器は、補聴器とは違い家電量販店や通販などで気軽に購入できます。
また、数万円から数十万円する補聴器の価格帯と比較して、集音器は1万円前後と低コストで購入できるため気軽に試すことも可能です。
4.集音器のデメリット|調整の限界と騒音性難聴のリスクがある
集音器のデメリットは調整ができないことです。また、使用時間や音の大きさによって騒音性難聴のリスクがあります。
実際に集音器の取扱説明書には、以下のような記載がされていることがあります。
- 長時間使用しないこと
- 難聴と診断された方は使用を推奨できない
たとえ短時間の使用でも音の大きさによっては、騒音性難聴の危険があるという報告もあります。集音器を使用する際は音の大きさや使用時間に注意が必要です。
補聴器と集音器のどちらがいいか判断するポイント
補聴器と集音器どちらがいいか判断に迷う場合は、以下のように専門家の意見を求めることが大切です。
- 補聴器相談医を受診してみる
- 認定補聴器専門店で無料相談・試聴をしてみる
それぞれの詳細を解説します。
1.補聴器相談医を受診してみる
補聴器相談医を受診すれば、難聴の診察と補聴器が必要かどうかの判断をしてもらえます。補聴器相談医とは、補聴器が必要かどうかを合理的に判断できる専門的な知識を持つ医師です。
検査では、言葉の聞き取りや純音聴力(音を聞き取る能力を調べる検査)などを確認します。
2.認定補聴器専門店で無料相談・試聴してみる
認定補聴器専門店であれば、補聴器の専門家から適切な助言をもらえます。認定補聴器専門店とは、以下のような運営基準を満たしている補聴器販売店です。
- 専門知識を有する認定補聴器技能者が在籍している
- 相談へ対応、器種の選定、使用の指導などが適切に行われている
- 補聴器の調整のために必要な設備等が整っている
- 補聴器相談医と連携している
補聴器販売店で補聴器を試聴して、その後に家電量販店などで集音器を試聴してみてもよいでしょう。補聴器の購入の流れを知りたい方は「【補聴器の買い方】耳鼻科受診から購入までの流れを6ステップで解説」を参考にしてください。
補聴器と集音器どちらがいいのか迷ったら専門家に相談しよう
そもそも、医療機関を受診しなければ補聴器が必要であるかの判断ができません。そのため、まずは補聴器相談医の診察を受けるのがおすすめです。
補聴器が必要と診断されたら、専門知識を有する認定補聴器技能者に相談することを推奨します。認定補聴器技能者が在籍しているお近くの店舗を探したい方は、こちらから検索してください。
参考
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 補聴器購入者が医療費控除を受けるために
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 補聴器相談医とは?
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 補聴器のやさしい解説
一般社団法人 日本補聴器工業会 補聴器ライフを楽しもう お店で定期的なアフターケア
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 補聴器を使って快聴ライフ!使い始めるタイミングから選び方まで
-
記事投稿者
吉沢仁(よしざわひとし)
看護専門学校を卒業後、病棟看護師として従事する。2021年からWebライターの活動を開始。医療・健康分野を専門にしており、生活習慣病や精神疾患、呼吸器疾患、循環器疾患、小児疾患などさまざまな分野で執筆経験がある。医療系の総執筆数は200本以上。現在は医療系メディアでSEOライティングを中心に対応中。