
「補聴器は種類が多くどのような違いがあるのかわからない」 「自分に最適な補聴器の種類がわからない」 補聴器の購入を検討する際はこのような悩みが出てくると思います。自分に最適な補聴器を選択するには、各種類の特徴を理解することが大切です。本記事では、補聴器の購入を検討している方に向けて以下を解説します。
- 補聴器9種類それぞれのメリット・デメリット
- 最適な補聴器を選択するための3ステップ
- 補聴器に搭載されている主な5つの機能
補聴器9種類それぞれのメリット・デメリットの一覧表も記載しているため、補聴器選びの参考にしてください。
【比較表】補聴器9種類それぞれのメリット・デメリット
種類 | メリット | デメリット |
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![]() 1.耳かけ型(BTE) |
・大きさがあり操作性がよい ・重度難聴まで対応できる器種がある ・イヤモールド(耳せんのこと)により装用感を調整できる |
・汗が入りやすい ・本体が大きく目立ちやすい ・マスクやメガネを装着する際に邪魔になることがある |
![]() 2.耳かけ型(RITE) |
・自然な音が聞こえやすい ・BTEより小型で目立ちにくい ・重度難聴まで対応できる器種がある |
・一定の器用さが必要である ・髪が短いとうしろから見える ・しっとりした耳垢がある方は不向きである |
![]() 3.耳あな型(IIC) |
・外からほとんど見えない ・耳あな型の中では自然な音が聞こえやすい ・風切り音などの雑音を拾いにくい |
・重度難聴には対応できない場合がある ・手先の器用さが必要である ・閉塞感を感じやすい ・しっとりした耳垢がある方は不向きである |
![]() 4.耳あな型(CIC) |
・IICの次に目立たない ・耳あな型の中では自然な音が聞こえやすい ・風切り音などの雑音を拾いにくい |
・重度難聴には対応できない場合がある ・手先の器用さが必要である ・閉塞感を感じやすい ・しっとりした耳垢がある方は不向きである |
![]() 5.耳あな型(カナル) |
・重度難聴まで対応できる器種がある ・比較的目立ちにくい ・一定の大きさがあるため操作性がよい |
・横からみると目立つ ・閉塞感を感じやすい ・しっとりした耳垢がある方は不向きである |
![]() 6.耳あな型(ハーフサイズ) |
・重度難聴まで対応できる器種がある ・一定の大きさがあるため操作性がよい ・操作ボタンを搭載できる |
・カナルよりも目立つ ・閉塞感を感じやすい ・しっとりした耳垢がある方は不向きである |
![]() 7.耳あな型(フルサイズ) |
・重度難聴まで対応できる器種がある ・サイズが大きいため操作性がよい ・ハウリングが起きにくい |
・サイズが大きいため目立つ ・閉塞感を感じやすい ・しっとりした耳垢がある方は不向きである |
![]() 8.ポケット型補聴器 |
・取り扱いが容易である ・重度難聴まで対応できる器種がある ・本体が大きく紛失しにくい |
・コードが邪魔になることがある ・衣ずれ音が入ることがある ・本体が大きく目立つ |
![]() 9.骨伝導型補聴器 |
・耳あなの狭い方でも使える可能性がある ・軟骨伝導タイプであれば軽い密着でよいため負担が少ない ・耳だれ(耳の分泌物)漏により従来の補聴器が使えなかった方でも利用できる |
・加齢性難聴者には不向きである ・伝音性難聴がない場合には有効とされていない ・骨伝導タイプは本体が大きく目立つ |
なお、耳あな型は耳の型をとって作成するオーダーメイドと既製品があります。ここからは、それぞれの補聴器の特徴とメリット・デメリットを詳細に解説します。
1.耳かけ型(BTE)|大きさがあり操作性のよい補聴器
耳かけ型(BTE) は、スピーカーを含む本体を耳の後ろにかけて、小さなチューブを通して耳に音を伝える補聴器です。一定の大きさがあるため操作や手入れがしやすいのが特徴です。目立ちにくいミニBTEという種類もあります。
メリット | ・一定の大きさがあるため操作性がよい ・重度難聴まで対応できる器種がある ・イヤモールドにより装用感を調整できる ・カラフルでおしゃれなデザインが増えている |
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デメリット | ・汗が入りやすい(汗に強い器種もある) ・本体が大きいため目立ちやすい ・マスクやメガネを装着する際に邪魔になることがある |
2.耳かけ型(RITE)|耳かけ型と耳あな型のよい部分を合わせた補聴器
耳かけ型(RITE)は、スピーカーを含まない本体を耳のうしろにかけて使用する補聴器です。本体とスピーカーはワイヤーにより分離してつながっており、耳の中にスピーカーを装用します。
従来の耳かけ型と耳あな型のメリットを合わせたもので、現在主流になっている種類の1つです。
メリット | ・スピーカーを耳の中に入れるため自然な音が聞こえやすい ・BTEよりも小型で目立ちにくい ・重度難聴まで対応できる器種がある ・髪色に合わせた目立たないカラーや華やかなカラーなど豊富な種類がある |
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デメリット | ・汗が入りやすい ・小さい器種の場合は器用さが必要である ・耳の中にスピーカーを装用するためしっとりした耳垢がある方は不向きである ・BTEよりは小型であるが髪が短いとうしろから見える ・マスクやメガネを装着する際に邪魔になることがある |
3.耳あな型(IIC)|ほとんど見えない補聴器
耳あな型(IIC)は、耳あなに装用する補聴器の中で最も小さな種類です。耳あなの中にすっぽりと収まるため、外からはほとんど見えません。周囲に補聴器を見せたくない方に最適です。耳あなの形によっては、オーダーメイドで作成できない場合があるため注意してください。
メリット | ・耳あなの中にすっぽりと収まるため外からはほとんど見えない ・音を集める耳の働きを利用できるため耳あな型の中では自然な音に聞こえやすい ・風などの雑音を拾いにくい ・メガネやマスク、帽子の邪魔にならない |
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デメリット | ・重度の難聴には対応できない場合がある ・既製品である耳かけ型と比較して高額になる傾向がある ・取り扱いには手先の器用さが必要である ・機能が限定される傾向がある ・耳あなを塞ぐため閉塞感を感じやすい ・しっとりした耳垢がある方は不向きである |
4.耳あな型(CIC)|極めて目立たない補聴器
耳あな型(CIC)はIICの次に小さな補聴器。こちらも外からは極めて目立ちにくいです。耳の形状の都合で、IICが作成できない場合におすすめされることがあります。CICとIICともに軽度から中等度の難聴の方に適している補聴器です。
メリット | ・IICの次に小さいため極めて目立たない ・音を集める耳の働きを利用できるため耳あな型の中では自然な音に聞こえやすい ・風などの雑音を拾いにくい ・メガネやマスク、帽子の邪魔にならない |
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デメリット | ・重度の難聴には対応できない場合がある ・高額になる傾向がある ・取り扱いには手先の器用さが必要である ・機能が限定されることがある ・耳あなを塞ぐため閉塞感を感じやすい ・しっとりした耳垢がある方は不向きである |
5.耳あな型(カナル)|目立ちにくさと操作性のバランスがよい補聴器
耳あな型(カナル)は、耳あな型のなかで標準的なサイズの補聴器です。耳あなのやや外側に装用します。ITCとも呼ばれており、IICとCICよりもやや大きいため操作性がよいです。
メリット | ・重度難聴まで対応できる器種がある ・比較的目立ちにくい ・一定の大きさがあるため操作性が良い ・サイズが大きめであるため音量調整などのボタンを搭載できる |
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デメリット | ・耳あなのやや外側に装用するため横から見ると目立つ ・耳あなを塞ぐため閉塞感を感じやすい ・しっとりした耳垢がある方は不向きである |
6.耳あな型(ハーフサイズ)|操作性のよい耳あな補聴器
耳あな型(ハーフ)は、カナルよりもやや大きいサイズの補聴器です。操作性がよいため手先の器用さに自信がない人に最適な補聴器です。
メリット | ・重度難聴まで対応できる器種がある ・一定の大きさがあるため操作性がよい ・サイズが大きめであるため音量調整などのボタンを搭載できる |
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デメリット | ・カナルよりも目立ってしまう ・耳あなを塞ぐため閉塞感を感じやすい ・しっとりした耳垢がある方は不向きである |
7.耳あな型(フルサイズ)|操作性がよくハウリングが起きにくい補聴器
耳あな型(フルサイズ)は、耳のくぼみにすっぽり収まるタイプで、耳あな型の中で最も大きい補聴器です。大きい分操作性がよいため手が不自由な方でも扱いやすいです。
メリット | ・重度難聴まで対応できる器種がある ・サイズが大きいため耳あな型の中で最も操作性がよい ・サイズが大きいため音量調整などのボタンを搭載できる ・ハウリングが起きにくい |
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デメリット | ・サイズが大きいため横から見ると目立つ ・耳あな付近のくぼみ全体を覆うため閉塞感を感じやすい ・しっとりした耳垢がある方は不向きである |
8.ポケット型補聴器|本体とイヤホンをコードでつなぐ補聴器
ポケット型補聴器とは、本体とイヤホンをコードでつなぐタイプの補聴器です。本体はポケットに入れたり首からかけたりして使用します。操作ボタンも大きく、手先の器用さに自信がない方や手が不自由な方も扱いやすいです。
メリット | ・操作ボタンが大きく取り扱いが容易である ・重度難聴まで対応できる器種がある ・本体が大きいため紛失しにくい ・マイク内蔵型の場合は本体を話し手に向けると聞こえやすくなる ・比較的な安価である ・乾電池を使用するタイプもあるため電池交換の頻度が少ない |
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デメリット | ・コードが邪魔になることがある ・衣ずれ音が入ることがある ・本体が大きく目立つ ・マイクが本来の耳の位置にないため、音が不自然になる可能性がある ・ほとんどの場合方向感が得られない |
9.骨伝導型補聴器|骨からの伝達により音を伝える補聴器
骨伝導補聴器とは「骨伝導」の仕組みを利用して、耳あなを通さずに骨から伝達させて耳の中に音を伝える補聴器です。
骨伝導補聴器は、伝音難聴(音が伝わる過程に問題がある難聴)に有効とされており、感音難聴(音を感じ取る機能に問題がある難聴)に不向きとされています。主に骨伝導補聴器と軟骨伝導補聴器の種類があります。
メリット | ・耳あなの狭い方でも使える可能性がある ・軟骨伝導タイプであれば軽い密着でよいため負担が少ない ・耳だれにより従来の補聴器が使えなかった方でも利用できる |
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デメリット | ・感音難聴には不向きである ・伝音性難聴がない場合には有効とされていない骨伝導タイプは本体が大きく目立つ ・骨伝導タイプは肌に密着させる必要があるため痛みが出ることがある |
補聴器と集音器の違い
補聴器と集音器の違いを簡潔に述べると以下の通りです。
補聴器 | 聞こえにくい音のみを大きくする「管理医療機器」 |
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集音器 | 不要な音を含むすべての音を大きくする「雑貨」 |
補聴器は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(通称「薬機法」)という法律に従い厚生労働省に認定を受けた「管理医療機器」です。装用する方の聞こえにくい音に合わせて、音の大きさを調整できます。したがって、購入の際に装用する方の聞こえに合わせて調整する必要があります。
一方、集音器は製造や販売に認可は不要である「雑貨」です。効果や安全性に基準はなく、不要な音もすべて大きくします。装用する方に合わせて調整することができないため、使い方によっては耳を痛めることもあります。
最適な補聴器の種類を選択するための3ステップ
最適な補聴器の種類を選択するには、最低でも以下のような3ステップを踏むことが大切です。
- 聴力レベルを確認する
- 生活スタイルとニーズを確認する
- 手先の器用さを確認する
それぞれの詳細を解説します。補聴器の選び方についてさらに詳細を知りたい方は「補聴器の選び方|主な5つの基準と試聴時に確認すべきポイントを解説」も参考にしてください。
1. 聴力レベルを確認する
補聴器を選ぶ際は聴力レベルを把握したうえで、補聴器相談医や認定補聴器技能者などの専門家とよく相談することが大切です。そのため、まずは耳鼻咽喉科を受診して聴力レベルを確認してください。
前述した通り補聴器には、軽度、中等度、重度の聴力レベルに応じた器種が存在しそれぞれ特徴が異なります。専門家にスムーズな相談をするために各補聴器のタイプをある程度知っておくことも重要です。また「どのようなシュチュエーションで使用したいのか」など、相談したいこともまとめておいてください。
2.生活スタイルとニーズを確認する
生活スタイルや自分の聞こえのニーズに応じて、器種を選択することは特に大切です。例えば、以下のような状況では必要な補聴器や聞こえのニーズは異なるためです。
- 家族とのコミュニケーションが主な使用目的である
- 仕事をしているため複数の人と話す必要がある
ほかにも、自宅ではなく病院や施設で過ごしている方では、必要となる補聴器の種類は異なるでしょう。
3. 手先の器用さを確認する
補聴器は非常に小さな医療機器であるため、手先の器用さが求められます。そのため、「小さなものを掴むことが難しい」「指先の感覚が弱っている」などがある方は、 超小型であるIICやCICなどは不向きであると考えられます。
また、補聴器は小型であるほど電池も小さくなり、交換の回数も増えるため注意が必要です。手先の器用さに不安がある方は、耳かけ型のBTEやRITE、耳あな型のカナル、ハーフサイズ、フルサイズなどの種類が選択肢になるでしょう。
補聴器を購入する際は、実際に手に取って補聴器のつけ外しや電池の入れ替えなどの作業ができそうかを確認してください。
補聴器の種類に応じて搭載されている主な5つの機能

補聴器には器種によって以下のような便利な機能が搭載されています。
- 雑音を抑制する機能
- ハウリングを抑制する機能
- 無線通信機能
- 防水機能
- 充電機能
ここでは、補聴器に搭載されている主な機能を把握して、自分の生活スタイルに必要かどうかの判断材料にしてください。なお、補聴器は一般的に機能が搭載されているほど高価になるため注意してください。
1.雑音を抑制する機能
ほとんどの補聴器には雑音を抑制する機能が搭載されています。例えば、以下のような雑音を抑制します。
- 掃除機などの機械音や乗り物の走行音
- 人が多い場所などの周囲の音
- 食器同士が当たる音などの不快な音
- 風の強い場所などの風切り音
以上のようなそれぞれの音に対して、異なる処理が行われ雑音を抑制します。雑音の処理能力が高い器種は高価になる傾向があります。
2.ハウリングを抑制する機能
ハウリング(ピーピー音)は、補聴器のスピーカーから出力された音が再びマイクに帰ってくることで発生します。ハウリング抑制機能が搭載されていると、スピーカーからマイクに帰る音を打ち消すことでハウリングを抑制できます。
ハウリング抑制機能は、強力なものから弱いもの、まったくないものと器種によってさまざまです。ハウリングは、耳の閉塞感や圧迫感を軽減するオープンフィッティングや、大きな増幅が必要となる高度・重度難聴装用者に起きやすいです。そのような場合は、ハウリング抑制機能が搭載されているほうがよいでしょう。
3.無線通信機能(Bluetooth®)
近年のデジタル補聴器では、以下のように無線通信機能(Bluetooth)の応用が拡大しています。
- 補聴器を操作するリモコンとの接続
- テレビやスマートフォン、音楽プレーヤーとの接続
- 離れた相手の声を聞き取りやすくするワイヤレスマイク
テレビやスマートフォン、音楽プレーヤーに関しては直接補聴器に流すことができます。
4.防水機能
防水機能があれば、日常生活での水濡れによる故障リスクを減らせます。以下に当てはまる方は、防水機能が搭載されている補聴器を検討してください。
- 顔に汗をかきやすい
- 仕事上、湿度の高い環境にいることが多い
- 釣りなど水辺で行う趣味がある
補聴器の防水機能は「IP〇〇」という保護等級で表記されます。手前の数字は塵や砂などに対する保護能力を0〜6で表記し、奥の数字は水に対する保護能力を1〜8で表記します。保護等級が最も高くても、完全防水ではないということに注意してください。
5.充電機能
補聴器には電池式のほかに充電式があります。充電式であれば、電池交換や電池の蓋の開閉などの細かい作業が不要になり、電池のランニングコストも抑えられます。ただし、充電式の補聴器は充電器が含まれる分、価格が上がるため注意が必要です。
また、補聴器購入時に「充電器も付いてくるのか」「別途購入が必要であるのか」の確認もしてください。
補聴器の種類の特徴を理解して自分にぴったりな器種を選ぼう
自分にぴったりな補聴器を選ぶためには、各種類の特徴を理解することが大切です。各種類の特徴を理解して補聴器を選択すれば、自分の要望を満たすことにつながり、理想の生活スタイルに近づけられるためです。
補聴器の種類や機能については、専門知識を有している補聴器相談医や認定補聴器技能者に相談することが大切です。自分にぴったりな補聴器がわからないという方は、お近くの認定補聴器専門店や認定補聴器技能者が在籍する販売店で相談してみてください。
参考
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記事投稿者
吉沢仁(よしざわひとし)
看護専門学校を卒業後、病棟看護師として従事する。2021年からWebライターの活動を開始。医療・健康分野を専門にしており、生活習慣病や精神疾患、呼吸器疾患、循環器疾患、小児疾患などさまざまな分野で執筆経験がある。医療系の総執筆数は200本以上。現在は医療系メディアでSEOライティングを中心に対応中。