補聴器を使うと聞こえは改善しますが、騒がしい環境下での会話や早口のおしゃべりなど、補聴器を付けている方にとって聞き取りが困難なシーンは多々あります。そういう時はゆっくり話すなど気遣いたいものです。お互いが上手にコミュニケーションをとるために、補聴器ユーザーの人が聞き取りやすくなる話し方を知りましょう。
正面を見てゆっくり話すのが基本。大声は避けて
「補聴器ユーザー=音が聞こえにくい」と思ってしまいがちですが、補聴器を装着している時点で必要な音は増幅されて聞こえるようになっています。だから、雑音の多い聞こえの難しい場所でなければ普通の声の大きさでお話しいただければ大丈夫です。
それよりも大切なのはゆっくりと、はっきり話すことです。健聴者でも早口で話されると、相手の言っていることを把握するのに困難を伴いますが、補聴器ユーザーならなおのこと聞き取りのハードルが上がります。さらにもし相手に話しかけた言葉が伝わっていないかもしれないと感じたら別の言葉に言いかえて伝えましょう。
また会話の内容を理解するうえでは、視覚からの情報も重要な手がかりになります。会話の際は補聴器ユーザーから顔が見えるように正面の位置から、口をしっかりと動かして話しましょう、ジェスチャーを交えていただくことも有効です。口の動きから言葉を推測することもあります。したがってマスクなどはできる限り外してください。お互いの顔のよく見える明るい場所を選んでいただくことも効果的です。
人の耳は前からの声をよりとらえやすい形をしています。また現在の補聴器のほとんどにおいて、主に正面や前から届く音を拾いやすい特性があります。従って補聴器ユーザーは背後から話しかけられた時にそのことに気がつかないこともあります。できるだけきちんとアイコンタクトをとってから話しかけましょう。
また難聴者は言葉の聞き分けが難しく、補聴器を使っていても聞き間違えてしまうことがあります。聞き取りにくいようにしていると感じたら、補足説明を加えたり「はつか(20日)」を「にじゅうにち」と言うなど、分かりやすい言葉に言い換えてみましょう。
さまざまな音源のあるレストランにおける難聴者のための工夫。席や話し方
難聴者は騒がしい場所での言葉の聞き取りがより難しくなります(これは健聴者もおなじですが)。多くの補聴器は騒音の中から必要な音をすばやく選び取り、増幅する機能が搭載されていますが、完全ではありません。レストランなど騒音の多い場所ではできるだけ近づいて話したり、騒音よりも大きな声で伝えるようにします。席を選べるのであれば、できれば厨房や出入り口、BGMの流れるスピーカーなどの騒音の発生源から離れた場所に座ることは大きな手助けになります。家庭内ではテレビの音声も聞こえの妨げになるので、会話をするときは音量を下げるかスイッチを切っておくといいでしょう。
補聴器ユーザーの方々は、どうぞ無理のない範囲で周囲の協力を得られるように周りの人々伝えてみてください
補聴器ユーザーの方々は、どうぞ周囲の人に、たとえ補聴器を使っていても聞こえにくいシチュエーションがあることを具体的に伝えて、ここまでお話ししてきたような協力を得られるように話をしてみてください。またご自身がゆっくりと明瞭な口調で話すことで、周囲に同様の話し方が広がることもあります。
家族や友人また聴覚ケアなどに関わる関係者でない限り、ほとんどの健聴者は補聴器についての知識を持ち合わせていません。十分な知識がないままにお互いに必要以上に気を遣ってしまい、伝わりにくさをそのままにしておくことよりも「聞こえの問題を知ってもらうこと」が円滑なコミュニケーションにつながる第一歩になります。難聴者にとって会話がしやすい環境は、誰にとっても円滑なコミュニケーションが実現できる環境です。
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営 2.「安心聞こえのネットワーク」連携サポート
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記事監修者
若山 貴久子 先生
1914年から100年以上の実績「若山医院 眼科耳鼻咽喉科」院長。■詳しいプロフィールを見る■