2020.09.18公開

工夫で行動を変える ~聞こえと付き合う 4つの方法~

ミーティング

「最近、聞き返すことが増えてきたな」と感じても、具体的にどうすればいいのか分からずに悩んでいる方は多くいらっしゃいます。自分の聞こえとうまく付き合っていくには、どんな方法があるのでしょうか。ご自身も高校時代に難聴となり、補聴器や人工内耳の装用経験をもち、現在補聴器メーカーに勤めている杉崎きみのさんに、ご自身が実践されているコミュニケーションの工夫を伺いました。

杉崎きみの(すぎざき・きみの)

オーティコン補聴器
ソリューションマーケティング部
プロフェッショナルリレーションズ
医療情報メーカーのシステム開発部やマーケティング部などを経て現職。医療機関やろう学校への製品情報提供などを行い、補聴器や聴覚ケアの普及啓発やマーケティングに尽力する。高校生のころ進行性の感音難聴との診断を受け、補聴器の装用を開始。特発性両側性感音難聴の特徴で、聴力低下が進行し補聴器を使っても音が聞き取れなくなったため、人工内耳手術を受けた。

会話は双方が主役のコミュニケーション

ーー杉崎さんは感音難聴と付き合いながら、仕事でも活躍してされています。日々の生活や仕事環境で工夫をしていることは?

杉崎 会話は双方が主役のコミュニケーション。だかこそ、難聴者も健聴者も、相手の立場で考える姿勢を基本にしてほしいですね。難聴者が聞きこぼしを補いながらコミュニケーションをするためには、健聴者側でも会話継続の工夫など気にしてほしい、と感じることもあります。けれど周囲の人たちの立場になれば、頭でわかっていてもできないことってあるんです。例えば会話の際、一文を短く、明瞭に話せば聞き取りやすい。そう理解していても、いざ会話で実践しようとするとうまく話せなかったり、早口になってしまったり・・・・・・そんなことってありますよね。そんなとき、私は次のような工夫を実践していました。この方法は一部ブックレット『「聞こえにくい」をほっとかない』(小川郁編、日本看護協会出版会)でも詳しく紹介していますので、参考にしてみてください。

本を見せる杉崎きみのさん

①会話の工夫

できるだけ聞き取れた部分を使いながら文章を構成し直して質問するようにこころがけています。どこまで理解できているかを伝えながら確認していけば、私自身何度も「聞こえないので、もう一度言ってください」と繰り返さずにすむため、聞き返しに負担がありません。また、聞き返しがあると、実は話し相手にも「何が伝わらなかったんだろう?」「どこまで話せばいいんだろう」という戸惑いが生まれます。聞き返すときは「ここまでは伝わっていますよ」と明確に示しておくと、相手が答えやすくなり、聞き返しながらでも会話がスムーズに運ぶように思います。

②聞く環境を整える

パソコン作業中の医師

仕事で大事な話をする際は、大事な会話に他の音が重なってしまうと聞き取りづらくなってしまう場合もあるため、今その場よりも少しだけ静かな環境に場所を移ったりしています。 作業と並行して会話する「ながらしゃべり」をせずに、お互い顔を合わせるのも大事ですね。唇の動きや表情などが文脈や単語を理解する助けになります。仕事柄病院の先生にアポを取りお話させていただくことがあるのですが、お医者さまが書き物をしたり、作業をしたりされていると口の動きや表情が見えません。そんな時は「先生の用事がすむまでお待ちしてますので、その後お話させてください」とお願いし、できるだけ向き合って話すように心がけています。

③聴器や人工内耳について知る

難聴だからといって大きな音を出せばいい訳ではありません。補聴器は、ひとりひとりの聴力レベルに応じて会話に必要な音を適切に調整しています。また、機能もさまざま。「仕事場が騒がしい環境の場合は、何番のプログラムに設定すればよいですか?」や「スマートフォンで音楽を聴きたい場合はどうしたらよいですか?」など、やりたいことを相談するのもよいと思います。聴力レベルは変化することもあるのでので、定期的に医師(日本耳鼻咽喉科学会のサイトへ)補聴器の専門家(専門店・取扱店検索へ)に聴覚管理してもらうことも重要です。

④不安を可視化する

ノートをつける

聞こえにくさに関して何が不安かをノートに書きだしてみると「これは病院の先生に確認してみよう」「これは補聴器屋さんに聞いてみようかな」といった具合に整理でき、自然と次のステップに進みやすなります。私も、補聴器から人工内耳にステップアップする際に「聞くことノート」を作って人工内耳について調べたことや病院で教えてもらったことなどをメモしていました。これを家族や医師、補聴器販売店の担当者の方に見せると、具体的に何をすべきかがわかってきたんです。何よりも「今自分は、前に向かっている!」という実感が湧きました。不安を可視化すれば周囲に相談しやすくなり、「補聴器を使ってみる」というチャレンジの助けにもなるかと思います。ぜひ試してみてください。

ーーご自身も難聴と向き合い、日々前向きにいろいろなことにチャレンジされている杉崎さんの言葉に大変説得力を感じました。2回にわたるインタビュー、どうもありがとうございました。

第1回インタビューはこちら