2020.09.09公開

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と難聴: 今わかっていること

新型コロナウイルス感染症は難聴や耳鳴りを引き起こすか?

コロナウイルスとしても知られているCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)は現在、心臓の損傷、肺の損傷、神経障害など、たくさんの長期的な合併症との関連が指摘されています。 難聴や耳鳴りが、新型コロナウイルス感染症の症状として、または数日もしくは数週間後に出現する合併症として生じうるかどうか、ということが、新たな研究領域の1つとなっています。

様々な種類のウイルスや細菌による感染症の多くが、突発性難聴の原因となりうるということはすでに報告されています。しかし、SARS (重症急性呼吸器症候群) やMERS (中東呼吸器症候群) などの流行を引き起こしたコロナウイルスでは、聴覚障害は生じなかったようでした。世界的なパンデミックを引き起こしている、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルス(SARS-CoV-2)では難聴や耳鳴りを生じるのでしょうか? 以下に最新の研究を紹介いたします。

コロナウイルスと難聴

症状としての突発性難聴

公表されている症例報告によると、突発性難聴がコロナウイルス発症の症状であるということはほとんどないようです。

ある医学誌には、数人のイラン人患者が片耳での難聴と回転性めまいを経験していたことが報告されました。突発性難聴と新型コロナウイルス感染症についての別の報告では、コロナウイルスの症状がなかった一人のエジプト人男性が突発性難聴を発症し、検査をしたところコロナウイルス陽性と判明したケースがありました。

しかし、これらの報告以外に研究者が発表したものはほとんどありません。

注意:突発性難聴は緊急の治療が必要です。  片方の耳が突然聞こえなくなった場合、医師の診察を受けてください。治療が早ければ早いほど、聴力が回復する可能性が高くなります。

コロナウイルス感染症の合併症としての難聴

聞こえづらい

もう少し一般的と思われるのは(まだまれなのですが)、新型コロナウイルス感染症の合併症として難聴や耳鳴りが生じるということです。つまり、難聴や耳鳴は初期の症状ではなく、後になって生じるというものです。

しかしながら、これまでのところ、この話題に関する研究はあまり発表されていません。中耳の骨からウイルスが検出されたという検死報告がありました。この症例報告では、ドイツ人男性が新型コロナウイルス感染症肺炎にかかった後に急性の重度難聴を発症したことが報告されています。

おそらくこれまでで最も啓発的なのは、英国の調査結果です。この調査では、新型コロナウイルスに感染した患者の約10人に1人が、8週間後に難聴か耳鳴りが生じたことを自己申告していました。 これは驚くような調査結果なのですが、難聴と耳鳴は新型コロナウイルス感染症とは無関係であるか、または間接的に関連している可能性(薬の副作用など)があると著者らは指摘しています。

言い換えると、新型コロナウイルスの長期的な聴覚への影響に関する研究がさらに必要不可欠であることを意味しています。

「新型コロナウイルス感染症の聴覚と前庭システムへの、急性の影響および長期的なリスクを調査する、質の高い研究が必要である。」と、この話題に関するシステマティック・レビューの著者らは述べています。

コロナウイルスの治療に用いられる薬の副作用としての難聴または耳鳴り

すでに知られていること:コロナウイルスの治療に用いられる薬の中には、副作用として難聴、耳鳴り、めまいのリスクが比較的高いものがあります。これを「耳毒性」といいます。耳毒性のある薬には、キニーネ、クロロキン、ヒドロキシクロロキンなどがあります。

「これらの抗ウイルス薬には耳鳴りや難聴などの既知の有害事象があり、症状が新型コロナウイルス感染症によるものと誤診されることがあります。」と前述のシステマティック・レビューの著者らは述べています。

要点

研究者

コロナウイルスがどのように聴覚と平衡感覚に影響するかを完全に理解するには、さらなる研究が必要です。コロナウイルスがどの程度、難聴や耳鳴り、平衡感覚の障害を引き起こすのかについてはまだよくわかっていないのが現状です。

パンデミックが進行し、研究の焦点が長期的な影響に移行するにつれて、私達はさらに多くのことを学び始めることになります。今後また、研究に関する情報更新をしますのでご確認ください。

注意:コロナウイルスの大流行に関する情報は急速に発展しています。 コロナウイルスや聴力に不安がある場合は、医療関係者に相談してください。 

ヘルシーヒアリング編集局


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■英語版記事はこちらから

米国「Healthy Hearing」2020年8月19日の記事「COVID-19 and hearing loss: What we know

米国版記事寄稿:Joy Victory:Joy Victoryは消費者の健康に関する情報の編集者として幅広い経験を持っています。特に、彼女が実施する研修は、エビデンスに基づいた医療ガイドラインや臨床試験の結果をいかにして一般の人々に伝えるかに焦点を当てています。彼女は、健康に関する情報を正確に、入手しやすく、広く関心もってもらえるよう努めています。