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『音』の雑学 :音の雑学

  • 公開日:2021.10.20
雑学コラム
History

私たちの日常語の中には音が由来の言葉がたくさんあります。二種類以上の酒を同時に飲むことを指す「チャンポン」、物事がうまくいかない「おじゃんになる」、また外国語ではコロッケの元祖「クロケット」もこの種の言葉です(詳しい解説は本文にあります)。人々が音を言語化することは古来行われてきたので、何気なく使っている言葉の由来を考えることは、歴史を楽しむことでもあるのです。

 

多くの動物は鳴き方や音の高低で、仲間に危険や食べ物を見つけたことなどを伝えようとしています。

それが共通言語として発展していくのですが、知能が高いと言われる動物は細かいニュアンスを伝えるために、次第に集団ごとに鳴き方の取り決めが出来ていくみたいです。

頭が良いとされるカラスなども地域ごとに鳴き声と伝える意味が決まっており、別の群れに紛れ込んだカラスは意志が通じなくなりノイローゼになるという研究もあります。

人間も地域ごとに言葉を発達させた結果が、現在の英語や日本語のような言語となっていったのです。

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特に日本語は、島国ということで他地域の影響をあまり受けずに進化してきた特殊な言語となっています。

『おと』という言葉は、人間が言語によって意思の疎通をしようと考えた時に基準となる発声「おー」を相手にぶつける「突・疾」という意味だとか、「驚く」という言葉から誕生したとか、物が落ちた時に発生するので「落と」だとか、あまりにも古くから使われているために語源が特定されず、多くの学者が自説を述べ現在でも諸説が増え続けている状態です。

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行書

漢字の『音』は中国で考案されたものですが、この文字も古いため成り立ちは諸説考えられています。

神への祈りを表す「言」という漢字が変化し下の「口」の部分に神に唱える祝詞(のりと)を書いた文章「一」を加えたとか、上の「立」は刃物で下の「日」は音を発生させる物を意味するとか、書籍によって違うことが書かれています。

中国では「音」はオン・インなどと発音されますが、この漢字は「諳(そら)んじる」という意味、何も読まずに言葉を発生させるという意味で使われることも多いそうで、そこから暗唱の「暗」という文字が誕生して暗いという意味が加わり、閉ざされた場所「闇」という漢字も誕生しています。

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音を言語化することを覚えた人間は、さらに音から別の物を表すことを始めます。

いわゆる擬態語(オノマトペ)、パチパチドンドンなど音そのものから、次第にそれを物の名前に流用していきます。

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たとえば日本にも古くから自生している「タンポポ」は、その花の形が雅楽などで使う鼓に似ていることから「タンポポンと鳴らす鼓に似た花」として命名されています。

同じように春の七草に数えられる野草で一般的にはナズナと呼ばれる「ペンペン草」は、種が入っている鞘(さや)が、三味線を弾くときに使うバチの形に似ているということから、三味線を弾いた時の音「ペンペン」の名前が付けられたのです。

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楽器の音を流用した言葉は意外と多く、二種類以上の酒を同時に飲むことを「チャンポン」と言いますが、これは能楽のお囃子の音からきています。鉦(かね)の音がチャン、鼓の音がポン、この二つを同時に演奏することをチャンポンと呼んでいたことから誕生した飲み方を表す言葉です。

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明暦の大火 Meireki fire woodblock by Heineken, Ty & Kiyoko, CC BY-SA 3.0

物事が上手に行かずにダメになってしまうことを「おじゃんになる」と言いますが、これは江戸時代に火事になった時に打ち鳴らす半鐘(はんしょう)の音から来ています。

江戸の街は何度も大火事で焼失していますが、火事が発生した事を半鐘の大きな音で広く周囲に知らせましたが、この音は火事が収まるまでずっと鳴らされていたのです。

当時の火消しは消火というより、延焼を防ぎながら火事が発生した一帯を燃え尽くす方式だったので「半鐘が鳴り終わった」というのはすべてが燃え尽きてしまったという意味でした。

そこから全てがダメになったことを音から「おじゃんになる」と言い始めたのです。

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楽器の音から別の物を表す言葉が誕生するのは明治以降でも引き継がれており、日本映画で「チャンバラ」という言葉が誕生しています。これは刀で斬り合う場面にはテンポのよい三味線の伴奏が付けられるのが定番で、そのメロディが「チャンチャン、バラバラ、チャンチャン、バラバラ」と聞こえたことからチャンバラの名が誕生しています。

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このように擬音から物や状態を表す言葉が誕生するのは枚挙にいとまがありませんが、この傾向は日本だけではありません。

例えばフランスで考案されたコロッケの元祖クロケットは、日本語で言えばバリバリとかサクサクのような擬音「クロケ(croquer)」から生まれています。

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日常的に使っている言葉も歴史があり、それが豊かな文化となっています。何気なく使っている言葉でも、立ち止まってその由来を考えてみるということが、日常を楽しくするヒントになるかもしれません。

  • 記事投稿者

    杉村 喜光(知泉)

    杉村 喜光(知泉)

    雑学ライターとして、三省堂『異名・ニックネーム辞典』、ポプラ社『モノのなまえ事典』など著作多数。それ以外に様々な分野で活動。静岡のラジオで10年雑学を語りテレビ出演もあるが、ドラマ『ショムニ』主題歌の作詞なども手がける。現在は『源氏物語』の完訳漫画を手がけている。
    2022年6月15日に最新巻『まだまだあった!! アレにもコレにも! モノのなまえ事典/ポプラ社』が発刊。

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