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充電式補聴器の長所と短所

  • 公開日:2022.06.01
技術 補聴器
充電式補聴器

補聴器を検討するにあたってさまざまな観点や項目がありますが、充電式と使い捨ての空気電池式のどちらにするのかもその一つです。以前は空気電池式が主流でしたが、近年は充電式が人気を伸ばしています。どちらがよりよい選択かは、ユーザーの好み、生活スタイル等によっても変わってきます。空気電池式と比較しながら、充電式のメリット・デメリットを見ていきましょう。

 

現在の補聴器の多くは、使い捨てで自分で交換可能なボタン電池(補聴器用空気電池)か、自分で交換できない充電池の2種類の電池のどちらかを使用しています。

  • 空気電池式の補聴器の電池は交換可能です。
  • 充電式とは、夜の間は補聴器を充電器にセットしておき、充電池を交換する必要がありません。このスタイルを 「充電式補聴器」 または 「充電池内蔵補聴器」 と呼ぶことがありますが、これらは同じものです。
  • 技術の向上に伴い、充電式補聴器が急速に人気のある選択肢となりつつあります。ですが、ご自身の状況によっては使い捨ての空気電池の補聴器を好む人もいます。
充電池と使い捨て式の補聴器用電池

充電式補聴器の電池はどのようなものですか?

充電式補聴器は、従来の使い捨て空気電池式補聴器とは異なり、定期的に取り外す必要のない電池が内蔵されています。補聴器は電池自体を取り換えるのではなく、スマートフォンの充電方法と同じように、毎晩充電器に接続します。

ほとんどの充電式補聴器は、軽度から中等度の難聴がある方に最適です。しかし、高度から重度の難聴用の充電式の 「パワー」 補聴器がいくつかの補聴器メーカーから発売されています。

補聴器は充電式にすべきですか

充電式補聴器を装用する気持ちがあるとしても、従来の空気電池から充電池への変更は簡単ではありません。単純に電池を売っているお店に行って正しいサイズの充電式ボタン電池を購入して取り換えることはできません。補聴器用充電池は普通のお店には売っていないのです。

充電式補聴器を使用したい場合は、すでに充電池が装備されている新しい補聴器の購入について、聴覚ケアの専門家に相談してください。

では、充電式補聴器が自分に合っているかどうかは、どうやって判断するのでしょう?これは好みや購入予算に基づいて個人で決断することになります。充電式補聴器の長所と短所を知っておくと、あなたと担当の補聴器専門家とが話し合って最適なスタイルを選ぶ際に役立ちます。

充電池使用のメリット

  • まず長持ちします。現世代はリチウムイオン電池を使用しており、この電池は最大30時間の充電が可能で、交換が必要になるまで約5年間持続します。ただし、これはワイヤレスストリーミングなど、電力を大量に消費する機能をどれだけ使用するかによって大きく異なります。(一方、使い捨て空気電池式の補聴器では、補聴器のモデルによって違いますが、数日ごとに新しい電池に交換する必要があります。)
  • 子どもにも安心です。使い捨て空気電池は、子どもが誤って飲み込んだ場合には非常に危険です。ペットが飲み込むのも同様です。これはかなり頻繁に起こります。充電式補聴器は、補聴器全体を飲み込まない限り(それは実際に起こりえることです!)、このリスクはありません。
  • 環境に優しい。新しい電池に買い替えるのではなく充電するので、無駄が少なくなります。ただし、すべての電池は正しく廃棄しないと環境に悪影響を及ぼします。
  • 扱いやすい。手先の器用さに問題がある人や、電池をを頻繁に買ったり交換したりすることを心配したくない人は、充電式の補聴器を装用するとよいでしょう。これは、使い捨ての電池は小型であることが多く、電池を入れ替えるのが難しい場合があるためです。

「電池からシールを剥がしたり、電池を落とさないようにしたり、補聴器の電池室に電池を収めるのが難しい場合は、充電式であることが大きな利点になります。」と語るのは、補聴器の専門家で、オハイオ州ヒルズボローにあるEarzlink Hearing Careのオーナー、ティム・クロス氏です。

例えば、クロス氏の顧客には90歳の方がいて、充電式は貴重で代えがたいものでした。「はっきり言って、あなたが彼女の家まで通りを車でいって家からテレビの音が聞こえていて彼女が家にいて、ドアをノックしても、彼女にはそれが聞こえていません。」とクロス氏は言いました。「彼女は手先がうまく動かせず、視力も悪いので、電池交換ができず、補聴器を使おうとしませんでした」 。

クロス氏は彼女に充電式補聴器を装用してもらい、もしなにか問題が発生した場合に、彼女が補聴器なしで生活することにならないように、オフィスに予備の充電器を置いていました。

「充電式補聴器の装用で彼女の人生は大きく変わり、家族にも安心感を与えました」 と彼は言いました。

充電池の短所

空気電池 空気電池

しかし、誰もが充電式補聴器を装用することに適しているわけではありません。

「ほとんどの場合、非常にシンプルで基本的なことです。」とクロス氏は述べ、「しかし、通常の習慣やプロセスを超えたこと (停電や孫が誤って充電器を電源から外してしまった場合など)は考えていない人もいるかもしれません。たいへん活動的なライフスタイルの人は、すぐに補聴器を使う必要があり、充電する時間がないかもしれません。」と付け加えました。「このような状況では、新しい電池に入れ替える方がはるかに簡単です。」

その他のデメリットは次のとおりです。

  • ユーザー自身で電池交換ができない:。「多くの充電式補聴器では、電池が本体に内蔵されているため、ユーザーが自分で取り外すことはできません。」と彼は言ってます。「電池を交換しなければならない場合は、補聴器本体ごとメーカーに送らなければならないので、ユーザーの手もとには補聴器がなく、装用の「中断時間」ができてしまいます。代替品(補聴器) があっても、それにはユーザーに合わせた設定が入っていないので、不便な場合があります。」。
  • 充電器が必要:ほとんどの補聴器は充電に約3時間かかります。「電池は毎日充電しなければなりません」 とクロス氏は言います。。「充電を途中で中断して、電池が充電されていて完全に機能していると思っていると、1日のうちに両耳の補聴器のうち片方が動作しなくなることもあります。また、充電器を忘れたり、充電器が動作しなくなったり、充電器のコードがおかしくなったりした場合にも対処しなければなりません。予備の充電器を持ち歩いている人はほとんどいません。」
  • 追加の前払いコスト:一般に信じられていることとは裏腹に、充電式の補聴器は従来の補聴器よりもずっと安くつくというわけにはいきません。クロス氏によると、各補聴器販売店は独自の方針を定めていますが、充電器の費用と交換用の電池の費用は通常、補聴器の価格に含まれてはいません。しかし、補聴器を使い続けるなかで、新しい電池を買い続ける必要がなくなるため、出費は減るかもしれません。
  • 選択できる補聴器のスタイルが少ない:充電式補聴器の多くは、外耳道に入れる小型のスピーカーのついているRICあるいはRITE、またはチューブとイヤモールドを介して耳に音を届けるBTEとよばれる耳かけ型です。充電式の耳あな型もありますが、空気電池式ほどの多様なサイズ、目立たないほどの小型タイプなどは選べません。

充電式補聴器の普及

クロス氏の予測によると、充電式補聴器は、音質、電池の効率性、電池の交換、見栄えの良さが向上していくにつれて、さらに一般的になっていくとのことです。

「35年以上にわたり、私は、人々の目を補聴器市場に向けさせるきっかけとして、充電機能が登場するのを見てきました」 と彼は言います。「それは7年ごとに新しく斬新なものとしてよみがえっては消えていきます。この最近の波は、これまでよりもっと主流になりました。現世代のテクノロジーは、消費者の要求をほぼ満たすようになっているため、今後は標準化されると思います」

充電式の補聴器を装着しているユーザーは、「その補聴器が好きで、その補聴器を使って、快適に過ごしています。ユーザーがそれを購入したのには理由があります。」とクロス氏。「ユーザーにとって適切であり、ニーズを満たしていたからです。」

もっと詳しく知りたい場合には?

もちろん、補聴器を購入する際に考慮すべき要素は他にもたくさんあります。ですから、自分に最適な補聴器について、補聴器の専門家と深く話し合うことが重要です。充電式の電池が適している場合とそうでない場合があります。ヘルシーヒアリングの販売店検索から、お近くの信頼できる販売店をお探しください。

 

■本記事について

本記事は米国Healthy Hearingにて掲載された記事を、一般的な情報提供を目的として意訳、また日本国内の事情に沿うように加筆再編成したものです。本記事のコピーライトはhealthyhearing.com及びheatlhyhearing.jpに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、healthy hearingが指定する執筆者または提供者に帰属します

■英語版記事はこちらから

米国「HealthyHearing」2022年3月26日の記事「Pros and cons of hearing aids with rechargeable batteries」(Debbie Clason 寄稿)

https://www.healthyhearing.com/report/52975-Pros-and-cons-of-hearing-aids-with-rechargeable-batteries

  • 記事投稿者

    ヘルシーヒアリング編集局

    ヘルシーヒアリング編集局

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  • 記事監修者

    田中ちえみ

    田中 智英巳

    デマント・ジャパン株式会社 アドバンスト・オーディオロジー・センター・センター長、ハワイ大学マノア校 Adjunct assistant professor, 静岡県立総合病院 客員研究員、ASHA認定オーディオロジスト、ハワイ州オーディオロジスト。■詳しいプロフィールを見る■

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