「補聴器のハウリングが起きる原因は?」 「ハウリングを治す方法はある?」 「ハウリングの原因が故障であるかを見分ける方法は?」 補聴器のハウリングは、イヤモールド(オーダーメイドの耳せん)や既成の耳せんが「耳に合っていない」「耳にフィットしていない」などが原因で引き起こされます。原因に応じた対策を行えば、ハウリングを解消できる場合があります。
本記事では主に以下について解説します。
- ハウリングを起こす主な3つの原因と治し方
- ハウリングの原因が故障であるかを確認する方法
- ハウリングを自分で解決できない場合の対処法
ハウリングを引き起こす原因について理解が深まれば、自分で解消できる場合があります。補聴器のハウリングについて理解を深めるために本記事を参考にしてください。
補聴器のハウリング(ピーピー音)とはどのような現象?

ハウリングとは、補聴器を装用しているときに「ピーピー」と聞こえる音のことです。ハウリングは、補聴器により集められた音が漏れ、その漏れた音を再び補聴器が拾うと発生します。
ハウリングは、不快な音であり装用習慣の妨げになる恐れがあるため、できるだけ早期に解消することが重要です。ハウリングの原因は、イヤモールドや既成の耳せん、補聴器の音量などが関係しています。
また、補聴器の調整(フィッティング)が不十分でハウリングが起きることもあります。定期的に補聴器の調整を実施していない方は、補聴器販売店で補聴器を調整してもらうことをおすすめします。
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補聴器のハウリングを起こす主な3つの原因と治し方
補聴器のハウリングの原因として多いのが以下の3つです。
- イヤモールドや既成の耳せんが耳穴の形状に合っていない
- イヤモールドや既成の耳せんが正しく装用できていない
- 音量を上げすぎている
それぞれの原因の詳細と治し方を解説します。
1.イヤモールドや既成の耳せんが耳穴の形状に合っていない
イヤモールドや既成の耳せんが耳穴の形状に合っていないと、ハウリングが起きやすくなります。
たとえ、補聴器購入時に耳穴の形状に合っていたとしても、以下により耳の形状が変化することがあります。
- 加齢による皮膚の弾力の低下
- 体重の減少または増加による体型の変化
耳穴の形状の変化が原因である場合は、耳かけ型はイヤモールドの作り直し、耳あな型は筐体(きょうたい:補聴器の本体を覆う外枠)の作り直しが必要です。イヤモールドなどの位置を変えてみても、耳にフィットしない場合は、補聴器販売店への相談をおすすめします。
2.イヤモールドや既成の耳せんを正しく装用できていない
イヤモールドや既成の耳せんが耳穴にぴったりと装用できていないと、ハウリングが起きやすくなります。耳穴にぴったりと装用できているか確認する必要があります。
例えば、既成の耳せんを使用した耳かけ型の補聴器の装用方法は以下の通りです。
- 補聴器を耳の後ろにかける
- チューブまたはワイヤーを耳の上から前に垂らす
- チューブまたはワイヤーの曲がっている部分を親指と人差し指で挟む
- イヤピースを耳穴に向ける
- 耳をゆっくり外側に引っ張り、イヤピースを耳穴に押し込む(必要であれば少しねじる)
- イヤピースがきっちり入るまで耳穴に沿って挿入する
正しい装用方法がわからない場合は、補聴器販売店への相談をおすすめします。
3.音量を上げすぎている
補聴器のボリュームを大きくし過ぎていると、ハウリングが起きやすくなります。ボリュームコントロールを操作して、音量を少し下げてみてください。
多くの場合には、補聴器本体にボリュームコントロールが付いています。ボリュームコントロールの位置や操作方法がわからない場合は、補聴器の取り扱い説明書を確認してください。
ハウリングの原因が補聴器の故障かどうか確認する方法

補聴器のイヤモールドや既成の耳せんがしっかりと耳穴にフィットしており、ボリュームも問題ないのにも関わらずハウリングが起きる場合は、補聴器の故障の可能性があります。
ハウリングの原因が故障であるかを判断するために、以下に該当していないか確認してください。
- 補聴器のフック、チューブ、イヤモールドなどにヒビがあったり裂けたりしていないか?
- イヤモールドなどの音孔を指で塞いでも「ピー」と音がなるか?
上記のいずれかに該当する場合は、補聴器が故障している可能性があります。補聴器販売店に補聴器を持参して相談することをおすすめします。
補聴器のハウリングが自分で解決できない場合の対処法
自分でハウリングが解決できそうにない場合は、補聴器販売店に相談してください。補聴器販売店に持参すれば、ハウリングの原因に応じた対処をしてもらえます。
相談先は、以下の補聴器販売店を推奨します。
| 推奨する相談先 | 詳細 |
|---|---|
| 認定補聴器専門店 | ・公益財団法人テクノエイド協会により認定された補聴器専門店 ・適切な補聴器の調整や相談対応、認定補聴器技能者の常勤、補聴器相談医との連携などの一定の運営基準を満たしている |
| 認定補聴器技能者が在籍する補聴器販売店 | ・公益財団法人テクノエイド協会により認定された認定補聴器技能者が在籍している補聴器販売店 ・認定補聴器技能者は補聴器の選択や調整、ケアなどに関する専門的な知識や技術を保有している |
認定補聴器専門店や認定補聴器技能者が在籍している補聴器販売店をお探しの方は、こちらから検索してください。
ハウリングを抑制できる補聴器の機能
補聴器にはハウリングを抑制する機能が付いている製品があります。補聴器から漏れ出た音を再度拾ってしまうのを断ち切る仕組みです。
補聴器のハウリングは動きのある環境や食べ物の咀嚼、帽子の着用などの状況によっても、引き起こされることがあります。そのような状況では、ハウリング抑制機能によって、利得(音の出力)を下げてハウリングを抑制する必要がありました。
しかし、オーティコン補聴器の上位器種に搭載されている、ハウリングを防止する技術であるモアサウンド・オプティマイザーであれば、装用者が首や頭を動かしたり、帽子をかぶったりしても最適な利得を維持できます。ハウリングを抑制するために利得を犠牲にしないため、会話の細部が聞き取りやすい安定した聞こえを提供できます。
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ハウリングが起きやすい傾向にある補聴器のスタイル
耳あな型の補聴器は、ハウリングが起きやすい傾向です。耳かけ型と比較して、耳あな型は、マイクと音の出口の距離が近く、ハウリングのリスクが高くなってしまうためです。耳あな型でもフルサイズのタイプはハウリングが起きにくいです。
また、補聴器には、耳穴をできるだけ塞がないオープンフィッティングという装用方法があります。オープンフィッティングは、ドームと呼ばれる大きな穴の開いた耳せんを使用することで、耳穴のこもり感や自分の声の響きを軽減する効果があります。
低音域が健聴に近い方は、補聴器の装用で自分の声が変に聞こえ、耳に蓋をされた感じがします。オープンフィッティングは、大きな穴から耳の外へ音を逃がすことで、このような「こもり感」を緩和できるのです。
こもり感を軽減する一方で、ハウリングが起きやすい傾向があります。したがって、オープンフィッテングは、ハウリング抑制機能があって初めて実現できる調整です。
補聴器のハウリングに関するよくある疑問
ここでは、補聴器のハウリングに関する以下のよくある疑問について解説します。
- Q.ハウリングは周りに迷惑をかける?
- Q.電話をする際にハウリングが起きるのを防ぐ方法はある?
それぞれの詳細を解説します。
Q.ハウリングは周りに迷惑をかける?
補聴器のハウリングの音は、周囲にとって「うるさい」と感じることもあるかもしれません。コンサートなどにおいては、開演前に「補聴器をきちんと装用できているかご確認ください」とアナウンスを流す会場もあります。自分では気づけないこともあるため、周囲の人にハウリングが起きていないかを確認しましょう。
Q.電話をする際にハウリングが起きるのを防ぐ方法はある?
補聴器を装用して電話の受話器を耳に当てると、音の反射が変わるためハウリングが起きやすいです。「補聴器を受話器から少し離す」「受話器の当て方を変える」などの対策を行い、ハウリングが起きない位置を探りましょう。
スマートフォンとBluetooth接続ができる補聴器も種類が増えています。これは補聴器をハンズフリーのワイヤレスイヤホンマイクのようにして使えるため、受話器を耳に当てる必要がありません。
補聴器のハウリングが解消されない場合は補聴器販売店に相談しよう

補聴器のハウリングが起きる主な原因は、イヤモールドや既成の耳せんが「耳穴の形状に合っていない」「正しく装用できていない」または補聴器の「音量を上げすぎている」などです。
まずは、耳穴にしっかりフィットしているか、正しく装用できているかを確認してください。しっかりと耳穴にフィットしており、音量も問題ないのにも関わらずハウリングが続く場合は、補聴器の故障の可能性もあります。
また、耳あかの蓄積もハウリングの原因になります。補聴器で増幅された音が耳垢で跳ね返って外へ漏れ出すからです。このような場合には耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。
自分で解消できそうにない場合や故障が疑われる場合は、補聴器販売店への相談が大切です。認定補聴器技能者が在籍している補聴器販売店、または認定補聴器専門店への相談をおすすめします。
参考
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
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