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朝の一杯のコーヒーが、聞こえにとっては良くないかもしれない理由

  • 公開日:2018.02.19
健康 難聴
コンピューターとコーヒー

大き目のマグカップになみなみと注いだコーヒーを片手に昨晩のコンサートの思い出に浸りたい、でもちょっと待ってください。その一杯にはデカフェ*のコーヒーをお勧めします。それには理由があります。大きな騒音にさらされたのちに聴力が十分に回復していない状態を一時的聴力損失といいますが、カナダ、ケベック州のマギル大学ヘルスセンターの研究者たちは、日常的なカフェインの摂取が、大きな音にさらされた後、聞こえが通常に戻るまでの過程を阻害する可能性があることを発見しました。(*カフェインを抜いたコーヒー)

一時的聴力損失とは何でしょうか

ライブコンサート

ロックコンサートや花火大会に参加した後や、飛行機でのフライトの後、多くの人は一時的な聴力低下や耳鳴りなどを経験します、この症状はごく一般的で専門家の間では一時的聴力損失と呼ばれており、内耳の繊細な有毛細胞が過度に働き、結果疲れにつながった時に起こります。回復までの時間は個人によっても異なりますが、健康な状態に戻るまで実に72時間を要するとされています。(回復には個人差があり、8日程度を要する人もいます)

カフェインの作用とは?

カフェインは、コーヒー、お茶、チョコレートなどに自然に含まれ、そして多くのエナジードリンクから、市販の風邪薬や抗アレルギー薬、そして鎮痛剤などに使われ刺激性を持つ物質です。カフェインは中枢神経系を刺激し、血液循環を改善させ、集中を高め、また夜遊びからの疲れなどをいやすことにも作用します。研究によるとカフェインは肝臓や咽頭、喉頭がんを含む特定のがん、2型の糖尿病、パーキンソン病、脳卒中などのリスクを軽減するとされます。

しかしながら聞こえの健康に関しては、カフェインは身体にやさしいとは言えないかもしれません。研究によればカップ一杯のカフェインは、一時的聴力損失に際しては、聞こえの状態を元に戻すことを妨げるかもしれません。

耳鼻咽喉科医でありカナダ、マギル大学聴覚科学研究所(McGill Auditory Sciences Laboratory)のメンバーでもあるファイサル=ザワウィー(Faisal Zawawi)博士は、その研究の中で、特定の物質は一時的な騒音性難聴の症状から聞こえを元の状態に戻す身体の能力を妨げるかもしれないとしています。

モルモット
実験とは無関係のモルモット

ザワウィー博士らはこの理論についての研究を、米国医師会が発行する医学誌ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(the Journal of the American Medical Association (JAMA) Otorhinolaryngology Head and Neck Surgery)に投稿し、2016年4月号に掲載されました。この研究では、ギニアピッグ(モルモットの一種)を用いて3つのグループに分けてテストを行っています。24匹を8匹ずつの3グループに分け、グループ1はカフェインを投与し、グループ2110dBの大きな音響刺激を与え、グループ3はカフェインと大きな音響刺激の両方を加えました。

大音量の刺激を与えたグループ2のギニアピッグは8日後までに聞こえが回復しましたが、大音量かつカフェインを投与したグループ3では、低下した聞こえを完全には取り戻すことができませんでした。このことから研究者たちは、一時的聴力損失と関連したカフェイン摂取は慢性的な難聴の発生につながる可能性があるとしています。

どのように防いだらよいのでしょうか?

リラックスする女性

ほとんどの人は一時的聴力損失の状態から聴力を回復します。しかし、80 dB以上の騒音に常にさらされ続けることは永久的な難聴を引き起こす可能性があります。米国ヒアリングヘルス財団(Hearing Health Foundation)によれば、全米では5,000万人近くの人々が難聴を経験しており。そのうちの実に2,600万人は仕事や遊びの場面で過度の騒音に晒されたことによって難聴を発症しているとされます。騒音性難聴は、最も一般的なタイプの難聴の1つであり、爆発など過度の騒音に一回曝されるだけでも引き起こされる一方、長期間にわたってゆっくりと発生する可能性もあります。幸いにも、騒音性難聴は最も予防が可能な難聴です。

それはすなわち、聞こえを守るためにコーヒーを諦めなければいけないことを指しているのでしょうか?いいえ、その必要はありません。日本国内においてもコーヒー消費量は増加傾向にありこの20年間に、約1.5倍まで増えており、一人当たり1週間で約11杯のコーヒーを消費しているとされます**。日常的にコーヒーを飲む愛好者の一人であったなら、日常の習慣はそうたやすくあきらめられるものではありません。(またコーヒーを日常的に摂取するメリットも伝えられています)幸いなことに、聞こえを守るために取り入れていただける防御策はまだまだあります。

**全日本コーヒー協会データより、レギュラー、インスタント、リキッド、缶コーヒー等の合計

  • 騒音のある環境に行く機会を減らす。職場での騒音が不快な場合は、騒音レベルを減らすために何ができるか上司や責任者と話しましょう。米国国立聴覚・伝達障害研究所(NICDC:National Institute of Deafness and Other Communication Disorders)によれば、職場での適切な音量とは60デシベル以下とされます。
  • 趣味や余暇の場面においても騒音がある環境に参加するのであれば、騒音へそのまま耳をさらす機会をできるだけ減らしましょう。
  • フォームタイプの耳せん(薬局などで簡単に入手できるポリウレタン素材などの耳せんです。)やヘッドフォンタイプの聞こえの保護具は騒音から耳を守ります。野球やサッカーなどスポーツ観戦に足を運ぶときには、聞こえの保護具を携えていただくことで、安心してお気に入りのチームの応援に専念できます。これまでのスポーツの試合の騒音の最大レベルの記録としては、2013年に米国で行われたアメリカンフットボールの試合会場での136.6デシベルがあります。(飛行機のジェット・エンジンの騒音が140デシベル)
  • もしも一時的聴力損失を示す状況や状態があるのであれば、聞こえが完全に元に戻るまでカフェインの摂取を避けましょう。研究者たちは決定的な結論に至ってはいませんが用心するに越したことはありません。聴力が正常に戻ればお気に入りのコーヒーなどを飲んでいただけます。
  • 聞こえについて少しでも心配があれば、どうぞ耳鼻科医へご相談ください、また定期的に聴力検査を受ける習慣をもっていただくことで、聴覚ケアの専門家はあなたの聞こえの状態を把握しやすくなります。

■参照サイト

Association of Caffeine and Hearing Recovery After Acoustic Overstimulation Events in a Guinea Pig Model. 

■本記事について

本記事は米国Healthy Hearingにて掲載された記事を、一般的な情報提供を目的として意訳、また日本国内の事情に沿うように加筆再編成したものです。本記事のコピーライトはhealthyhearing.comに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、healthy hearingが指定する執筆者または提供者に帰属します。

■英語版記事はこちらから

米国「Healthy Hearing」2016年8月23日の記事「Why your morning cup of coffee may be harmful to your hearing 」(DebbyChan寄稿)

  • 記事投稿者

    ヘルシーヒアリング編集局

    ヘルシーヒアリング編集局

    1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営
    2.「安心聞こえのネットワーク」連携サポート

  • 記事監修者

    高島 雅之先生

    『病気の状態や経過について可能な範囲で分かりやすく説明する』ことをモットーにたかしま耳鼻咽喉科で院長を務めている。■詳しいプロフィールを見る■

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