2019.05.27公開

音の雑学:「抜ける音」って?発音が難しい外国語の音のお話

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発音しない音

近年、国際化が進んで小学校でも英語を学ぶようになってきましたが、多くの日本人にとって難敵なのは「R」と「L」の発音です。例えば恋人というつもりで「ラバー」と発音しても、Loverではなく、ゴムを意味するRobberになってしまったというのが昔から笑い話になります。
これは幼い頃からの学習によるもので、大人になって耳が出来上がってしまった後では微妙な音の差を聞き取ることが難しいともいわれているので、現在のように小学生から英語を勉強するというのは耳を鍛えるという意味でも理にかなっているのです。

他に英語に多い発音しない「抜ける音」というのも日本人には難しいと言われています。
たとえば「生活」を意味するLivingは日本的発音では「リビング」となり、居間なども普通にリビングと言っていますが、実際には「リ」はイではなくエに近く抜けるように発音する「レヴィン」となりますが、なかなかネイティブな発音は出来ません。

 

71-2 しかし実は日本語の中にもかつては「抜ける音」というものが多く存在しており、たとえば「黄昏」の本当の発音は平坦なものではなく「が」の前に抜ける音のない「ン」が入っていました。それがいつしか平坦な発音になり、それでも良しになってしまったのです。
この手の発音の変化は江戸時代末期から明治時代に都市部から多く広がって行ったとも言われているのですが、その影響をあまり受けなかった沖縄などの言葉には抜ける音というのが現在でも多く残されています。
その事もあって、七〇年代アイドルだった沖縄県出身の南沙織さんが歌った『人恋しくて』という曲の歌詞「♪暮れそうで暮れない黄昏時は」の「黄昏」の発音は、メロディとは関係なく無意識に抜けて歌われています。

 

71-3 お隣の国、韓国などは英語を使う文化も深く入り込んでいることから、英語的発音が一般的に浸透しているみたいです。
実は一九九〇年頃、キムチが日本でも多く食べられるようになった頃に、抜ける音がちょっと話題になったことがあります。
というのも、日本のメーカーがキムチを輸入発売した時に、英語表記で「kimuchi」とパッケージに書いてあったのですが、これに対して「カタカナでキムチと書くのはしょうが無いが、本来の発音ではムは抜ける音なので”ム”は”mu”ではなく”m”一文字だ」と韓国側から意見があったのです。
日本人にはその抜ける音が理解出来なかったこともあって、日本のメーカーと韓国のメーカーの間でやり取りがあったそうですが、最終的に一九九六年に国際食品規格委員会で、キムチの英語表記は「kimchi」で統一しよう、と決まっています。

 

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日本人がネイティブな英語を聞き分けるのは至難の業かも知れませんが、明治時代に「アメリカン」を「メリケン」と聞き取った時代から比べると、かなり進歩している。と信じたいものです。


寄稿者:杉村 喜光(知泉)