2019.12.11公開

生活習慣病だけじゃない!バランスの良い食生活があなたの聞こえを守る

料理をする男女

女性と難聴に関する新たな研究

聞こえづらさは、痛みなどを伴わないことから問題をそのままにしがちですが、2018年のデータによると国内人口の1割を超える1,370万人の人々が難聴を自覚しており*1、国立長寿医療センターが行ったNILS-LSA第6次調査の報告では、日常生活での聞き取りに支障のあるレベルで難聴を抱えている方の割合は、70歳代男性で5人に1人、女性では10人に1人にのぼることが報告されています。*2聞こえづらさは、会話についていくことが難しいという以上の問題をはらんでいると言えます。

今回は特に女性の方に向けて、基本的な食事を大切にしていただくことが、難聴のリスクを減らすことにつながるかもしれないということについてお話をさせていただきます。栄養分野に関する研究を取り上げている米国栄養学会が発行する学術誌「Journal of Nutrition」で2018年6月に「Adherence to Healthful Dietary Patterns Is Associated with Lower Risk of Hearing Loss in Women(健康的な食事パターンを順守することは、女性の難聴のリスク低下と関連する)」*3という研究が出版されました。この研究で、健康的な食事をとることが難聴発生率の低下につながることが報告されました。具体的には、3つの食事法が、難聴のリスク低下につながることがこの研究で証明されました。

最近でこそ、バランスの取れた食事でさまざまな病気を予防し改善することがとりざたされていますが、食事と聞こえの程度との関連は、実は1950年代からすでに着目されていました。しかしながら研究で実証するまでは至っていなかったという経緯がありました。*4

研究方法について

データを処理するこの研究は、米国看護師の健康を長期追跡したコホート研究(Nurses’ Health Study II)に参加した女性看護師8万1,818人(1991~2013年)を対象として行われました。研究が始まった当初の参加者年齢は27-44歳でした。アンケートを使用して良く口にする食べ物に関するデータを4年ごとに集め、摂取している食事が3つの食事法―改良型の地中海食(AMED:Alternate Mediterranean Diet)、高血圧を防ぐ食事法(DASH:Dietary Approaches to Stop Hypertension)*5、改良型の健康的な食事指標(AHEI:Alternate Healthy Eating Index)2010*6―にどれくらい近いのかを示すスコアを計算しました。さらに、Cox比例ハザードモデルを用い、この3つの食事型と中等度以上の難聴リスク(自己申告)の関係についての分析が行われました。

【コホート研究とは?】コホートとは日本語で「集団」という意味です。コホート研究では対象とする集団(例えば研究対象となる病気にかかっている人や健康な人などで構成されている集団)を将来にわたり長期間観察追跡し、経時的にフォローや検査をすることで、どのような要因が研究対象としている病気と関係しているのかを明らかにすることを目的としています。

この研究結果に基づく、女性が聞こえのために、食べるべきものとは?

多くの人々は、バナナと聞こえの良さを関連付けています。この理由には、バナナは、カリウムを多く含むからだといえるでしょう。女性を対象にしたこの研究で、聞こえの良さと関連していると報告された3つの食事法をご紹介しましょう。

    地中海風サラダ
  • 地中海式食事法:この食事方法では、野菜、魚、鶏肉、チーズ、ヨーグルトに焦点を当て、精製された白砂糖やマーガリンなどに代表されるトランス脂肪の摂取をできるだけ避けることを勧めています。イタリア、フランス、スペイン、ギリシャといった地域で1960年代に提唱され各地に広がった食事法です。地中海食事法が日本に紹介されるとともにオリーブオイルも日本で市民権を得ました。この食事法は様々な地域でそれぞれの形で取り入れられていますが、地中海料理は、パスタ(私たちはみんな大好きですが!)を意味するものではないことにはどうぞご注意を。

  • アーモンド
  • 高血圧を防ぐ食事法(DASH):米国国立保健研究所などが提唱する、生活習慣病の改善、予防のための食事療法として、血圧を下げる食べ方に重点を置いた食事法です。DASHは訳して「高血圧を止めるための食事療法」の略です。この食事法で塩分の摂取量の低下を促されると聞いても、意外ではないと思います。DASHでは、食事中のナトリウムを減らし、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの血圧を下げるのに役立つ栄養素を豊富に含んださまざまな種類の食品を食べることを勧めています。具体的には、野菜、果物、低脂肪の乳製品、およびライ麦のような適量の全粒穀物、魚、鶏肉、またアーモンドといったナッツの摂取を重視しています。

  • 健康的な食事の指標(HEI並びにその改良型AHEI):研究の分析に用いられた食事法の一つは米国政府が提案する「米国国民のための健康的な食事の指標」の改良版です。この指標は、採点システムを使用して食事の内容を評価し、人々が健康的な食習慣を学ぶことを目的としています。また、米国農務省並びに米国保健福祉省は「2015-2020米国民向け食事ガイドライン」を発表、年齢や性別ごとに必要な栄養素やカロリー、栄養と健康との関連などがわかりやすく示されています。では日本においては食事に関するどのようなガイドがあるのでしょうか?2005年に厚生労働省と農林水産省が、1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかの目安を分かりやすくイラストで示した「食事バランスガイド」を発表しています。この食事バランスガイドに基づいた食生活については https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou-syokuji.html を訪問いただき、さまざまな情報をご覧ください。昨今、国内外において、食生活の質と健康の関係がますます重要視されていますが、忙しくてこの情報を見られないとおっしゃる皆様は、下記のシンプルなメッセージをご覧ください。「より多くの野菜を食べ、砂糖で甘みを加えた飲み物やアルコールを控えましょう!」

難聴になぜ対処すべきなのでしょうか?

救急車聞こえにとって良い影響があることが実証された食事法についてここまでご紹介してきましたが、なぜ聞こえづらさをそのままにしておいてはいけないのでしょうか?その理由なのですが、難聴は耳だけに影響する問題ではなく健康問題にも影響することが、様々な研究により指摘されているということがあげられます。例えば、認知症、うつ、脳卒中などの健康問題が難聴と関連していると報告されています。

騒音から耳を守ることそして健康な食生活でよりより聞こえを!

騒音や年齢を重ねることでの聴力低下は誰にでも起きますが、ご自身の手で守れる聞こえもあります。今日のそして明日の食材選びに少しだけ気を使っていただくことが、聴力損失のリスクを減らすことにつながります。もし聞こえがこれまでと違うと感じたら、どうぞ耳鼻科医を受診ください。聞こえや補聴器に関してのご質問は、ヘルシーヒアリングでもご相談いただけます。

ヘルシーヒアリング編集局


本記事はHearinglife.comにて掲載された記事を、一般的な情報提供を目的として意訳、また日本国内の事情に沿うように加筆再編成したものです。本記事のコピーライトはhearinglife.com及びheatlhyhearing.jpに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、hearinglife.comが指定する執筆者または提供者に帰属します。

■英語版記事はこちらから

HearingLife.com 2018年8月17日Eating Well May Mean Hearing Well

■参照文献:

*1: 日本補聴器工業会:http://www.hochouki.com/about/report/

*2: 国立長寿医療センター:https://www.ncgg.go.jp/cgss/department/ep/topics/topics_edit33.html

*3: Sharon G Curhan, Molin Wang, Roland D Eavey, Meir J Stampfer, Gary C Curhan; Adherence to Healthful Dietary Patterns Is Associated with Lower Risk of Hearing Loss in Women, The Journal of Nutrition, Volume 148, Issue 6, 1 June 2018, Pages 944–951, https://doi.org/10.1093/jn/nxy058

*4: https://jamanetwork.com/journals/jamaotolaryngology/article-abstract/590423

*5 DASH: https://www.mayoclinic.org/healthy-lifestyle/nutrition-and-healthy-eating/in-depth/dash-diet/art-20048456

*6 HEI: https://www.fns.usda.gov/resource/healthy-eating-index-hei

 


記事監修:
田中 智英巳

Audmet株式会社 アドバンスト・オーディオロジー・センター、センター長
ハワイ大学マノア校 Adjunct assistant professor
静岡県立総合病院 客員研究員
ASHA認定オーディオロジスト
ハワイ州オーディオロジスト