2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、海外からの旅行者が増えていることは、街を歩いていても感じます。このような意識から宿泊施設も、さまざまな人が利用することに配慮した客室「ユニバーサルルーム」の設置が全国的に増えています。車いすでも利用しやすいように、室内空間を十分にとり段差も少ないといったユニバーサルデザインな部屋のことを指します。
「ユニバーサルデザイン」について
年齢や性別、言語や文化、障害の有無に関係なく、誰もが使いやすい設計やサービス等を「ユニバーサルデザイン」といいます。例えば、トイレのマーク。最もユニバーサルデザインが活用されていると言えます。世界中どこに行ってもそのマークを見れば、その下に書かれている文字は読めなくても、ほぼ迷うことなくトイレにたどり着くことができる、これはユニバーサルデザインが力を発揮している例です。聞こえに悩む方々のためのユニバーサルデザインも目にされたことがあるかもしれません。
上記マーク(左)は、世界の多くの国や地域において使用されています。国内においては(右)の耳マークが使用されています。内閣府のHPでは同イメージについて『聞こえが不自由なことを表すと同時に、聞こえない人・聞こえにくい人への配慮を表すマークでもあります。 聴覚障害者は見た目には分からないために、誤解されたり、不利益をこうむったり、社会生活上で不安が少なくありません。 このマークを提示された場合は、相手が「聞こえない・聞こえにくい」ことを理解し、コミュニケーションの方法等への配慮について御協力をお願いします。』とメッセージを発信しています。国内外のマークでそれぞれTのついたマークは、ヒアリングループ設置場所並びにヒアリングループ対応機器があることを示すマークです。ヒアリングループ(またはテレループ)とは、補聴器を使用されている方、または対応機器を使用している方に向け聞声をサポートするシステムです。
誰もが快適に過ごせる「ユニバーサルルーム」
ユニバーサルデザインの考え方は、このようなマークだけでなく、施設やサービスなどにも適用されます。宿泊施設の客室をユニバーサルデザインに対応させたものが「ユニバーサルルーム」です。
2017年、国際パラリンピック委員会は東京都内のホテルのバリアフリー化について、国際基準に達していないとして、改善するように指摘しました。観光庁でも「ユニバーサルツーリズム」を後押ししており、「ユニバーサルルーム」は、全国的に増加の傾向にあります。活発にそして旅行を楽しむシニア層や小さいお子さんを連れた家族などにとってもより安心して楽しめるユニバーサルルームの需要は、今後ますます高くなることが予想されます。一口に「ユニバーサルルーム」と言っても、部屋の設備やサービス内容は施設によって異なります。具体的なサービスについてHPなどで紹介している場合もありますが、そのような場合でも予約を取っていただく際には設備について再度確認していただくことをお勧めします。
難聴の方向けの「ユニバーサルルーム」で聴覚を補う
「ユニバーサルルーム」はバリアフリーが基本となっており、車いすのままお風呂やトイレが使えたり、車いすで移動しやすいように客室を広く設計してあります。
難聴の方向けに設計された「ユニバーサルルーム」では、点滅やセンサーで来客や非常時の放送などを知らせるフラッシュランプやセンサーノックシステム、またバイブレーターを使って、振動でインターフォンや時計のアラームを知らせる工夫などがされています。またその他筆談機、呼び出しボタン、FAX、補助犬用マットの貸し出しなど、施設によってそのサービスはさまざまです。手話のできるスタッフによる応対が可能な施設もあり、このようなホテルでは円滑にフロントとコミュニケーションがとれるようになっています。
施設をさらに楽しむためのチェックポイント
宿泊するお部屋が「ユニバーサルルーム」でも、施設内のその他のサービスがすべて「ユニバーサルデザイン対応」とは限りません。難聴の方が宿泊施設を選ぶ際には、レストランもチェックしましょう。賑やかなオープンキッチンや食器の触れ合う音、BGMなどは向かい側に座る相手の声などを聞こえにくくするので、ゆっくり会話を楽しむのには向いていないかもしれません。もし選べるのならば、大ホールでのディナーではなく静かな部屋での食事プランを予約して、喧騒から離れて過ごすのがおすすめです。
また補聴器をお使いの方では「予備の電池セット」「補聴器ケース/ドライケース」「補聴器のお手入れセット」のほか、スポーツ時などに補聴器落下を防ぐ専用のクリップコードなどのアクセサリも持参して、アクティブに楽しめるよう準備しておくのも良いアイデアです。遅れてはいけない予定がある際は、目覚まし用にバイブレーションモード付きの時計を持っていくと安心です。
どのような場合でも下調べや準備をしっかりとしておくと旅行がスムーズになり、より一層楽しめます。「ユニバーサルルーム」の予約時に際しても、聞こえづらいまた、補聴器を使っていることを事前に伝えておきましょう。もしこのような設備が整っていなくても、もちろんあきらめる必要はありません。どのようなサポートが必要か事前につてておくことで、ホテル側もできる範囲での準備が可能になります。
ここまでユニバーサルデザインを中心にお伝えいたしました。聞こえに悩みがあったとしても、大切なことは旅行やホテルでのリラックスした時間を思いっきり楽しんで過ごしていただくことです。
もし現在聞こえにくさを感じていらっしゃる場合は、ぜひ一度耳鼻科へ足を運んでみてください。また、補聴器をお使いの方では長期の旅行の予定の前には一度お求めの補聴器販売店でのお手入れもお勧めします。先進の補聴器についてなど、気になることがあれば、どうぞこちらからご相談いただくことも可能です。
【参考サイト】
■京王プラザホテル:聞こえにくい方、聾・難聴の方へ「ユニバーサルルームのご案内」
「米国Healthy Hearingから旅のヒント:休暇の計画を立てる際に」
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
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