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子どものヘッドホン使用は難聴の早期発症につながる

  • 公開日:2021.09.22
難聴 子ども リスク イヤホン・ヘッドホン
タブレットをする子

スマートフォン向けの娯楽の増加や教育のデジタル化の推進の結果として、子どもたちは勉強、プライベートのどちらの時間もデジタル機器に接して過ごすことが多くなりました。お子様の視力を心配なさるご父兄は多くいらっしゃると思いますが、一方でデジタルメディアにつきもののヘッドホンを使用しての視聴に伴う難聴にも注意を払う必要があります。今回は米国ヘルシーヒアリングによる子どもと難聴の報告です。(※記事中の統計やデータは米国のものです)

 

ヘッドホンやイヤホンの人気は急上昇しており、今後5年間の市場は、年間20%の成長を見込んでいます。その一方で、ヘッドホンやイヤホンの使用は、子どもや10代の若者、若年成人が、簡単に難聴を発症してしまう危険をはらんでいます。

不透明な子どもの聞こえの未来

大きな音は私たちにとってよくありません。元オーディオロジストのジャン・メイズ氏がヘルシーヒアリングに語ったところによると、小さな子どもがヘッドホンを使っていると、早ければ、10代から20代前半になった時には、騒がしい環境で会話が理解しづらくなっている可能性があります。

このような子どもたちが40代半ばになるまでに、もうすでに、子どもたちの70代、80代の祖父母と同じくらい耳が聞こえなくなっているかもしれません、と内科医でクワイエット・コアリション(Quiet Coalition)」 の理事長のダニエル・フィンク博士は考えています。

難聴はすでに問題

増加を示すグラフ

アメリカ疾病予防管理センター (CDC) の報告によると、アメリカでは子どもの10人に1人以上 (6歳から19歳) 、そして70歳未満の成人5人に約1人が、すでに騒音が原因で聴覚への永久的な障害があります。これは騒音性難聴 (NIHL) として知られており、高い確率で予防可能であることが知られています。

世界保健機関によると、12歳から35歳までの人口の約半数が、大強音が原因で起こる聴覚障害の危険にさらされています。これには、ヘッドホンやイヤホンが大きな原因となっていると言われています。研究者たちが大規模研究で、ノルウェーの成人を対象に、20年間ごとに行われた聴覚検査を比較したところ、個人用音楽デバイスを大音量で使用していたと報告した人は、聴力が低下していたことが報告されています。

子どもの耳鳴りの増加

耳鳴り (通常、キーンという音) は初期症状です。フォートワースにあるクック子どもヘルスケアシステムのオーディオロジストであるリサ・ヴォーン氏によると、昨年、耳鳴りを報告する子どもたちの数が、急激に増えたとのことでした。

すべてつじつまが合ってきました。騒音で聴覚が障害され、難聴や耳鳴りを引き起こします。一方、難聴は時間の経過とともに、社会的孤立、転倒、事故のリスクを増大させ、晩年には認知機能低下やうつのリスクが増大します。

ヘッドホンからどのくらい大きな音が出ると、耳を傷つけてしまうのでしょうか

ヘッドホンで聴いている時に、どのくらいの大きさの音が大きすぎるのか判断するのは難しいかもしれません。通常の音楽デバイスでは、94~110 dBAの大きなレベルの音が聞こえる場合があります。110 dBAの音であれば、2分以内と短い間に聞くだけで耳に損傷を与えます。

爆音を聞いても、妥当な音量で長時間聞きすぎても、脳に音を伝える耳の有毛細胞は損傷されます。また、有毛細胞と神経細胞の接続が遮断され、聴神経が変性することもあります。

親にできること:子どもと対話を続ける

家族

お子さんの年齢に応じ、問題について説明してください。お子さんが楽しめる音量でも、子どもの耳を傷つけていることがあります。悪いことは必ずしも「痛い」こととは限りません。また、突然難聴を発症することもあります。何の警告もなく難聴になるかもしれません。

聞こえが障害された時に、実際どのように感じられるのかについて話しましょう。例えば自分が好きな音楽など、何か別のことに集中しようとする時に、耳鳴りなどの異音、ジーとかキーンという音やノイズなど、が聞こえるかもしれないことを、お子さんに説明してください。耳鳴りがあると、耳が圧迫されたりつまったりした感じが伴うことがあります。子どもは、自分に聞こえている耳鳴りの音が、他の人にも聞こえていると思っているので、子どもが耳鳴りの概念を理解できていることを確認してください。

騒音に敏感になり、音が大きすぎると感じて(聴覚過敏)発作を起こすこともありますし、別の部屋で食器と食器があたる音でさえ、痛みを与えてしまうでしょう。

難聴になると、聞こえてくる音が小さくなるだけではありません。人が何を言っているのか理解するのが難しくなり、グループでいると疎外感を感じることがあります。他の人から笑われてしまうかもしれません。補聴器は非常に役立ちますが、以前の聴力そのものを取り戻すことはできず、聴覚過敏や耳鳴りを完全になくすことも通常ありません。

重要なことは、大音量の音楽を聞くことはかっこいいと思うかもしれませんが、難聴は実に大きな代償となってしまいます。

音量制限は役立つが、子どもは無効にする方法を知っている

スマホをする子

お子さんに抵抗がある場合は、他の誰かと難聴について話ができる時間を設定しましょう。あなたの息子さんは、ポップミュージックのスターを目指しているのかもかもしれません。たくさんのミュージシャンが耳鳴りや聴覚過敏を抱えて生活していることを、ギターの先生が息子さんにうまく説明してくれるかもしれません。

音量制限をお子さんと一緒に設定します。あなたは、トゥイーン(7~12歳くらい)やティーンがあなたの味方でいてほしいと思うでしょう。親はAndroidとiPhoneの両方で最大音量を設定することができますが、テクノロジーに精通した子どもは設定を無効にすることができ、音量をさらに上げられるようなアプリをオンラインで簡単に見つけることができます。

「小さな子どもでも、親が設定する安全な聞こえの設定を無効にする方法を知っています。私は自分の子どもたちと一緒になって、子どもたち自身が自分たちのデバイスに安全な最大音量を設定しました。子どもたちが望めば、設定をオフに切り替えて安全でない音量で聞くことができてしまうのだということを、私たちは話し合いました。聞こえの健康を守ることについて話す良い機会でした。」 とメイズ氏。

50%以下の音量を目指して

ヘッドホンやイヤホンの中には、音量を制限していると宣伝しているものもありますが、常に宣伝通りであるとは言えません。また、業界標準の最大音量である85 dBA (芝刈り機と同等) は、あまり安全とは言えません。この数字は、工場や空港などで働く成人を保護するための規制です。子どもに難聴のリスクを負わせたくないのであれば、70 dBAの方が理にかなっていると、2018年の世界保健機関の報告書と2019年の論文で報告されています。これは通常、デバイスが出せる音量の約50%に相当します。

子どもが音の大きさを示す数字を理解できるように、なじみのある音の平均デシベル値を以下に示します。

  • 通常の会話:50~60 dBAで、背景騒音や叫び声があると60~70 dBA
  • 映画館:74-104 dBA
  • 二輪車やオフロードバイク:80~110 dBA
  • ヘッドホンでの最大音量、スポーツイベント、音楽コンサート:94-110 dBA
  • サイレン:110~129 dBA
  • 花火大会:140~160 dBA

フィンク氏がヘルシーヒアリングに語ったところによると、個人用オーディオシステムを1日1時間以上、音量50%以上で5年以上使用している人は、耳を危険にさらしていると言われています。耳鳴り、聴覚過敏、騒がしい環境での聴取困難というような他のリスクは、難聴よりも早く起こる可能性があります。

「特に子どもの耳を安全に保つために、目標は70 dBAをはるかに下回る音量で聞くことです。そうすることで、50%以下の音量設定で快適に聞くことができます。」とメイズ氏は言います。

聞こえの休憩を取りましょう

お子さんに、聞こえの休憩を取るように教えてください。騒音による被害は累積するのです。1時間ごとの休憩でも、内耳の有毛細胞を休ませましょう。1つの戦略:台所やトイレに行くときは、ヘッドホンを外さなければならないというルール。

イヤホンではなく、ノイズキャンセリングヘッドホンについても考慮してください。この種のヘッドホンだと、背景騒音の音量が小さくなり、騒音で聞こえなくなってしまった他の音を聞こうとして音量を上げるようなことはしなくなります。

騒がしい場所では音量を上げないようにお子さんに教えてください。騒がしい場所でヘッドホンを頻繁に使用する場合は、ノイズキャンセリングモデルが不可欠です。

夜間の睡眠中にヘッドホンを使用しない (移動中の仮眠は適切な音量であれば大丈夫です) 。

寝る子

少なくとも3年ごとにお子さんの聴力を検査してください。また、症状が長続きしなくても、耳鳴り、くぐもった感じ、ざっざっという音、敏感さ、ひずみ、痛みなどがあれば、あなたに報告するようにお子さんに伝えてください。一時的な症状でも、再び始まり永久的なものになる可能性があります。また、相手の言っていることが理解できないと感じた時もあなたに報告させてください。

「安全なヘッドホン、安全な個人用オーディオシステム/個人用音楽プレーヤー/個人用リスニングデバイスを探すのは、安全なタバコを探すのと同じです。見つけられるはずがありません。」 とフィンクは言いました。「あなたの耳はとても貴重なので、個人用オーディオシステムで傷つけないようにしてください。人々は何千年もの間、サウンドトラックなしで生き延びてきました。本を読みましょう。窓の外を見ましょう。鳥の声を聞きましょう。隣の席の人と話しましょう。あなたは大丈夫だと気付くはずです。」


■本記事について

本記事は米国Healthy Hearingにて掲載された記事を、一般的な情報提供を目的として意訳、また日本国内の事情に沿うように加筆再編成したものです。本記事のコピーライトはhealthyhearing.com及びheatlhyhearing.jpに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、healthy hearingが指定する執筆者または提供者に帰属します

■英語版記事はこちらから

米国「HealthyHearing」2021年7月7日の記事「Children's headphone use puts them at risk of early-onset hearing loss, experts say」(Temma Ehrenfeld 寄稿)

https://www.healthyhearing.com/report/53221-Kids-headphones-earbuds-hearing-damage-tinnitus

  • 記事投稿者

    ヘルシーヒアリング編集局

    1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営
    2.「安心聞こえのネットワーク」連携サポート

  • 記事監修者

    田中ちえみ

    田中 智英巳

    デマント・ジャパン株式会社 アドバンスト・オーディオロジー・センター・センター長、ハワイ大学マノア校 Adjunct assistant professor, 静岡県立総合病院 客員研究員、ASHA認定オーディオロジスト、ハワイ州オーディオロジスト。■詳しいプロフィールを見る■

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