耳が詰まったように感じて、この違和感をかかえたまま生活を送るのはスッキリしないものです。しかし、だからといってやみくもに自分で耳掃除をするのは考え物です。原因は耳あかであるとは限りませんし、耳あかであったとしても、綿棒や耳かきで耳掃除することは外耳道(耳の穴)によくないのです。今回は耳が詰まったように感じる4つの理由と、その対処をご紹介いたしますので、ぜひ参考にしてみてください。
自ら意図して耳を塞ぐこともありますが (指や耳栓を思い浮かべてください) 、特に理由が思い当たらないのに耳が詰まったように感じることがあります。
外耳道の中に何もないように見えるのに、なぜ音がこもっているのでしょう?原因は、完全に無害なもの(耳あか)から、アレルギー、不安障害やメニエール病などの潜行性の疾患によるものまで多岐にわたります。
耳が詰まったように感じる最も一般的な4つの原因を次に示します。
耳あかの詰まり
通常、耳あかは耳を保護するための体の働きです。粘着性のある耳あかがほこりやその他の汚染物質を吸着し、潤滑剤として作用し、自然に外耳道から抜け落ちるため、自然なセルフクリーニング剤として機能します。しかし、ときには耳あかが詰まって、聴力に影響を及ぼすことがあります。
アメリカ耳鼻咽喉科学会によれば、以下の症状は耳あかが問題を引き起こしていることを示しています。
- 耳閉感(耳が詰まっている感じ)
- 耳痛
- 部分的な難聴
- 耳鳴り
- かゆみ、におい、おりもの
- 咳
安全に耳あかを取り除く方法は、耳鼻咽喉科医に相談することです。綿棒やベビーオイル、過酸化水素を使って自分で耳あかを取り除くことは適切ではありません。誤って鼓膜に穴を開けたり、耳あかを外耳道の奥まで押し込んで詰まらせたりするだけでなく、この天然の保護潤滑剤を除去すると、耳が乾燥してかゆくなることがあります。耳をきれいに保つには石鹸を含ませて絞った暖かなタオルなどで耳の周りを拭き取ることが安全ですが、耳鼻咽喉科医に耳掃除の必要性を判断してもらうことが最善です。
耳の中の液体
熱烈な水泳好きの方たちには、この痛みを伴う症状に慣れてしまっている可能性があります。しかしながら、泳がない方でも耳からの液体で症状が出る方もいます。この液体の原因はいくつかあります。次に、最も一般的な2つの例を示します。
耳の感染症: 小児や成人で中耳に感染症が発生すると、鼓膜の奥に液体がたまって耳が詰まったような感覚が生じます。通常は自然に消失しますが、痛みを伴うこともあります。痛みがひどい場合、耳だれが出る場合、または症状が1日以上続く場合は、医師の診察を受ける必要があります。生後6カ月未満の小児は直ちに診察を受けてください。
水泳や入浴: 耳あかが評価されるべきもう1つの理由として、水泳や入浴時に耳に水が入るのを防ぐ働きがあります。それでも、水泳や入浴、湿気の多い環境では、耳管の中に水が閉じ込められることがあります。そのような場合は、次の簡単な水を抜くための方法を試してみてください。
- 頭を横に傾けて、耳たぶをそっと引いてみます。
- 耳に温湿布をしてみます。これにより、耳管が開き、水が自然に排出されます。
- あくびをしたり、噛んだり、深呼吸をしたり、バルサルバ法で鼻を押さえて軽く息をしてみます。
副鼻腔の圧迫感
副鼻腔の圧迫感による鼻づまりや顔面の痛みはよく知られていますが、一過性の難聴にもなることをご存じでしたか? 鼻腔 (鼻の近くの骨や眼の間にある空洞) も外耳道の横にあります。副鼻腔に炎症が起こると、耳管が腫れることがあります。これが起こると、中耳と喉がつながっている箇所が閉じて、鼓膜に圧力がかかり、耳が詰まったような感覚が生じたり、悪化すると痛みや難聴を引き起こしたりします。
幸いなことに、副鼻腔の感染症や圧迫感、副鼻腔炎による難聴のほとんどは一時的なもので、副鼻腔のうっ血がなくなると聴力は正常に戻ります。それでも、副鼻腔のうっ血による痛みや突然の難聴がある場合は、かかりつけの医師にご相談ください。不快感の原因を特定して、痛みや腫れを緩和する薬を処方してくれます。
耳痛と新型コロナウイルス
新型コロナウイルスは呼吸器疾患を引き起こすウイルスであるため、耳の痛みや耳詰まりは一般的な症状ではありませんが、ときに鼻づまりや副鼻腔の圧迫感、耳の近くの痛みを引き起こすことがあります。コロナウイルスは疲労、のどの痛み、せき、発熱、悪寒を引き起こす可能性が高いことで知られています。
非常にまれですが、このウイルスが突発性難聴に関連していることがあります。風邪やインフルエンザの症状がある場合は、医師に相談して検査を受けるべきかどうかを助言してもらうのが一番です。
騒音による損傷
騒音性難聴は感音難聴の最も一般的なタイプの一つです。アメリカ国立聴覚・コミュニケーション障害研究所 (NIDCD) によると、4,000万人もの米国人が、過度の騒音に長期間暴露されていたことにより、あるいは爆発音などの非常に大きな騒音に1回暴露されたことが原因で、片側または両側の耳に難聴を患っているとのことです。
ナイトクラブで友人と夜を過ごした後や騒がしいスポーツスタジアムで午後を過ごした後に、耳が詰まったように感じたり、耳鳴りを感じたりする場合は、騒音に過度にさらされていることが原因である可能性があります。これらの症状は通常48時間以内で治まりますが、騒がしい環境に行く次の機会に予防策を講じることで、永続する難聴になるリスクを軽減できます。
- 85デシベル (dB) を超える音にさらされる作業を行う場合は、耳栓などの聴覚保護具を着用します。
- テレビ、カーラジオ、またはイヤホンを使用する個人的な電子機器の音量を下げます。
- 騒音から耳を守ったり、音量を下げたりできない場合は、できるだけ遠くに移動します。
その他のあまり一般的でない原因
不安症が、耳閉感、圧迫感、痛みを引き起こすことがあります
不安症の方が、特にパニック発作を起こしたり、多くのストレスを抱えたときに、耳の痛みや圧迫感を感じることは珍しくありません。耳の圧迫感、閉塞感、痛み、単に耳への違和感を持ちます。常に耳抜きしたい衝動を覚えますが、耳抜きではほとんど楽になりません。
これはなぜ起こるのでしょう? 内耳は、体液や血液の供給量の変化に非常に敏感です。心臓がドキドキしている場合や、不安を感じて血圧が上昇している場合(心臓の異常によっても)、耳はすぐに影響を受けます。同様に、ストレスホルモンが上昇すると、耳の中の微妙な体液のバランスが変化し、体液が膨張してきます。
メニエール病および平衡障害
メニエール病などの内耳疾患のある人は、内耳の体液のバランスが崩れて「耳閉感」と感じることがあります。この症状が、めまい、耳鳴り、難聴を伴う場合は、医師の診察を受けてください。
耳が詰まっていると感じたときには受診
耳が詰まっていると感じる最も一般的な4つの理由について説明しましたが、耳が聞こえにくい場合は、常に耳鼻咽喉科医に相談することをお勧めします。耳あか取りや綿棒などを使って自宅で耳の詰まりを取り除くことは、決して良い考えではありません。
おすすめは、近くの耳鼻咽喉科医に相談して、問題が発生する前に耳の聞こえを検査してもらうことです。最初の検査で得られる基本情報は、医療チームが緊急時に使用したり、耳の聞こえの健康状態をチェックしたりするための優れた基準となります。
■本記事について
本記事は米国Healthy Hearingにて掲載された記事を、一般的な情報提供を目的として意訳、また日本国内の事情に沿うように加筆再編成したものです。本記事のコピーライトはhealthyhearing.com及びheatlhyhearing.jpに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、healthy hearingが指定する執筆者または提供者に帰属します
■英語版記事はこちらから
米国「HealthyHearing」2020年9月22日の記事「Why do my ears feel clogged?」(US Healthy Hearing スタッフライター Debbie Clason寄稿)
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営 2.「安心聞こえのネットワーク」連携サポート
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記事監修者
白石 君男先生
九州大学 名誉教授、福岡大学医学部 客員教授、一般財団法人曽田豊二記念財団 代表理事、医療法人永聖会 松田病院 言語聴覚士。■詳しいプロフィールを見る■