日本人の肥満率は、令和元年国民健康・栄養調査1)によると、男性が33.0%、女性が22.3%です。肥満と肥満によるあらゆる循環器系の疾患は聴覚への影響にもつながる可能性があります。
肥満は難聴を引き起こしますか?
肥満と難聴の潜在的な関係を探る研究が行われていますが、結果はさまざまです。
BMIと難聴を調べた古い研究2)や、日本での最近の研究3)などでは、難聴は肥満の人に多いことが示されています。しかしながら、どちらの研究も因果関係を示すことはできず、相関関係を示すのみにとどまっています。
一方で、体重と難聴の関連性を調べた2020年の研究など、他の研究ではそのような関係性は見られませんでした。難聴は体重が軽い人に多く見られるという逆の結果さえ示されました。
従って、肥満は聴覚に影響を与える場合もあれば、影響しない場合もあります。しかしながら、少なくともわかっていることは、肥満は心臓病や糖尿病を発症するリスクを高め、どちらも聴覚に害を及ぼす可能性があるということです。
血のめぐりと聞こえの健康
内耳への血行が良いことは、聞こえの健康にとって重要です。耳への血行不良により、必要な酸素がうまく行きわたらなくなると、難聴や耳鳴りを引き起こす可能性があります。
耳への血行に影響を与える関連疾患
心臓病
太りすぎると心臓が全身に血液を送り出すのが難しくなるため、肥満は心臓病を引き起こし、難聴につながる可能性があります。高血圧は脳卒中のリスクを高めるだけでなく、難聴を発症するリスクも高めます。高血圧は拍動性耳鳴りを引き起こすこともありますが、これは耳鳴りが心拍と一致し、深刻な健康上の問題を示している可能性があります。
糖尿病
糖尿病は難聴と強く関連しています。研究によると、糖尿病の人は、糖尿病を患っていない人に比べて、難聴を発症する可能性が2倍以上高いことが示されています。
まとめ
肥満と難聴の関係は複雑ですが、肥満が心臓病や糖尿病などの疾患のリスクを高め、聴覚障害と強く関連していることは明らかです。
難聴かもしれないと思ったら、耳鼻咽喉科の医療機関で医師の診察を受け、ご自身に適した治療法や対処の方法について相談してみましょう。
オンライン聞こえのチェックでは、聞こえの状態についてセルフチェックができるので、診察を受けるべきかどうかの目安にしていただけます。
■参考
1) 令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要 - 厚生労働省(PDF)
2) Body Mass Index, Waist Circumference, Physical Activity, and Risk of Hearing Loss in Women - The American Journal of Medicine (amjmed.com)
3) Obesity and risk of hearing loss: A prospective cohort study - PubMed (nih.gov)
■本記事について
本記事は米国Healthy Hearingにて掲載された記事を、一般的な情報提供を目的として意訳、また日本国内の事情に沿うように加筆再編成したものです。本記事のコピーライトはhealthyhearing.com及びheatlhyhearing.jpに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、healthy hearingが指定する執筆者または提供者に帰属します。
■英語版記事はこちらから
米国「HealthyHearing」2023年10月14日の記事「Obesity and hearing loss: Are they connected?」(Joy Victory 寄稿)
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営
2.「安心聞こえのネットワーク」連携サポート -
記事監修者
高島 雅之先生
『病気の状態や経過について可能な範囲で分かりやすく説明する』ことをモットーにたかしま耳鼻咽喉科で院長を務めている。■詳しいプロフィールを見る■