2019.10.03公開

音の雑学:絶対音感は幸せなのか不幸なのか

音楽を聞く女性

世の中には、全ての音を頭の中で楽譜に置き換えることが出来る「絶対音感」の持ち主がいます。子供の頃から楽器演奏をしていると身につくことが多いと言われる能力ですが、全人類の0.2~0.5%にしかない特殊能力とも言われています。

しかしこの能力で苦労してしまう人も多く、少しでもピッチ(音程)がズレていると気持ち悪い音として認識してしまうそうです。

そのために音の鳴る横断歩道などで「通りゃんせ」のメロディを奏でる電子音のピッチがズレている場合は、そこを通る度にイライラしてしまうのです。

さらにモーター音などのように複数の音が同時に聞こえる場合、一般的には最初からノイズだと認識されているので気にならないのですが、絶対音感の人はノイズもすべて音階として聞こえてしまうことから、複数の音が不協和音として耳に入ってくるために気持ち悪くなってしまうそうです。

軍帽実は戦時中の日本の軍部は絶対音感に注目し、英才教育で絶対音感を持つ子供を育てようとしたという記録があります。

子供の頃から訓練しないと絶対音感が身につかないということから実験的に大坂の堺で始まった軍事訓練では、小学校1年生から徹底的に音楽教育を始めたそうです。

一見普通に見える音楽教育でしたが、4年生までに絶対音感を身に付けさせ、その後は潜水艦のスクリュー音や戦闘機のプロペラ音を聞き分ける訓練に移行し、最終的には爆撃機のB29が現在高度何千メートルを飛んでいるかを聞き分けることが出来る人間レーダーとして育ている予定だったそうです。

しかし実際にはその子達が育つのより早く戦争が終結することとなり、実戦に配備されることなく終わったそうです。

ちなみにその当時アメリカ軍はすでに高性能なレーダーを使っていたそうです。

本棚音楽家の中には絶対音感を持っている方は多いのですが、意外な人物として言語学者の金田一春彦さんもその能力の持ち主でした。

これはやはり子供の頃からピアノなどを習っていたことが理由としてあるのですが、そのこともあって将来は言語学者である父・金田一京助さんの後は継がずに音楽の道へ進みたいと考えていました。

しかしアイヌ語の研究をしていた父・京助さんがその絶対音感に目をつけ、文字が存在しないアイヌ語の発音を正確に記録するためのバイトを依頼したのです。そのことによって自分の能力が面白い方向に活かせると気づいた春彦さんは、プロの音楽家になるほど才能が無いとあきらめ掛けていたこともあって、言語学の道へ進むようになっていったのです。

鍵盤言語学者となった後、その絶対音感が注目された事件があります。ある時、誘拐事件が発生してその犯人が掛けてきた電話の声がテレビで公開されたのですが、金田一春彦さんは誰も気がついていなかった部分「犯人は標準語を喋っているが、微妙に訛りがある」とイントネーションの不自然さを指摘し、その犯人の出身地を当てたということもあります。絶対音感と言語学者という二つの能力が発揮されたのですが、そのためにその後は犯罪捜査にも協力するようになっています。

そしてプロの音楽家を目指していた絶対音感の言語学者ということで、1975年に日本テレビ主宰の『異色歌手コンクール』という作家や政治家などの歌自慢を集めた番組に出演して優勝しています。ちなみにその番組には政界入り3年目の若手イケメン政治家・小泉純一郎さんも出演して「白いブランコ」を歌っています。

 

今年、カナダのトロント大学とデラウェア大学の共同研究チームが「絶対音感は幼少期の訓練ではなく、先天的な遺伝によるものである」という研究結果を医学誌に発表しています。

ただし、この研究報告が正しいかどうかはまだ不明で、遺伝と言われるが音楽に精通した家庭環境で育ったことが重要である、などの意見も出ており、まだ明確に判っていない分野なのです。

 


寄稿者:杉村 喜光(知泉)