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黄色い声とはどのような経緯で考案された言葉?:音の雑学

  • 公開日:2021.09.09
雑学コラム
色とりどりのスカーフ

「色聴」と「陰陽五行説」…一見して音と色を関連付けて感じとる能力と陰陽師に何か関係があるようには見えませんが、実はかつて日本文化において音を色で表現することが流行したことがあり、その色分けのベースが陰陽五行説だったのです。音と色の関連付けることがさまざまな時代や文化にみられるのは興味深い事実です。

 

にわかには信じがたい話かもしれませんが、音を聞くと色を感じる人がいて、天才と呼ばれる音楽家の中には音と色を結びつけて語る方も少なくないそうです

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天才ピアニストと呼ばれたフランツ・リストは「音には色がある」と語っており、オーケストラへの指示として「黒ではなく灰色がかった音で」「この紫の部分はもっと濃い紫で」とメモしてあったのですが、楽団員はそれをよく理解出来ずに困惑したみたいです。 ベートーヴェンもロ短調の旋律に関し「この部分は黒く」とメモしてあります。

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他にはロシア五人組の一人、リムスキー・コルサコフは「ドレミすべての音には色がある」と語っており、ドから順に白・黄・明るい青・緑・茶緑・バラ色・暗い青・鉄色と記しています。 このように音と色を関連づけて聞き分ける能力を「色聴(しきちょう)」と言います。しかしそのように感じることが出来る人が全員、同じ音に同じ色を感じているわけではなく個人差がかなりあるみたいです。

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浮世絵

音と色を繋げるのはかなり特殊な例のように思いがちですが、実は江戸時代に音を色で表現するのが流行したことがあります。 1800年代、江戸文化が大きく花開いた文化文政時代に式亭三馬が『浮世風呂』の中で「気のきかねへ野郎どもだ。黄色な声や、白っ声で、湯の中を五色にするだらう」と書いています。

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ここで言われる「黄色い声」という表現は、今でもアイドルなどに投げ掛ける甲高い声の意味で使われていますが、それ以外に「白っ声」など5色の声があったことが書かれています。 なんとなく甲高い声は「黄色」と説明されると納得出来てしまう部分ではありますが、実はこの5色は古代中国にあった陰陽五行説がキッカケになっています。

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五行

陰陽五行説は、森羅万象は木・火・金・水・土という五つの要素から成り立っているという思想で、仏教の中では方角や現世前世死後の世界もこの5つの要素が基準になって説明されていました。 さらに5つの要素は、木=青、火=赤(朱)、金=白、水=黒(玄)、土=黄という色と関連付けられて表現されています。

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人生を表す言葉としても季節と色を組み合わせて、輝かしい時代を青春(せいしゅん)、人間的な成熟期を朱夏(しゅか)、悟りの境地を開く白秋(はくしゅう)、死に向かう滅びを玄冬(げんとう)と現し、最後の黄色は土に還るということから黄泉(よみ)の国となります。 この5つの色が、経典を読む際に音程を上げる下げるの記号としても使われるようになり、色の付いた墨で高低に印を付け、それが5つの音色になっていったのです。鎌倉時代に中国の仏教思想が広がり、さらに雅楽などが完成されていったことから、音=色の考えが浸透していったみたいです。 その中でもっとも高い音を現す色が黄色だったことから、いつしか甲高い声を「黄色い声」と呼ぶようになったのです。

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5つの色で音を現す表現は「黄色い声」しか現代に残っていませんが、先程の音楽家の感じるような現象は「共感覚」と言われ研究対象になっていますが、個人差が多くどうして色に繋がるのかはよく判っていません。 ただし、音を感じる脳の部位と、色を認識する脳の部位がかなり近い場所にあるため、その感覚が発達した人の脳はお互いに干渉しあうことで現象が現れるのではないかと考えられています。

  • 記事投稿者

    杉村 喜光(知泉)

    杉村 喜光(知泉)

    雑学ライターとして、三省堂『異名・ニックネーム辞典』、ポプラ社『モノのなまえ事典』など著作多数。それ以外に様々な分野で活動。静岡のラジオで10年雑学を語りテレビ出演もあるが、ドラマ『ショムニ』主題歌の作詞なども手がける。現在は『源氏物語』の完訳漫画を手がけている。
    2022年6月15日に最新巻『まだまだあった!! アレにもコレにも! モノのなまえ事典/ポプラ社』が発刊。

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