「補聴器っていくらくらいなんだろう?」と疑問に思う方は多いのではないでしょうか。補聴器の値段がどの程度なのかをご存知の方は少数派。気になる補聴器、性能、お金の間の関係について解説します。
Q.補聴器はいくらで購入できるのでしょうか。
補聴器の価格帯は幅広く、現在主流のデジタル補聴器では片耳で13万円〜50万円程度です。中でもよく売れているのは片耳20万円前後の製品。日常生活で、10万円を超えるとすぐに手が出ない方も多いかもしれません。メガネや音を集めて大きくする集音器と同じ感覚でいると、その価格差に驚いてしまいますよね。
テレビや冷蔵庫などの生活家電と異なり、医療機器である補聴器は店頭で値札を見比べるだけでは購入できません。聞こえの悩みがあればまずは耳鼻科(日本耳鼻咽喉科学会のサイトへ)で診察を受け、補聴器販売店などで自分の聞こえに合った機器を選んで購入することになります。そのため普段の生活で補聴器の価格を見かける機会はほとんどなく、検討する段階で初めて価格を知ることになります。「思ったよりも高額だった」と感じる方が多いのも当然でしょう。
Q.どうして補聴器の価格は高いのですか?
補聴器を単に音を集めて大きくするだけの機械だと思っていると、その値段は高く感じるかもしれません。しかし最新のデジタル補聴器は、AI技術などを搭載した超小型コンピュータであり、一人ひとりの聞こえに合わせた調整が可能な医療機器だと知っていただければ、印象は変わってきます。
聞こえのメカニズムはとても複雑です。一般的に聞こえと言うと耳を連想しますが、実は耳は音を集める器官で、音の理解を司るのは脳の働きによるものです。人間の脳は「音を聞く」裏側で、雑音を気にせずに聞きたい音に意識を集中したり、音の方向や距離を感じ取ったり、音と記憶と結び付けて意味を理解するなど、さまざまな処理を瞬時に行っています。
こうした複雑な処理をサポートするには、高い技術が求められます。補聴器は、周囲の音環境を分析して、複雑な音声信号処理を行うために先進のデジタルICチップを搭載しています。その処理能力は時に超高性能のコンピューターにも匹敵します。例えば最先端の技術が搭載されたの補聴器は周囲のあらゆる音を捉え、使う人の脳に負担のかからないように音声処理をして聞こえを届けています。このように1日中負担なく使い続けることができる補聴器選びが大切です。
さらには使う人の好みに合わせた最適なプログラムを選択し、補聴器で電話の音声を聞き、会話をすることや、スマートフォンなどのデバイスから直接音楽を聞いたりと生活を豊かにする機能も備わっています。今や補聴器は、聞こえを起点に生活を豊かにする機器へと進化しているのです。
Q.補聴器を使いこなせるか不安な場合、サポートにお金はかかるのでしょうか。
多くの場合、補聴器の価格には、使い続けるためのアフターケアやサポートの費用が含まれています。というのも、補聴器をしっかりと使うためには、聞こえのトレーニングが不可欠だからです。
補聴器は他の家電のように、電源を入れればすぐに使えるものではありません。個人差はありますが、難聴による聞こえづらい状況が長いほど、補聴器の聞こえに慣れるには時間がかかると言われています。そのため補聴器を使い始めたばかりの間は、補聴器の音を煩わしく感じる場合があるのです。
しっかりと使い続けるためには次第に音に慣れていく必要があります。最初は静かな場所で数時間からスタートします。音量についても必要なボリュームを最初から設定するのではなく、少しずつ最適な音量に近づけていくことで、1日を通して使い続けることができるようになります。こうした脳が新しい聞こえに順応する時間は人によって異なり、約3か月~1年はかかると言われています。
また、補聴器は身に着ける精密機器なので汚れや湿気を取り除く適切なメンテナンスが必要となります。補聴器販売店では、このような購入後のアフターケアも引き受けてくれます。
Q.専門店やメガネ店など購入する店の種類によって、調整などのサポートに違いはあるのですか。
店ごとの大きな違いは設備や専門スタッフの有無といった技術的なサポート体制にあります。基本的にはアフターケアは購入店舗で行うため、重視する点をどこに置くかによってお店選びは変わってきます。どんなに高性能な補聴器を購入してもその方に合った調整を行わなければ補聴器は役に立いません。補聴器の効果を計測できる設備が充実していることや、聞こえについてしっかり相談できるカウンセリングを重視したお店や、国家資格である言語聴覚士、もしくは民間資格である認定補聴器技能者という聞こえの専門家を配置していたり、認定補聴器販売店なら、認定補聴器技能者が必ず配置されています。設備や人員体制によって受けることができるサービスも変わってきます。
Q.高い補聴器の方が聞こえが良くなるのでしょうか。
補聴器の性能に比例して価格は高額になります。高額な上位機種は、より複雑な音声処理が可能です。従来機種が目の前の会話に範囲を絞って音声処理していたのに対し、最先端の機能が搭載された機種の中には周囲360度に範囲を広げ、より自然で疲れにくい聞こえを提供するものもあります。さらにハウリング予防や騒音抑制といった機能が充実し、聞こえの好みに合わせた繊細な調整ができるのも、上位機種ならではのメリットです。
しかし、高額な補聴器がすべての聞こえに最適であるというわけではありません。聴力やライフスタイルが人それぞれ違うように、最適な補聴器はその方の聞こえの状態やライフタイルによって異なります。補聴器選びで最も重要なことは、聞こえにどんな困りごとがあるか。その悩みを解決できる補聴器であればいいのです。
例えば仕事で会議に出席する機会が多い人なら、複数人が話す場面での聞き取りにも対応できるよう、多機能で高性能な補聴器が必要となります。しかし日常生活で家族と会話できれば十分という方なら、シンプルな機能でお求めやすい価格の製品を選んでもいいでしょう。
自分の聴力やライフスタイルに合った補聴器を選び、毎日使い続けることで、少しづつ慣れていき、補聴器はその方の聞こえの一部となっていきます。専門家と共に補聴器の性能を余すことなく発揮して、暮らしを豊かにする手助けとしてください。
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営 2.「安心聞こえのネットワーク」連携サポート
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記事監修者
若山 貴久子 先生
1914年から100年以上の実績「若山医院 眼科耳鼻咽喉科」院長。■詳しいプロフィールを見る■