「目の中に入れても痛くない!」ご自身のお孫さんについては、そう感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。そして、小さな子供たちの健康と安全を守るためなら何でもしてしまうという方もいらっしゃるのでは? 子供たちは誰もが可愛く、秘めた才能と可能性を持っています。難聴を抱えている方が、そんな小さな子供たちに折に触れて話しておくべきことを今回はご消化いたします。補聴器を装用されている方は特に大切です。
ほんの少しだけお時間を下さい。お孫さんや小さい子供たちに難聴や補聴器について、どんな風に話しを切り出すべきでしょうか?
補聴器をお使いの方、また装用を検討されている方に、ほんの少しだけ目を留めていただけたら幸いです。
おばあちゃん、なぜそれを耳に入れているの?
私たち自身も両親や祖父母から「耳に何かを入れてはいけません」と常々言われてきました。おそらく皆さんもお子さんやお孫さんに同じような注意をしてきたのではないでしょうか?
しかし、いま実際あなたは耳の中(外耳道)に小さなものを入れているわけです。子供たちが好奇心に駆られるのも無理はありません。では幼い子供たちに難聴についてどのように説明すべきなのでしょうか?
- まず、補聴器を付けているときにあなたを一生懸命見ていることに気づいた場合は、いま何をしているかについて伝えてあげてましょう。
- 子供たちに、以前ほどにはよく聞こえていないのだということを伝えてあげましょう。あなたの手の中にある小さな器械は、「おばあちゃん、あのね」と一生けん命に話してくれる子供たちの言葉をより良く聞くことができるように、音を大きくしてくれるのだということを説明してあげてください。
- あなた自身が経験していることを子供たちが理解できるように、ちょっとしたことをやってみてください。子供たちに小さな自分の手を耳にギュッと押し当てて、自分の名前を小さな声で呼んでみるように言います。そして「 おばあちゃんの声が聞こえる?」と聞いてみます。今度は、耳に当てた手を外して、自分の名前をもう一度声を出して呼んでみるように言います。「おばあちゃんの声が、よく聞こえるようになった?」とたずねてみます。「それがね、補聴器をつけたときの気持ちなのよ」と説明してあげてください。
子供たちのために補聴器を安全な場所に置きましょう
子供たちは好奇心に満ちています。それはとても喜ばしいことですが、時に危なっかしいこともあります。彼らが学び育ちゆくために必要な直感力は、ときに病気や怪我につながる可能性をもまた孕んでいるものです。自然な好奇心を抑えたくはないものですが、彼らを危険から守り、また補聴器をいたずらなどからどう守るべきでしょうか?
- まず、補聴器はおもちゃではないということ、そしておじいちゃん、おばあちゃんの聞こえをより良くすることに役立ちますが、他の誰かのためには役立たないものであることを説明してください。
- 補聴器を耳につけていないときは、補聴器ケースや除湿器に入れて子供たちの好奇心を刺激しない、そして手の届かない場所に保管してください。これらの医用機器は高価なばかりでなく、子供が耳や口の中などに入れることは危険でもあります。
- 電池は、子供たちの手が届かないところに保管してください。全米中毒センター(National Capital Poison Center)によると、米国では2016年には6歳未満の2,000人以上の子供たちについてボタン電池の誤飲が報告されています。ボタン型の電池は比較的無害に見えますが、このいわば小さなエネルギー装置は、間違えて飲み込むと食道または胃にとどまってしまう可能性があります。胃液といった体液と混ざることで、体内の炎症や出血を引き起す、また重症化することもあります。子供たちが補聴器用電池を飲み込んだ場合は、直ちに医療機関へと連絡を取り、必要な指示を仰ぎましょう。公益社団法人日本小児科学会の子供の救急(生後1か月~6歳対応)も参照ください。
旅行に行く際のヒント
お孫さんなど小さなお子さんを連れた休暇のご予定はありますか?
家族と一緒に長い時間を過ごすことは素晴らしい思い出作りとなる一方、子供たちとの旅で補聴器を装用する際に、ご自身の課題に直面することもあります。
- プールなどには注意してください。お孫さんと一緒に水中で遊んでいるときには間違いなく、ご自身も濡れています。防水補聴器を着用していない限り、水分がマイクや音の出口であるスピーカーなどを故障させることがあります。補聴器を取り外し、安全に遊んでください。補聴器を安全に保管する、防水キャップやヘッドバンドなどで耳を覆ったりするなどを検討ください。
- 温泉水は、硫黄をはじめ様々なケミカル物質が含まれています。防水型の補聴器であっても、主に水に対しての耐性や保護が基準になっています。入浴時には補聴器を外して、安全な場所に保管ください。
- 駅や空港など騒音がある場所や往来の激しい場所で交通機関を利用する際には、お孫さんに 「聞くことを助けてね」と頼んでみてください。補聴器は装用してままで、でも空港や駅の放送や車内放送の内容を理解する際には助けが必要かもしれないと子供たちにお願いしてみてください。とても小さいお子さんたちでも、彼ら自身があなたのために役立てることが分かると、もじもじしたり、きょろきょろしたりせずにしっかりとあなたと手を握ってくれる動機付けとなるかもしれません。
- 子供たちと一緒のドライブなどでご自身がハンドルを握る場合は、同乗する家族みんながおしゃべりやカーオーディオなどの音量を抑え、ドライバーの気が散ることを減らすことが、安全運転のためにいかに重要であるかを理解するように説明しましょう。もしお孫さんなどが小さい場合、ドライブ中に飽きさせないための様々な準備も必要です。
このお話の最後に
皆さんがお孫さんたちと一緒に過ごす時間を楽しむのと同じくらい、小さい子供たちは可愛く、強い好奇心をもって、あなたと時を過ごすことを楽しんでいるエネルギーあふれる存在です。年齢に合わせて聞こえの問題や補聴器についての情報を注意深く共有することで、子供たち自身が聞こえを大切にする気持ちを育むことに役立ちます。また、困っている人々に対してもより敏感になるように成長していくことでしょう。
皆様も子供たちの健康な聞こえの習慣作りの見本になってください。テレビやカーラジオの音量はできるだけ低く抑えるようにしてみてください。そして、補聴器は大切なものと伝えて装用してください。
小さな子供たちの耳は大人たちよりもさらに敏感です。耳鼻科での定期的な聴力検査の習慣は、今の聞こえを大切にすることにつながることを伝えてください。子供たちは観察することで学びます、ご自身がモデルになっていただくことで、お孫さんが自分自身や家族の聞こえを大切にするための必要な習慣を身に着ける可能性がより高くなるはずです。
■本記事について
本記事は米国Healthy Hearingにて掲載された記事を、一般的な情報提供を目的として意訳、また日本国内の事情に沿うように加筆再編成したものです。本記事のコピーライトはhealthyhearing.com及びheatlhyhearing.jpに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、healthy hearingが指定する執筆者または提供者に帰属します。
■英語版記事はこちらから
米国「Healthy Hearing」2017年6月27日の記事「Talking to grandchildren about hearing loss」(Debbie Clason寄稿)-
記事投稿者
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