
「高齢者の方にとって使いやすい補聴器って?」 「具体的にどんな種類の補聴器がいいの?」 高齢者の方は、生活スタイルや手先の器用さに合わせて補聴器を購入することが大切です。実際に日常生活で期待していた聞こえに近づき、かつ問題なく操作や手入れができないと装用をしなくなる恐れがあるためです。 本記事では、補聴器の購入を検討している高齢者の方に向けて以下を解説します。
- 高齢者の難聴の特徴と補聴器の必要性
- 使いやすい補聴器の特徴や機能
- 使いやすい補聴器の種類3選
- おすすめの購入先
- 購入前に知っておきたい3つのポイント
「補聴器は種類が多すぎてどれがよいのかわからない」という方は、本記事を補聴器選びに役立ててください。補聴器全般の種類を知りたい方は「【比較表付き】補聴器9種類の特徴|自分に最適な補聴器を選ぼう!」を参考にしてください。
高齢者の難聴の特徴と補聴器の必要性
加齢に伴って生じる聴力の低下は、個人差はありますがあらゆる方に起きるものです。進行がゆるやかであり、自覚しにくい特徴があります。
日常生活のコミュニケーションに支障をきたす恐れがあるため、早期に対応することが大切です。まずは、高齢者の方における補聴器の必要性を理解してもらうために以下を解説します。
- 高齢者が補聴器を使うメリット
- 難聴を放置することによるリスク
- 集音器をおすすめできない理由
それぞれの詳細を解説します。
1.高齢者が補聴器を使うメリット
難聴の高齢者の方が補聴器を適切に活用できれば、以下のようなメリットがあります。
メリット | 詳細 |
---|---|
人間関係の維持・向上につながる | 小さな声が聞き取りやすくなり、家族や友人とのコミュニケーションの向上につながる。家族と同じ音量でテレビを楽しめるため家族で団らんしやすくなる。 |
仕事上のトラブルを減らせる | 働き盛りの年代である「40代半ばから50代半ばでは約20人に1人」「50代半ばから60代半ばでは約10人に1人」の割合で聴力の低下が始まっている。仕事での聞き間違いや聞き逃しを軽減できトラブルを減らすことができる。 |
趣味の幅が広がる | 聴力を改善できれば、交流の場への参加、スポーツや旅行などの趣味、生涯学習への挑戦など活動の幅が広がる。 |
2.難聴を放置することによるリスク
高齢者の難聴を放置してしまうと、身体機能や認知機能の低下につながるリスクがあります。例えば、以下のような流れで影響を与えます。
- 聴力の低下により会話が正確に聞き取れなくなりコミュニケーションに問題が生じる
- 「何度も聞き返してしまう」「いやな顔をされるのでは?」などにより交流の機会を減らしてしまう
- コミュニケーションや外出の機会が減る
- 外出しないことで筋力が低下して転倒や骨折のリスクが高まる
- 社会的に孤立することで認知機能にも影響を及ぼす
このように難聴を放置してしまうと、身体的・精神的に悪影響を及ぼすリスクがあります。
3.集音器をおすすめできない理由
補聴器よりも手軽かつ安いからといって、会話の聞き取りの改善を目的に集音器を利用することはおすすめできません。集音器はすべての音を均一に大きくするだけで、個人ごとに異なる聞き取りが難しい音の大きさや高さに応じた調整ができないためです。
また、集音器は補聴器と違い、医療機器としての認証を受けておらず、効果や安全性の基準も設けられていません。種類によっては大きな音が出すぎるため注意が必要です。会話の聞き取りの改善が目的であるのなら、個人の聞こえの状況に応じて調整ができる補聴器の利用を推奨します。
補聴器と集音器の違いを詳細に知りたい方は「【比較表】補聴器と集音器の8つの違い|メリット・デメリットも解説」を参考にしてください。
高齢者の方におすすめの使いやすい補聴器の特徴や機能は?
高齢者にとって使いやすい補聴器の機能や特徴を挙げると以下の通りです。
- 雑音抑制機能がある補聴器
- 電池交換などが簡単な補聴器
- 電池交換が不要である充電式補聴器
- 防水・防塵機能付き補聴器
それぞれの詳細を解説します。
1.雑音抑制機能がある補聴器
雑音抑制機能は、補聴器の基本的な機能として多くの補聴器に搭載されています。雑音抑制機能とは、以下のような不快な音の増幅を抑える機能です。
- 電車の騒音や車の走行音
- エアコンや掃除機の作動音
- 人が多い場所や騒がしい場所の音
- 強い風による風きり音
補聴器は性能が良いほどに値段が高くなる傾向ですが、不快な音によるストレスを軽減するために雑音抑制機能が搭載されている補聴器を推奨します。
2.電池交換などが簡単な補聴器
補聴器は小型化が進んでおり、取り扱うには一定の器用さが必要です。特に補聴器の電池交換は比較的頻繁に行う作業です。
電池交換のしやすさは器種によって異なるため、購入の際は以下の作業を実際に行ってみてください。
- 電池のシールを剥がすことはできるか
- 電池の蓋の開閉はできるか
- 電池を取り出すことはできるか
- 電池を入れることはできるか
これらの作業が問題なく行える器種を選ぶと良いでしょう。その他にも、音の出口を専用のブラシで掃除したり、本体を柔らかい布で拭き取ったりと、定期的な手入れも必要です。実際に補聴器販売店で手入れができそうかも確認してください。
3.電池交換が不要である充電式補聴器
充電式補聴器であれば、小さな電池を交換する手間がなく、高齢者の方にとっても扱いやすいです。実際に電池式の補聴器に触れてみて、電池交換が煩わしくなりそうであれば、充電式補聴器を検討しましょう。また、充電式補聴器を検討する際は、補聴器に充電器が付いているのか、別途購入が必要であるのかも確認してください。
4.防水・防塵機能付き補聴器
防水・防塵機能付き補聴器は、汗や雨、埃から本体を保護してくれます。以下に該当する方は、防水・防塵機能付き補聴器を検討してもよいでしょう。
- 顔に汗をかきやすい
- 釣りなど水辺で行う趣味がある
- 仕事の関係上、湿度の高い環境にいることがある
ただし、完全防水ではないため注意が必要です。防水機能があったとしても汗は故障の原因になるため定期的な手入れは必要です。
高齢者の方におすすめの使いやすい補聴器の種類3選
補聴器にもそれぞれ一長一短があり、個人に合った器種を選択することが大切です。高齢者の方の場合は、難聴の程度、生活スタイル、手先の器用さなどが主な基準となるでしょう。参考までに以下のような高齢者の方に使いやすい補聴器を解説します。
種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
![]() 1.耳かけ型(BTE) |
・大きさがあり操作性がよい ・重度難聴まで対応できる器種がある ・イヤモールド(耳せんのこと)により装用感を調整できる |
・汗が入りやすい ・本体が大きく目立ちやすい ・マスクやメガネを装着する際に邪魔になることがある |
![]() 2.耳かけ型(RITE) |
・自然な音が聞こえやすい ・BTEより小型で目立ちにくい ・重度難聴まで対応できる器種がある |
・一定の器用さが必要である ・髪が短いとうしろから見える ・しっとりした耳垢がある方は不向きである |
![]() 3.耳あな型(カナル) |
・重度難聴まで対応できる器種がある ・比較的目立ちにくい ・一定の大きさがあるため操作性がよい |
・横からみると目立つ ・閉塞感を感じやすい ・しっとりした耳垢がある方は不向きである |
それぞれの詳細を解説します。
1.耳かけ型補聴器(BTE)
耳かけ型(BTE)は、耳の後ろに本体を掛け、音を伝えるチューブを耳に入れるオーソドックスなタイプです。一定の大きさがあり、操作や手入れがしやすいため手先の器用さに自信がない方におすすめです。
メリット | ・一定の大きさがあり扱いやすい ・カラフルでデザイン性の優れた製品が増えているため自分好みのものを見つけやすい ・イヤモールドにより装用感を調整できる ・重度難聴まで対応できる器種がある |
---|---|
デメリット | ・汗が入りやすい(汗に強い器種も存在する) ・本体が大きく目立ちやすい ・マスクやメガネと一緒に装用する際は邪魔になることがある |
2.耳かけ型補聴器(RITE)
耳かけ型(RITE)は、本体とスピーカーはワイヤーにより分離した構造で、本体を耳の後ろにかけて耳の中にスピーカーを装用するタイプです。BTEよりも小型であるため、目立ちにくい耳かけ型を要望されている方におすすめです。
メリット | ・BTEより小型で目立ちにくい ・髪色に合わせた目立ちにくいカラーなど豊富なデザインがある ・耳の中にスピーカーを入れるため自然な音に聞こえやすい ・重度難聴まで対応できる器種がある |
---|---|
デメリット | ・汗が入りやすい ・一定の器用さは必要である ・耳の中にスピーカーを入れるためしっとりした耳垢がある方は不向きである ・髪が短いと後ろから見える ・マスクやメガネと一緒に装用する際は邪魔になることがある |
3.耳あな型補聴器(カナル)
耳あな型(カナル)は、一定の大きさがあるため耳あな型の中では、操作や手入れがしやすいのが特徴です。「耳あな型を検討したいが小さすぎるのは取り扱いの面で不安」という方におすすめです。カナルも小さすぎて取り扱いが難しそうであれば、ハーフサイズ、フルサイズとさらに大きな種類があります。
メリット | ・一定の大きさがあり扱いやすい ・耳かけ型よりは目立ちにくい ・重度難聴まで対応できる器種がある ・音量調整ボタンなどを搭載できる |
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デメリット | ・横から見ると目立つ ・耳あなを塞ぐため閉塞感を感じやすい ・しっとりした耳垢がある方は不向きである |
補聴器の選び方の詳細を知りたい方は「補聴器の選び方|主な5つの基準と試聴時に確認すべきポイントを解説」を参考にしてください。
高齢者の方は補聴器をどこで買うのがよい?
補聴器は通信販売やインターネットでも購入できますが推奨できません。補聴器は適切に調整しなければ、期待している補聴効果を得られないためです。
高齢者の方におすすめの購入先は以下の2つです。
- 認定補聴器専門店
- 認定補聴器技能者が在籍している販売店
それぞれの詳細を解説します。
1.認定補聴器専門店
認定補聴器専門店とは、以下のような運営基準を満たした補聴器販売店です。
- 補聴器の使用方法の指導を適切にできる知識や技能を持った認定補聴器技能者が在籍している
- 補聴器の調整や効果の確認を適切にできる設備が整っている
- 補聴器相談医と連携して業務を行っている
以上のように認定補聴器専門店は、装用者を支援する体制が整っています。
2.認定補聴器技能者が在籍している販売店
認定補聴器技能者とは、4年間の養成課程を修了し、最終試験に合格した者に与えられる資格です。認定補聴器技能者であれば、以下のような流れで専門知識と技能に基づいたサポートしてくれます。
- 使用目的のヒアリング
- 聞こえの状態の確認
- 聴力や要望に応じた補聴器の選定
- 要望や生活環境に合わせた補聴器の調整
- 補聴器の効果の確認
- 補聴器のケアや使用方法の長期的なサポート
お近くに認定補聴器専門店がない場合は、認定補聴器技能者が在籍している販売店を探してください。
高齢者の方が補聴器の購入前に知っておきたい3つのポイント
高齢者の方が補聴器の購入前に知っておきたい3つのポイント は以下の通りです。
- 試聴期間を利用する
- 聞こえには慣れるまでは期間が必要である
- 定期的なメンテナンスが必要である
それぞれの詳細を解説します。
1.試聴期間を利用する
補聴器の購入前に試聴期間を利用して、実際の生活環境で装用してみることは大切です。実際の生活の中で装用してみると「自分が求めていた聞こえの改善は得られなかった」という場合もあるためです。
聞こえの状態だけなく、生活の中での「補聴器の付け心地はどうか」「付け外しに問題はないか」などを確認してください。多くの補聴器販売店では、1~2週間程度の試聴期間を設けています。後悔しない補聴器を選択するためにも試聴期間を利用してください。
2.聞こえには慣れるまでは期間が必要である
補聴器の装用開始後、すぐに期待していた聞こえに近づくわけではありません。補聴器を初めて装用する場合、脳が新しい音の刺激に慣れるまで3ヶ月程度かかるためです。
調整頻度 | |
---|---|
装用開始時 | 1〜2週間に1回の調整を3回以上 ※何も問題がなくても3ヵ月は繰り返す |
3ヵ月後 | 3〜6ヵ月に1回 |
聞こえは時間経過に伴って変化します。環境の変化や心の健康状態でも聞こえは変化することがあります。気になる点がある場合は、早めに調整して理想の聞こえに近づけましょう。
3.定期的なメンテナンスが必要である
補聴器は精密機器であり定期的なメンテナンスが必要です。耳垢や汚れによる故障を防ぐためには、以下のような毎日の手入れが必要です。
- 音の出口部分に耳垢が詰まっていたら専用のブラシで取り除く
- 補聴器から電池を取り出して、本体と電池についた汚れを乾いた柔らかい布で拭き取る
- 装用しないときは電池を取り出して乾燥ケースで保管する
器種によって補聴器の手入れ方法は異なるため、補聴器販売店で手入れ方法を確認してください。また、定期的に補聴器の奥に入り込んだ汚れを掃除する必要があります。自分ではできないため、3ヵ月に1度は補聴器販売店に持っていき、掃除を含めたメンテナンスをしてもらってください。
高齢者の方は特に聞こえや使いやすさを基準に補聴器を選ぼう
補聴器は期待していた聞こえや使いやすさが満たされていないと、装用をやめてしまうことがあります。見た目も大切ですが、自分の生活スタイルや手の器用さを考慮することが大切です。
補聴器の購入は通信販売やインターネットでは推奨できません。個人に合わせた適切な調整を実施しなければ、理想の聞こえに近づけることができないためです。
補聴器は、専門知識を有する認定補聴器技能者にサポートしてもらうことが大切です。装用者のサポート体制が整っている認定補聴器専門店または認定補聴器技能者が在籍している販売店で購入しましょう。
参考
公益財団法人テクノエイド協会 高齢者介護のための 聞こえの基礎知識と補聴器装用
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記事投稿者
吉沢仁(よしざわひとし)
看護専門学校を卒業後、病棟看護師として従事する。2021年からWebライターの活動を開始。医療・健康分野を専門にしており、生活習慣病や精神疾患、呼吸器疾患、循環器疾患、小児疾患などさまざまな分野で執筆経験がある。医療系の総執筆数は200本以上。現在は医療系メディアでSEOライティングを中心に対応中。