梅雨の時期は「湿度が高くなる」「気圧が低くなる」などの気象条件の特徴から、難聴などの耳の症状を感じる方がいます。湿度の高さは「外耳の炎症」を招き、気圧の低さは「気象病」を引き起こします。梅雨時期の耳の不調の具体的な予防方法も紹介していますので、これからの梅雨時期に向けて参考にしてください。
梅雨時期の湿度の高さ
梅雨時期は雨や曇りの日が多く、湿度の高い日が続きます。気象庁の過去のデータによると、梅雨時期の月平均湿度80%を超えることも。この湿度の高さによって起こりやすいのが外耳の炎症です。
外耳とは、耳介(一般的に耳と呼ばれる部分)から鼓膜までを指し、耳の穴から鼓膜までつながる管状の部分は外耳道と呼ばれます。湿度が高い梅雨時期には外耳道の皮膚や粘膜、耳垢が湿りやすく、細菌やカビが繁殖しやすい環境です。
外耳道の皮膚は薄くデリケートで、耳掃除や耳の中を指で耳かきするなどの刺激によって傷ついてしまい、傷口から細菌やカビ(真菌)が入り込んで増殖すると外耳炎や外耳道真菌症になります。
外耳道炎
外耳道の皮膚や粘膜の傷から、黄色ブドウ球菌や緑膿菌などが入り込んで炎症が起こり、耳の痛み、かゆみ、耳だれ、耳の詰まった感じ、難聴などの症状がみられます。
参照リンク:【梅雨の時期は夏よりも低い気温でも実は熱中症になりやすい?外耳炎にも要注意!】
外耳道真菌症
同様に外耳道の傷から真菌が入り込んで増殖し、炎症を起こした状態です。外耳道炎と同じように耳のかゆみ、痛み、耳だれ、耳の詰まり感などの症状がみられます。耳の穴を覗くと、増殖した真菌の菌糸がみえることもあります。治療は真菌の除去・洗浄を行いますが、再発しやすいので根気よく治療を続ける必要があります。
梅雨時期の気圧の変化
気圧の変化や気温、湿度の変化などの気象条件の変化がもたらす身体の不調は気象病と呼ばれます。2019年の愛知医科大学の報告により、耳の奥の内耳に気圧の変化を感じとるセンサー機能があることが明らかにされ、近年、気象病が認知されるようになってきました。
内耳が感じ取った気圧の変化は脳に伝わり、その信号が自律神経のはたらきを乱す結果、めまいや頭痛、関節痛、倦怠感、耳鳴り、難聴、耳の痛み、耳の詰まった感じなどの症状がみられます。
梅雨時期は気圧が低下しやすく、気圧の変化による耳の症状が出やすい時期といえます。
梅雨時期にかかる耳の負担を和らげる方法
湿度が高く、気圧が変化しやすい梅雨時期の耳の負担を軽減するために、以下のような方法が考えられます。
耳掃除を控える
耳には自浄作用があり、外耳道には繊毛(せんもう)とよばれる微細な毛のはたらきによって、自然と耳垢が耳の外に押し出されるようになっています。
綿棒や耳かきを使って耳の中を掃除すると、外耳道に傷がつくリスクがあるため、過度な耳掃除は避けましょう。
耳垢が湿っている場合は、耳垢が外に出てきにくいことがありますので、耳鼻科で診察を受けるのがおすすめです。
長時間、イヤホンを耳の中に入れたままにしない
イヤホンが耳の中で擦れると外耳道が傷つきます。また、イヤホンを長時間耳の中に入れたままにすると、耳の中に湿気がこもって細菌やカビの繁殖しやすい環境になります。
外耳道炎や外耳道真菌症のリスクを減らすために、1時間ごとに休憩を取り、入浴後など、耳の中が湿っている時はイヤホンをつけないようにしましょう。
規則正しい生活で自律神経を整える
自律神経が気圧の変化の刺激による影響をなるべく受けにくくするために、規則正しい生活を送りましょう。決まった時間に就寝・起床して、朝起きたら太陽の光を浴びるようにします。バランスの取れた食事をとり、日中は活動的に過ごして十分な睡眠をとるように心がけましょう。
血行不良も自律神経に影響するため、首・肩・耳周りの無理のないストレッチを行って、血流を促すこともおすすめです。
梅雨時期は補聴器のケアも忘れずに
湿気の多い梅雨時期は耳の中も湿気がこもりやすい時期です。補聴器をお使いの方は、耳が乾いた状態で装用し、外した補聴器が湿っているときには乾いた布で水分をやさしくふき取りましょう。夜間は乾燥ケースに入れて保管しておくと、乾燥剤が水分を吸い取るので、湿度の高い時期も快適に使用できます。
参照リンク:【補聴器の掃除方法】
梅雨時期には「耳の中に湿気がこもらないようにして清潔に保つこと」「自律神経を整えて気圧の変化による不調をできる限り軽減すること」を意識して、耳の不調を予防しましょう。
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記事投稿者
丹野 愛
フリーライター。医療・介護系のサイトコンテンツやコラムなどを執筆。作業療法士。福祉住環境コーディネーター2級。認知症ライフパートナー2級。
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記事監修者
高島 雅之先生
『病気の状態や経過について可能な範囲で分かりやすく説明する』ことをモットーにたかしま耳鼻咽喉科で院長を務めている。■詳しいプロフィールを見る■