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聞こえの問題に役立つビタミン、ミネラル、サプリメント!難聴や耳鳴りに効くのは?逆効果なのは?

  • 公開日:2022.12.23
難聴
聞こえの問題への効果が期待されるサプリメント

「体が資本」あるいは「健康は食事から」など、健康のために食事に気を配ろうというメッセージはよく耳にすると思います。そして食物に含まれる栄養素を補うサプリメントもまた、健康によいというメッセージとともに多種多様なものが販売されています。難聴や耳鳴りなど聞こえに関してはどうでしょうか?聞こえによい栄養素やサプリメントがあるとしたら…聞こえの問題や悩みの解決を期待する方もおられると思います。本記事では米国の研究機関の様々な研究にふれながら、耳によいとみられる栄養素、サプリメントがあるのか、期待できる効果とその限界についてご紹介します。

 

ドラッグストアのビタミン剤売り場に並ぶ商品やオンラインストアで購入できる商品には、さまざまな種類のサプリメントや生薬がありますが、一部の商品の効果については大げさに紹介されているものもあります。

聞こえに対してこれらの商品はどれくらいの効果があるのでしょう?

聞こえを守り、難聴予防に役立つサプリメントについて見てみましょう。

普段からの食生活が大切

よく言われることですが、普段の食生活があなたのからだづくりに影響を与え、聞こえの健康にも影響を与えます。

「研究データから、地中海式食事法や高血圧を防ぐ食事法(DASH)のような食事療法が、加齢に伴う難聴予防に役立つ可能性があることを示唆しています」と、The Conservation of Hearing Study(米ハーバード大学、聴覚障害の研究チーム)の責任者であるカーハン博士は述べています。その理由の1つは、これらの食事療法によって血流改善につながることが期待できることから、耳の健康にとっても耳への血流が良くなることは重要だからです。

「NIDCDが資金提供した研究によると、食事からであれサプリメントからであれ、特定のビタミン摂取量が多い人は、難聴になるリスクが低いようです」と彼女は述べます。(NIDCD:国立神経疾患・脳卒中研究所)

つまり、適切な栄養素を摂取することで聞こえを守ることができるのです。

「健康的な食事療法により適切な栄養素を摂取することで、健康への多くの悪影響を避けることに役立ち、難聴の予防にも役立つ可能性があります」 と、カーハン博士は述べています。

難聴からあなたを守る食べ物!バランスの良い食生活は耳にも大事

バランスの良い食生活が難聴のリスクを減らすことにつながります。詳しくはこちらご覧ください。

新たな研究領域 - サプリメントの影響

食べるものが聞こえに影響を与えるのであれば、サプリメントを摂取することによっても聞こえを守ったり、難聴やその他の耳の問題を防いだりなどの効果があるかもしれないと考えるのは当然です。

聴覚分野におけるサプリメントの有効性については研究が進んでいるところですが、まだ明確になっていません。

「現在時点では、聞こえを守るためのビタミンやサプリメントの使用に関して、臨床的に推奨できるほどの証拠となる情報はありません」 とカーハン博士は述べます。さらに、「追加で摂取すること(すなわち、標準的な推奨用量を超えて摂取すること)が聞こえに影響するかどうかを明確するには、さらなるエビデンスとなる情報が必要である」と付け加えました。

しかしながら、ビタミンやミネラル、生薬などの栄養補助食品は、難聴や耳鳴りのリスクを減らすのに役立つ可能性があります。

ビタミンおよびミネラル

葉酸

米国国立衛生研究所(NIH)のサプリメント室(ODS)によると、葉酸は、DNAやRNAなどの核酸やタンパク質の合成を促進し、細胞の生産や再生を助けるビタミンB群であり、ナッツ類、豆、野菜など多くの食品に含まれています。さらに、パンやシリアルなどの多くの食品は、合成の葉酸が添加されています(編注:米国をはじめ82か国で葉酸の添加が義務付けられていますが、日本では義務づけられていません)。

あまりにも一般的なので、ほとんどの人は食事を通じて十分な葉酸を摂取しています。

カーハン博士らの研究チームは、葉酸の摂取量が多い人は 「難聴になるリスクが低い」ということを発見しました。

例えば、2010年に Otolaryngology–Head and Neck Surgery(耳鼻咽喉科に関する米国の学会誌)に掲載されたカーハン博士らによる研究では、60歳以上の男性では 「葉酸の総摂取量が難聴のリスク低下に関連していた」 ことを明らかにしました。

これは葉酸に関する他の研究とも一致しています。

例えば、オランダで行われた無作為化臨床試験では、葉酸の補給は 「加齢に伴う会話音域の周波数における聴力低下を遅らせる」という結果を示しました 。この研究の参加者とは異なり、葉酸を添加した食品をすぐに手に入れることができるアメリカ人にとって、これらの効果はそれほど意味のあるものではないかもしれないことに注意してください。

ビタミンB

その他のビタミンB群

他のビタミンB群も耳の健康に関して興味深いものがあります。米国国立衛生研究所のサプリメント室によると、例えばビタミンB 6が不足する乳児は急性の聴覚過敏になる可能性があるとのことです。ビタミンB 12も重要かもしれません。American Journal of Clinical Nutrition(米国の臨床栄養学の学会誌)に掲載された古い研究では、ビタミンB 12は末梢神経の代謝を改善する作用があり、これが不足すると (および葉酸の不足) 「加齢に伴う聴覚機能の低下や障害につながる可能性がある」 と結論づけられています。

Noise and Health誌(米の医学ジャーナル)に掲載された2016年の研究によると、ビタミンB 12は、ビタミンが不足している人の慢性的な耳鳴りの治療への効果が期待されています。

カロテノイド

カロテノイドは植物や果物、穀物、油に含まれている黄色、赤色、オレンジ色の天然色素です。例えばニンジンやサツマイモなど緑黄色野菜に豊富に含まれます。抗酸化物質であると同時にプロビタミン(体内でカロテノイドがビタミンAに変換される)でもあります。

カロテノイドの摂取量を増やすことで、難聴のリスクを低下させる可能性があります。例えば、米国の栄養学ジャーナルに掲載された2015年の研究(カーハン博士は、著者の一人)では、特定のカロテノイド(および葉酸)の摂取量が多いほど 、難聴のリスクが低下すると報告されています。

オメガ3脂肪酸

オメガ3脂肪酸を摂取できるのは食べ物からだけであり(体内で合成できない)、オメガ3脂肪酸は、植物由来のαリノレン酸、魚介由来のDHA、EPAの3つの成分に分けられます。αリノレン酸は、アレルギー原因物質を抑制したり、血圧を下げたりするほか、血栓予防にも効果があり、生活習慣病の予防にもなります。DHAは脳神経を活性化し、記憶力の向上などの効果があり、EPAは血液をサラサラにする作用によって動脈硬化を防ぎ、心筋梗塞や虚血性心疾患の予防効果が高いといわれています。

オメガ3脂肪酸は地中海式食事法でも積極的に摂取する食材とされている魚に含まれていることが多く、加齢に伴う難聴を予防するのに役立つとカーハン博士は述べています。

米国の栄養学ジャーナルに掲載された2010年の研究では、オメガ3系多価不飽和脂肪酸の摂取量と難聴の間に負の相関があることが指摘されています(オメガ3脂肪酸を多く摂取すればするほど、聴力低下の発生率は低くなる)。研究の著者たちが書いているように、食事にオメガ3脂肪酸を取り入れることで 「加齢に伴う難聴の発症を予防したり遅らせたりする可能性がある」 のです。

2014年に発表されたカーハン博士と彼女のチームの研究では、定期的に魚を食べることが女性の難聴のリスクを低下させることがわかりました。

魚が苦手な方の場合には、魚油のサプリメントでオメガ3脂肪酸を摂取することが選択肢となります。

亜鉛

Tinnitus Today(米国の耳鳴り研究の学会誌)によると、ミネラルの亜鉛は耳鳴りに効果があるかもしれませんが、有効なのは普段から亜鉛が不足している人だけのようです。つまり、亜鉛が不足している人には(米国国立衛生研究所のサプリメント室によると、ベジタリアン、アルコール依存症、または特定の消化器疾患がある場合が一般的とのこと)、亜鉛の摂取は耳鳴りの症状を軽減するのに役立つかもしれません。

しかし、亜鉛が十分足りている人が耳鳴りにサプリメントを飲んでも変わりません。

マグネシウム

別のミネラルであるマグネシウムも、ある小規模な研究によると、耳鳴りの症状を軽減するのに役立つ可能性があるとされています。さらなる研究が必要とされますが、Australian Journal of General Practice(豪の医学ジャーナル)によれば、マグネシウムは (亜鉛とともに) 耳鳴りの症状を軽減するために最も広く販売されているサプリメントの1つであるとのことです。

耳鳴りや難聴など、耳に関連する病気の治療に役立つ可能性があるサプリメントには、以下のものがあります。

難聴や耳鳴りに対するハーブ療法やその他のサプリメント

高麗人参

朝鮮ニンジン(高麗人参、オタネニンジン)

高麗人参等の薬用ニンジンは、何世紀にもわたって伝統的な漢方薬に使われています。心臓の健康の促進、ストレスの軽減、他多くの病気に効くということで、とても人気のあるハーブ療法です。

この植物は聴覚にも役立ちます。2019年に発表されたあるレビューでは、臨床研究 (小規模で、適切な対照群がないことが多い) でオタネニンジンやその他の薬用ニンジンが耳鳴りの症状を軽減し、感音難聴者の聴力閾値を改善することが示されています。

しかしながら、薬用ニンジンが難聴に役立つ可能性があるかどうかを明らかにするには、さらに多くの研究が必要です。

コエンザイムQ 10

Mayo Clinic(臨床・教育・研究を行う米国の非営利団体)によると、この体内で作られる抗酸化物質は、加齢とともに減少します。血圧を下げたり、片頭痛を減らしたり、身体能力を向上させたりするなど、さまざまな効果があることが研究で示されています。

聴力に関しては、2010年の研究でコエンザイムQ 10 の摂取が 「突発性難聴の治療に有益な効果があるかもしれない」 ことがわかりました。

イチョウ

Mount Sinai(米国の非営利病院)によると、木から抽出したイチョウはサプリメント売り場でベストセラーになっているとのことです。American Tinnitus Association(米国の耳鳴り研究の組織) が発行するジャーナルによると、「耳鳴りの治療に最も研究された栄養補助食品」であるそうです。

ジャーナルによると、多くの研究が行われているにもかかわらず、いくつかの臨床試験では、このサプリメントを摂取すると効果があることが示されている一方で、他の臨床試験ではまったく効果が示されていないことから、耳鳴りに対するこのサプリメントを摂取することに明確な推奨はないようです。

その他:耳鳴りのサプリメント:役に立つのか有害なのか?

潜在的な制限に関する補足

サプリメントは処方箋無しで購入できるので、服用の影響は大したことがないと思われがちです。しかし、それらを服用することでプラスの効果がある一方、必ずしも害がないとは限りません。高価であることに加えて、服用する薬や他に抱える症状との有害な相互作用につながるだけでなく、一部のサプリメントは耳の健康を損なう可能性があります。

このことは、多くの果物に含まれている最もなじみのあるビタミンの1つであるビタミンCにも当てはまります。多くの人が免疫力を高めると考えていますが、摂りすぎることもあります。

「ビタミンCを大量に摂取すると難聴のリスクが高まる可能性があるという研究結果は、たくさん取れば取るほど良いというわけではないことを示唆しています。」とカーハン博士は述べています。

サプリメントは有用でも、特効薬はありません

食事以外にも聴力に影響を及ぼすものはたくさんあり、聞こえの健康に直接関係するビタミンはないことから、バランスのとれた食事をとることが、身体機能を正常に保つために必要な栄養素を得る最善の方法です。

そして、耳鳴りの治療法としてのサプリメントに関する米国耳鼻咽喉科学会・頭頸部外科財団の臨床ガイドラインは、次のように述べており注目に値します。

「持続する煩わしい耳鳴りがある患者の治療に、イチョウ、メラトニン、亜鉛、またはその他の栄養補助食品を推奨すべきではない」

ガイドラインを作成したグループのほとんどのメンバーは、サプリメントは有用性よりも害をもたらす可能性が高いと感じています。

難聴や耳鳴りのために食事に加えてビタミン剤やサプリメントを摂取する前に、耳鼻咽喉科の専門医に相談するのが一番です。聴力について心配なことがあれば、お近くの聴覚ケアの専門家に相談してください。

■本記事について

本記事は米国Healthy Hearingにて掲載された記事を、一般的な情報提供を目的として意訳、また日本国内の事情に沿うように加筆再編成したものです。本記事のコピーライトはhealthyhearing.com及びheatlhyhearing.jpに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、healthy hearingが指定する執筆者または提供者に帰属します。

■英語版記事はこちらから

米国「HealthyHearing」2022年6月13日の記事「Vitamins, minerals and supplements for hearing problems」(Madeleine Burry 寄稿)

https://www.healthyhearing.com/report/53347-Vitamins-minerals-supplements-remedies-hearing-loss-tinnitus-vinpocetine-diet

  • 記事投稿者

    ヘルシーヒアリング編集局

    ヘルシーヒアリング編集局

    1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営
    2.「安心聞こえのネットワーク」連携サポート

  • 記事監修者

    若山 貴久子 先生

    若山 貴久子 先生

    1914年から100年以上の実績「若山医院 眼科耳鼻咽喉科」院長。■詳しいプロフィールを見る■

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